東京競馬場を舞台とした5週連続のGI開催。3週目となる今週は、3歳牝馬の頂上決戦となるGIオークス(5月21日/東京・芝2400m)だ。

 今年は、牝馬クラシック第1弾のGI桜花賞(4月9日/阪神・芝1600m)を勝ったリバティアイランドを抜きには語れないだろう。前走で披露した異次元の末脚から、ここでも圧倒的な支持を集めるのは間違いない。既成勢力とはすでに勝負づけが済んでおり、新興戦力にも逆転を見込めるような存在が見当たらず、それも納得といったところか。

 オークスの過去10年の結果を見ても、1番人気が5勝、2着2回、3着1回と、その信頼度は非常に高い。下馬評どおり、リバティアイランドが二冠を遂げる確率はかなり高そうだ。

 しかしながら、ここ2年は1番人気が連続して馬券圏外に外れている。いずれもリバティアイランドと同じく、GI阪神ジュベナイルフィリーズ(阪神・芝1600m)を快勝し、2歳女王に輝いている。

 そうした状況も加味して、デイリー馬三郎の木村拓人記者は「(リバティアイランドも)ハープスターの時のような、ああいう感じになる可能性はあるかな、とは思います」といった見解を示す。

 木村記者が例を挙げたハープスターはご存知のとおり、リバティアイランドにも劣らぬ末脚を繰り出して2014年の桜花賞を制覇。その結果を受けて、オークスでも単勝1.3倍という断然の支持を得たが、直線半ばで先に抜け出したヌーヴォレコルトをクビ差捕えきれずに2着に終わっている。

 つまり、木村記者は「それと同様のことが起こり得る」と言って、リバティアイランドの能力は認めつつも、オークスの舞台においては懐疑的な目を向ける。

「(リバティアイランドは)筋肉量がめちゃめちゃ豊富で、マイラーとしての完成度は高いと思いますし、能力が抜けているのは間違いありません。ただ、2400mの距離がすごくいいか? と言われると、そうではないと思います。それはまあ、人気が集中すると思うので、あえて"嫌いたい馬"という気持ちもありますけど」

 では、木村記者が逆転候補として期待するのは、どんなタイプなのか。それは、新興勢力なのだろうか。

「申し訳ないのですが、新興勢力に関しては、正直『一枚落ちるかな』と見ています。トライアルのGIIフローラS(4月23日/東京・芝2000m)組にしても、それまでに桜花賞組には勝てていない馬が勝ち馬ですからね。

 オークスで桜花賞組が強いのは、やはりそこまでに力関係ができていて、桜花賞にはそれだけ強い馬が集結しているということ。結果、オークスでも距離適性云々以上に、その能力差を逆転できないからだと思います」

 となると、桜花賞組に逆転候補がいるということか。

「そうですね。逆転候補にしても、穴馬を探すにしても、今年は特に桜花賞で力を発揮できなかったとか、オークスで変わり身がありそうな馬を見つけるのが近道だと思います。人気どころでは、(桜花賞4着の)ハーパー(牝3歳)あたりが面白そう。穴なら、着順が大きかった馬から選ぶのが手でしょうね」

 そうして、木村記者は"桜花賞大敗"組から2頭の激走候補をピックアップした。

「まずは(印をつけるうえで)本命まであってもいいかなと思っているのが、ラヴェル(牝3歳)です。GIIIアルテミスS(10月29日/東京・芝1600m)では、リバティアイランドに不利があったとはいえ、同馬を差して快勝。あの差しきった感じと雰囲気は"本物"だと思うので、まだ見限りたくないですね。ポテンシャルの高さは間違いないと見ています」


オークスでの逆襲が期待されるラヴェル

 アルテミスS以降、阪神JF、桜花賞はともに11着と馬群に沈んだ。はたして、そこから巻き返しを図れるのだろうか。

「前2走は、どちらも枠が悪かったですよね(阪神JF=8枠18番、桜花賞=8枠17番)。それに、前走に関しては調整過程も怪しく、ぎりぎりで間に合った感じ。単純に"走れていない"というものでした。いろいろと嚙み合っていなかった、というのは確かです。

 半姉ナミュールもそうですが、この馬は母父ダイワメジャーの影響か、気持ちの面で難しいところがあって、続けて高いパフォーマンスを出せないところがありますよね。それが、過去2走の結果に出たのではないか、と。

 しかし、オークスに向けては、馬体写真を見ても前回より締まっていますし、調教の動きも前回よりフットワークが弾んでいて、躍動感があります。桜花賞当時に比べて、明らかに一段階よくなっています。ここに照準を合わせてきたと思えば、前走の大敗も度外視できます。

 また、父がハービンジャーで距離延長がプラスになった姉ナミュール(桜花賞10着→オークス3着)以上に、父がキタサンブラックのこの馬は、体型もスラッとしていますし、距離もこちらのほうがこなせるように思います。

 レースで行きたがる面もあるので、そこはポイントになるかと思いますが、噛み合いさえすれば、潜在能力では引けを取りません。人気が急落しているここは、大いに狙い目です」

 木村記者が注目するもう1頭は、ドゥーラ(牝3歳)だ。

「ここ2走の負け方は、確かに不可解なんですよね。馬体も稽古も悪くなかったですから。2走前のGIIチューリップ賞(15着。3月4日/阪神・芝1600m)は不利もあって、展開も向かなかったのでまだわかるのですが、桜花賞(14着)はちょっと......。負け方が不甲斐ないというか、余りにも......という感じがあります。

 そうは言っても、そもそもGIII札幌2歳S(9月3日/札幌・芝1800m)の勝ちっぷりからして、オークスのほうがいいタイプだと思っていましたから、見直す余地はあると考えています。その札幌2歳Sでは、(阪神JF3着、桜花賞5着の)ドゥアイズ(牝3歳)に楽勝。トップレベルで勝ち負けできる能力は間違いなく秘めています。

 ラヴェル同様、2歳時に重賞を勝ったあとに惨敗を繰り返しているので、早熟と見られてもおかしくないですが、馬の雰囲気を見ていたら、このまま終わる馬とは思えません。これまでも続けて狙っているので、『いい加減にしてくれ!』といった思いもありますが(笑)、そこは一旦目をつぶって、再び期待したいところ。むしろ、こんなに人気がないのなら、狙わない理由がありません」

 いよいよ迎えるオークス。桜花賞に続いて、リバティアイランドが驚異的な強さを見せるのか。はたまた、思わぬ馬の逆転劇が見られるのか。後者であれば、ここで名前を挙げた2頭にも要注意である。