日々進化を続ける東京のレストランシーンでは、骨太な新店が次々と現れている。

輝くうにいくら丼や、薪焼きステーキなど、いま話題になりつつある注目店ばかり。

すぐにでも足を運びたくなる、魅力的な5軒をご紹介。未来の名店候補だ!


1.進化を続ける「薪焼き」ガストロノミーに港区の空気を纏う気鋭店が現れた@六本木
『Métis 六本木』



2023/2/1 OPEN



店は飯倉の交差点のほど近く。エントランスからして六本木らしいムードが漂う


ここ数年のトレンドといえば、薪焼きとイノベーティブ。この2つを融合させたハイブリッドなガストロノミーが誕生した。

今、食通達の舌を唸らせている六本木「メティス」がそれだ。




臨場感たっぷりのカウンター席は8席のみ。和の意匠が施された贅沢な空間。


薫香と炎に本能を揺さぶられ、六本木の夜は昂るばかり

薪には楢や桜を使用。鈴木シェフはパリの『ステラマリス』などで修業、帰国後は『ケイスケ マツシマ』の副料理長や外食企業の執行役員総料理長を経て、同店の料理長に就任


炎を操る料理人はフレンチ出身の鈴木昌嗣シェフ。

和魂洋才のコンセプトのもと、和の食材とフレンチの手法を巧みにマリアージュさせながら、ここだけの味を探求している。


フレンチの技法と和の精神が艶やかに融合。これぞ和魂洋才、極まれり

アミューズ3品。左から鯵のマリネと水牛のモッツァレラを茄子のシートで巻いた一品。ホワイトアスパラガスのブランマンジェ ピゼッリ添え、鮎を丸ごと使ったパテと西瓜のジュレ


例えば、これから旬を迎える鮎はパテにして西瓜のジュレと合わせるなど遊び心溢れる料理がコースに並ぶ。



クリミの薪焼きステーキは、この店のシグネチャーメニューの一つ。銘柄にはあえて拘らず、A5ランクBMS12の黒毛和牛のみを使っている。写真は前沢牛。ともに18,000円のコースより


だが、真骨頂はやはり薪火で焼きあげる正攻法のステーキだろう。それも旨みの濃いクリミ肉を使用。

肩肉の一部で本来は硬めの部位だが「A5ランクBMS12級の牛になると、ヒレのようなサシが入り食感も柔らかくなる」とは鈴木シェフ。

その言葉通り、見事な鮮紅色の肉片は、噛み応えがありつつも口当たりはシルキー。


フレンチでありながら羽釜ご飯も楽しめる!


プラス2,200円で竈で炊くブイヤベース風味のご飯も楽しめる。



写真の具はホタルイカ


また、竈で炊く米が決めての炊き込みご飯は、ブイヤベース仕立てのピラフ感覚。

和洋折衷の妙味を味わいたい。


ワイン好き垂涎のペアリングが秀逸!


『タイユヴァン・ロブション』『エスキス』などで腕を振るってきたソムリエの小笠原さんのペアリング(8杯 16,500円)は圧巻。

ムルソーや名門シャトー、日本酒の「黒龍」なども入ることがあるプレミアムなラインナップが話題を呼んでいる。


■店舗概要
店名:Métis 六本木
住所:港区六本木5-18-22 FORCEビル 1F
TEL:03-5544-9778
営業時間:17:30〜(L.O.20:30)
定休日:日曜、祝日
席数:カウンター8席



2.名店の“最終章”を締めくくるのは、期待の若手シェフが織りなすクリエイティビティ@元麻布
『エクアトゥール プラス』



2023/1/11 OPEN



エントランスを入ると、すぐ目の前にある「Restaurant l’equateur」の文字はもとのまま。店の歩みを見つめ続けてきたロゴだ


オーナーソムリエの川島弘子さんの卓越した美意識と、シェフの小野喜之さんによる独創的にして先鋭的な料理とが結実し、真似のできない超人気店となった『エクアトゥール』。

2022年12月に東京での営業に幕を下ろし、今後はタイ・バンコクで第二章を始めるべく準備中だという。

そんな中、川島さんは日本での最後のプロジェクトとして店の跡地で『エクアトゥール プラス』をオープン。

『カンテサンス』での修業を経て、小野シェフの右腕として奮闘してきた中川 巧さんのフレッシュな感性による料理を楽しめる新店として、早くも話題を集めている。




店内の設えは今まで同様。

「Dior Maison」の華やかなショープレートや、ビーズで編まれた美しいナフキンリングといった演出に心躍る。




ショープレートも素敵!


エレガンス極める空間と料理を記憶に刻む、最後の機会は逃せない


「サヨリ炙り 長芋そうめん ウニソース 花穂」。

香ばしさを加えた新鮮なサヨリ、ウニのソースetc.、味や食感のレイヤーが楽しい一品。




蓋付きの有田焼の器を開くと、中から燻香が!というプレゼンテーションで魅せる「フォアグラのテリーヌ デュカレーズンとマデラのコンディメント」。

リッチなフォアグラはナッツ、スパイス、ドライフルーツの風味で奥行きが増す。



「鳩 オマールテール」はフランス・ラカン産の鳩でオマール海老を巻いた“サーフ&ターフ”なひと皿。いずれもおまかせコース(33,000円)からの一例


「和洋に囚われず、常にゲストに驚きをもたらす『エクアトゥール』ならではの楽しさは引き継ぎつつ、自分のカラーも加味していきたいです」と意欲に満ちている。

年内いっぱいとなる見込みの期間限定の試み。可及的速やかに体験したい。


バンコクの姉妹店も踏破したい!


『エクアトゥール』は、現在タイで開店準備中だが、それに先行して姉妹店『K+(カゲロウプリュス)』が開店。

世界のフーディーが注目する都市・バンコクで、すでに人気を博している。


■店舗概要
店名:エクアトゥール プラス
住所:港区元麻布3-6-34 カーム元麻布 2F
TEL:050-3184-1540
営業時間:[一部]17:30または18:00〜
     [二部]20:30または20:45〜
定休日:不定休
席数:カウンター6席、個室1(6席)※要予約



3.日本酒への深い愛情を感じるセレクションと、心尽くしの料理のハーモニーに酔う@八重洲
『MOTO TOKYO』



2023/3/10 OPEN



15時からオープンの立ち飲みも充実!入口手前にあるスタンディングバーでは、より気軽に日本酒と酒肴を楽しめる。“推し”の1本は、「新政」「而今」に続く人気銘柄になると目されている「亀齢」900円(グラス)


密やかなロケーションながら日本酒ラバーの熱い支持を集めていた『京橋 酛』が、3月開業の「東京ミッドタウン八重洲」に移転。

『MOTO TOKYO』と店名も改め、よりパワーアップした。

エントランス横にはスタンディングバーを設え、多彩な日本酒とアラカルトのつまみを気軽に楽しめる趣向。



カウンターの背後は、2種類の石の自然な風合いを生かしたデザインに。ほか、会食などに適した個室も2室用意されている


そして、店の奥へと足を踏み入れれば、ぐっと落ち着いた雰囲気の本格割烹が。

こちらでは、料理長の佐久間佑吾さんによる季節感を盛り込んだ料理と、それに合わせて女将の谷口真理子さんが選んでくれる銘酒とのマリアージュを、心ゆくまで味わうことができる。


一品ごとにぴったりと寄り添う酒を味わい、日本酒の奥深さに魅了される


華やかな「八寸」は、お酒が進む品ぞろえ。




「左大臣 純米吟醸 おりがらみ」700円(グラス)はコクと旨み、きれいな酸がバランス良い銘柄。




新進気鋭の銘柄「森嶋 雄町 純米大吟醸」900円(グラス)。

ミネラル感もあり椀種の蛤の味わいによく合う。




椀種は蛤しんじょうと筍と彩りを添える近江こんにゃく。




「仙台牛サーロイン」は塩と黄身醤油を添えて。



熟成感のある「分福」800円(グラス)は牛肉の旨みにしっかりとマッチ。料理はすべておまかせコース(13,000円)からの一例


「フレッシュな夏酒、秋の新酒……といった日本酒の“旬”を意識して料理を構成しています」という佐久間さんと「有名でなくとも情熱を持って酒造りに取り組んでいる酒蔵や造り手の酒を、その歴史やストーリーも添えてお伝えしたい」という谷口さん。

杯を重ねてしまうこと必至だ。


■店舗概要
店名:MOTO TOKYO
住所:中央区八重洲2-2-1 東京ミッドタウン八重洲セントラルタワー 3F
TEL:03-6910-3877
営業時間:[割烹スペース]16:00〜(L.O.22:00)
     [スタンディングバー]15:00〜(L.O.22:00)
定休日:月曜(祝日の場合は営業)
席数:カウンター6席、個室2(4席×2)※要予約(スタンディングバーは予約不可)



4.まぐろとイタリアンの僥倖な出合いにこの春、十番の大人は魅せられた@麻布十番
『fragment』



2023/2/23 OPEN



開放的なオープンキッチンを取り囲むように並ぶカウンター席は14席。一斉スタートではなく、ゆっくりできる自由度も嬉しい


あのカリスマ仲卸し『やま幸』が仕掛けた次なる一手が、『フラグメント』だ。

ここは、なんとカウンターイタリアン!



宵闇とともに照明が写し出す仕掛けの店名が看板代わり


ビルの2階に潜む隠れ家的シチュエーションながら、早くも感度の高い麻布十番の住人の支持を受けている。



シェフの仕事を体感するフラットなカウンター。ピエモンテでの修業経験もある日高シェフは、神奈川県出身の40歳。目黒のホテル「クラスカ」や『レクラ銀座おのでら』などの料理長を経て、同店の料理長に


それも、全国から集められる魚介の質の高さとそれらを駆使し、季節感豊かな味わいを表現する日高弘樹シェフの手腕ゆえ。

曰く「まぐろはもちろん、その他の魚介も『やま幸』系列の鮮魚専門店『希海』から仕入れている」そうで、鮮度の良さはお墨付き。


上質なまぐろとキャビアを口に含めば、この世の至福が溢れ出す

シグネチャーメニューのひとつ「やま幸鮪 キャビア」。まぐろのタルタルに添えているのは、瀬戸内産のコラトゥーラと鮎魚醤に潜らせた赤身の漬け。この日のまぐろは千葉県勝浦産の釣りの本まぐろ


コースでは、スペシャリテのまぐろのタルタルをはじめ、北海道産桜鱒や明石産の真鯛など旬の味覚を存分に楽しませてくれる。


泡で始まる魚介の宴は、日常の夜を最高に満ち足りたものにしてくれる


スパークリングから始まるペアリングは8種で8,000円。

グラスワイン 1,000円〜、フランチャコルタもグラス 1,800円で楽しめる。




前菜の「北海道産桜鱒 西洋山葵」。

桜鱒はマリネし、38度の低温で火入れしている。しっとりした食感も美味。西洋山葵とリンゴのピューレ添え。



「シャラテッリ全国前」。シャラテッリとは、卵白と牛乳で作る手打ちパスタのこと。仕上げに入れるうにが隠し味に。料理はすべてコース(15,000円)より


魚イタリアンの面目躍如たるひと皿といえば、魚介のパスタ。

魚のアラで取った出汁をベースにクマエビや蛤、メバル等の魚介をふんだんに使った、いわばズッパ・ディ・ペッシェのパスタ版だ。



仕上げ前のフライパンに期待が高まる!


素材感を生かした美味しさは、食べ慣れた大人の舌にこそよく似合う。


■店舗概要
店名:fragment
住所:港区麻布十番3-9-2 タモン麻布 2F
TEL:03-6812-6933
営業時間:18:00〜(L.O.21:00)
定休日:水曜、日曜
席数:カウンター14席



5.正統派かつ大人の食欲を刺激する、常連になりたい鮨店がある@武蔵小山
『鮨 季らく』



2023/3/9 OPEN



店の目印はこの行灯。流麗な屋号は、書家の龍玄氏が認めた


気取らない酒場が軒を連ねる武蔵小山の一角に、この春異彩を放つニューフェイスが現れた。

白木づくしで暖簾のない店構えが目を引くその店の名は『鮨 季らく』。



吉野檜の一枚板のカウンターに網代天井、漆喰の壁と、日本の伝統的な工法によって仕上げられた空間には清々しさが漂う


一見クールな印象を受けるが、一歩中に入れば、カウンターに立つ大将の佐藤 勝さんが朗らかな笑顔で迎えてくれる。



四季の味わいを“気楽”に楽しんで!


実は佐藤さん、この地で生まれ育ったという武蔵小山っ子。

16歳でこの世界に入り『麻布十番おざき』『ぎんざ鮨一代有吾』などの実力店で修業を重ね、晴れて地元に錦を飾ることとなった。


つまみと握り、そして小丼。今の気分を体現するこのコンビネーションに誘われる

「ふぐの唐揚げ」


冬のイメージの強いふぐだが「春先に揚がるふぐも、実は美味しいんです」と佐藤さん。

この日は千葉勝山で揚がったヒガンふぐを唐揚げに。カレー塩でいただく寸法だ。



「ノドグロの握り」


ファンの多い鮨タネである「ノドグロ」。コースには含まれないが、1貫 1,500円〜で追加可能(仕入状況による)。

こちらは“日本最後のノドグロの聖地”とも呼ばれる対馬産。



問答無用の組み合わせ!「イクラとウニの小丼」


3〜4品のつまみと小丼、10〜12貫の握りを楽しめるおまかせコースが17,600円。

鮨店に加えて割烹料理店での修業経験がある佐藤さん、料理ものでも仕事の確かさが光る。




活車海老は、茹でたての状態をゲストに見せてくれる。

ライブ感あるサービスが楽しい。



この日は鹿児島県から届いた車海老


そして、その時期のいいタネを、赤酢を使いつつ優しい味わいの酢飯と握る鮨も上々!

早くも予約困難なのは至極当然だ。


■店舗概要
店名:鮨 季らく
住所:品川区小山4-10-1 BE-RE武蔵小山 1F
TEL:050-3149-0212
営業時間:[一部]17:30〜
     [二部]20:30〜
定休日:日曜、月曜
席数:カウンター8席 ※要予約


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