明日の株式相場に向けて=「リメンバー・バーナンキショック」
きょう(23日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比129円安の3万957円と反落。朝方は買いが先行したが、後場に入り急速に地合いが軟化し9日ぶりの下げとなった。当然の一服といえるのだが、取引時間中は高値圏で横殴りの風に見舞われたような、利食い急ぎ特有の不安定な値動きをみせた。
「好事魔多し」というが、今からちょうど10年前の2013年5月23日の相場がまさにそれであった。10年前の新緑の季節といえば、いわゆるアベノミクス相場の初動である。その前年の12年12月に発足した第2次安倍内閣となってから、東京市場に吹く風向きは明らかに変わった。安倍元首相と黒田日銀元総裁が二人三脚で株式市場をデフレの深淵から引き上げたのは大きな功績であることは間違いないが、そうした連綿と続く過去の相場の歴史を思い起こせば、“十年一昔”といえどもそれほど遠い記憶ではない。
当時、アベノミクスの意を汲んだ日銀の超金融緩和策を背景に、一貫した円安トレンドが形成され株式市場に強力なフォローウインドとなった。円安と併走するように、そこから約2年半にわたり東京市場は揺るぎない上昇トレンドを描いたのだが、その第1幕のクライマックスが13年の初夏である。前年の12月からほぼ一本調子に水準を切り上げてきた日経平均だったが、10年前の今日「バーナンキショック」と称される波乱相場に見舞われることになる。
当時の日経平均の足取りはちょうど今繰り広げられている上昇相場と似通っていて、問答無用のブル相場だった。問題の5月23日はバーナンキショックにより1143円安の1万4483円で安値引けとなったのだが、その前日までは日経平均のサイコロジカルラインが9勝3敗、12営業日で差し引き1900円以上の上昇で1万5000円台をまい進していた。だがそうした折、米国で現地時間5月22日に当時のFRB議長だったバーナンキ氏が議会証言でテーパリング(緩和縮小)を示唆したことが、マーケットに激震を与えることになった。東京市場は朝方の段階では、それまでの一本調子の上げ相場のリズムで下値を切り上げていたのだが、後場に入ると総崩れとなり日経平均は1100円を超える暴落に見舞われることになる。
これが短期的な嵐で収まれば問題はなかったが、そうはならなかった。その後に日経平均はバランスを崩し、6月中旬まで下値を模索する展開を強いられ、何と1万3000円割れまで売り込まれる格好となった。夏場以降は買い直され、結局は年末高で大納会にその年の高値を形成するという、ハッピーエンドな相場展開となったのだが、その時の波乱が教訓として脳裏に刻まれている市場関係者も少なくないと思われる。
時計の針を現在に戻して、きょうは「リメンバー・バーナンキショック」的な色を帯びた地合いではあった。日経平均の下げ幅は130円程度で、押し目ともいえないような小休止であるが、朝方は前日のNYダウ下落などどこ吹く風で日経平均が上値を追い、リスクオン満開の地合いだったのが、後場寄りに崖を下るような急速に値を崩した流れは、投資マインドに潜在する警戒感がにわかに投影された。値下がり銘柄数が1400を超え、プライム市場全体の77%を占めており、トヨタ自動車<7203.T>が急落、日本製鉄<5401.T>をはじめ鉄鋼株が全面安、“お祭りムード”にあった半導体主力銘柄などの上げ足も止まった。
バーナンキショックの残像が10年を経て甦ったということではないが、インフレ懸念と景気減速懸念が共存する難局を前にFRBの舵取りは難しい。きょう発表される欧州と米国での5月の製造業PMIに関心が集まるほか、日本時間の明後日未明に5月開催分のFOMC議事要旨が開示され、今週末には4月の米PCEデフレータが発表される。油断は禁物であることを、後場の正体不明の崩れ足が示唆しているようにも思える。
あすのスケジュールでは、4月の全国スーパー売上高が午後取引時間中に開示される。海外ではニュージーランド準備銀行(中央銀行)が政策金利を発表するほか、欧州では4月の英消費者物価指数(CPI)、5月の独Ifo企業景況感指数などへの注目度が高い。また、米国では5月2~3日の日程で開催されたFOMCの議事要旨にマーケットの関心が集まる。このほか、米エヌビディア<NVDA>の2~4月期決算発表が予定されている。(銀)
出所:MINKABU PRESS
「好事魔多し」というが、今からちょうど10年前の2013年5月23日の相場がまさにそれであった。10年前の新緑の季節といえば、いわゆるアベノミクス相場の初動である。その前年の12年12月に発足した第2次安倍内閣となってから、東京市場に吹く風向きは明らかに変わった。安倍元首相と黒田日銀元総裁が二人三脚で株式市場をデフレの深淵から引き上げたのは大きな功績であることは間違いないが、そうした連綿と続く過去の相場の歴史を思い起こせば、“十年一昔”といえどもそれほど遠い記憶ではない。
当時、アベノミクスの意を汲んだ日銀の超金融緩和策を背景に、一貫した円安トレンドが形成され株式市場に強力なフォローウインドとなった。円安と併走するように、そこから約2年半にわたり東京市場は揺るぎない上昇トレンドを描いたのだが、その第1幕のクライマックスが13年の初夏である。前年の12月からほぼ一本調子に水準を切り上げてきた日経平均だったが、10年前の今日「バーナンキショック」と称される波乱相場に見舞われることになる。
当時の日経平均の足取りはちょうど今繰り広げられている上昇相場と似通っていて、問答無用のブル相場だった。問題の5月23日はバーナンキショックにより1143円安の1万4483円で安値引けとなったのだが、その前日までは日経平均のサイコロジカルラインが9勝3敗、12営業日で差し引き1900円以上の上昇で1万5000円台をまい進していた。だがそうした折、米国で現地時間5月22日に当時のFRB議長だったバーナンキ氏が議会証言でテーパリング(緩和縮小)を示唆したことが、マーケットに激震を与えることになった。東京市場は朝方の段階では、それまでの一本調子の上げ相場のリズムで下値を切り上げていたのだが、後場に入ると総崩れとなり日経平均は1100円を超える暴落に見舞われることになる。
これが短期的な嵐で収まれば問題はなかったが、そうはならなかった。その後に日経平均はバランスを崩し、6月中旬まで下値を模索する展開を強いられ、何と1万3000円割れまで売り込まれる格好となった。夏場以降は買い直され、結局は年末高で大納会にその年の高値を形成するという、ハッピーエンドな相場展開となったのだが、その時の波乱が教訓として脳裏に刻まれている市場関係者も少なくないと思われる。
時計の針を現在に戻して、きょうは「リメンバー・バーナンキショック」的な色を帯びた地合いではあった。日経平均の下げ幅は130円程度で、押し目ともいえないような小休止であるが、朝方は前日のNYダウ下落などどこ吹く風で日経平均が上値を追い、リスクオン満開の地合いだったのが、後場寄りに崖を下るような急速に値を崩した流れは、投資マインドに潜在する警戒感がにわかに投影された。値下がり銘柄数が1400を超え、プライム市場全体の77%を占めており、トヨタ自動車<7203.T>が急落、日本製鉄<5401.T>をはじめ鉄鋼株が全面安、“お祭りムード”にあった半導体主力銘柄などの上げ足も止まった。
バーナンキショックの残像が10年を経て甦ったということではないが、インフレ懸念と景気減速懸念が共存する難局を前にFRBの舵取りは難しい。きょう発表される欧州と米国での5月の製造業PMIに関心が集まるほか、日本時間の明後日未明に5月開催分のFOMC議事要旨が開示され、今週末には4月の米PCEデフレータが発表される。油断は禁物であることを、後場の正体不明の崩れ足が示唆しているようにも思える。
あすのスケジュールでは、4月の全国スーパー売上高が午後取引時間中に開示される。海外ではニュージーランド準備銀行(中央銀行)が政策金利を発表するほか、欧州では4月の英消費者物価指数(CPI)、5月の独Ifo企業景況感指数などへの注目度が高い。また、米国では5月2~3日の日程で開催されたFOMCの議事要旨にマーケットの関心が集まる。このほか、米エヌビディア<NVDA>の2~4月期決算発表が予定されている。(銀)
出所:MINKABU PRESS