この1年間、注目の的であり続けた鎌田大地の移籍話がそろそろ決着しそうだ。鎌田が言う。

「僕自身、とっくの前にある程度決めているので。いろいろな記事を見ますけど、あってもないようなことだったり、本当のことだったり、いろいろ出てて......どうなんですかね。面白いなという感じですね」


移籍のニュースが絶えない鎌田大地の心境は?

「とっくに決めている」とは、すでに交渉がまとまっているというより、気持ちは固まっていると捉えるべきニュアンスで話している。

 面白いのは「あってもないようなことだったり、本当のことだったり」という部分。普通であれば「あることないこと」などと、多少婉曲表現を用いて話すものだが、「本当のこと」とあえて言っているから、真実味は増す。

 ただし、どの報道が本当で、どれがそうでないのかについては言及しなかった。もちろん、今季限りで退団することは決まっているのだから、移籍先もそろそろ決まっていてもおかしくない時期ではあるのだが。

「基本的にやっぱりなんというか、ジャーナリストの人たちは、あまりにも知らない人が多いんだなと思います」

 そう言って、有象無象の報道を笑い飛ばした。

 振り返れば鎌田の移籍話は、2019年にレンタル先のシント・トロイデンから戻ってきた当初からあった。

 当時はフランクフルトで出場機会を得られるか状況がまだわからないまま、セリエAジェノアへの移籍話が持ち上がった。クラブ間では基本合意に至っていたとされているが、当時フランクフルトにいたケビン=プリンス・ボアテング(→サッスオーロ/現ヘルタ・ベルリン)が退団の意向を示したため、フランクフルト残留が決まった。そこからはクラブの欧州での飛躍の立役者となり、自身の市場価値も上がった。

 2021年夏にも移籍話は持ち上がったが、破談になり9月頃は調子を崩した。日本代表のカタール・ワールドカップ最終予選の時期とも重なり、思うような活躍ができずに「移籍の話などがあって気持ち的に難しかった」と明かしている。

【今季限りでの退団は決定済】

 2021-22シーズンは、フランクフルトがヨーロッパリーグで優勝。決勝で得点するなどワールドカップを控えた2022年夏にも移籍の噂は絶えなかったが、この時は封印。「去年は調子を崩したので、考えないように」と話した。この時すでに2022-23シーズンをフランクフルトでのラストシーズンとすることを決めていた。

 ワールドカップ前にはドルトムント移籍が濃厚とされ、ドルトムントのセバスチャン・ケールSD(スポーツディレクター)が第2ドイツテレビ『ZDF』の番組内で関心を公言したりと、外堀が埋められていくようにドルトムント移籍を望んでいるかのような時期もあった。

 だが、当初から本人の関心はドイツの外にあったようで、「みなさんが思っているよりも、もっと大きなところと話しているんですよ」と噂を一蹴した。

 だが、ワールドカップを機につい最近まで調子を落とした。ボランチ起用が増えて物理的にゴールから離れたこともあるが、それでもパッとしないプレーが続いた。「今季限りで退団は決まっているけど、最後までちゃんとやると監督とは話している。人としてそれは貫きたい」と気持ちを立て直した。

 ここにきて、調子は復調している。ドイツカップ準決勝のあと、ホッフェンハイム戦を挟み、マインツ戦、シャルケ戦と5月は3ゴール。リーグ9得点としている。

 浮き沈みあるなかも、ドイツメディアは常に鎌田移籍話を報じ続けた。「ピッチ外で注目され続ける感覚はどのようなものか?」と尋ねた。むずがゆいような感覚があるのではないか、と思うのだ。

「日本の小さいクラブからヨーロッパに出てきて、有名な強化部長や監督から『ほしい』って言ってもらったり興味を持ってもらうってのは、選手としてひとつうれしい部分ではあります。だけど、僕がこのフランクフルトでこの4年間やってきたことは、客観的に見てもいい仕事ができたと思うし、いい結果も残せたので、まあ妥当かなとは思います」

【最終節でふたケタ得点なるか】

 自信と落ち着きを取り戻した鎌田がこのチームで見据えるのは、6月3日のドイツカップ決勝だけでない。まずリーグ最終節(5月27日)だ。

「今、リーグ戦が9点なので、ボランチもこなしながら点はここまで取れているんで、あと1点取れれば最高かなと思いますね」

 現状リーグ戦では9得点8アシストと、フランクフルトで自身最高の数字を叩き出している。ただ、もうひとつ上の結果が出れば、次の移籍先への大きな手土産にもなるだろう。