エッセイスト・石黒智子さんは、キッチン道具や器、生活雑貨など、デザイン・機能ともに優れた商品を見つけ出す名人です。ここでは、「もの選びの達人」としてファンも多い石黒さんの、ものの選び方のコツなどをまとめてご紹介します。

70代・石黒さん流「もの選びのコツ」3つ

石黒さんは、現在70歳。年齢を重ねた50代からは重さやデザインを重視したもの選びへと変化したそう。

【写真】一度使ったら手放せない100円ほうき

●石黒さんの50代からのもの選びのコツ

(1) 重い、手入れが面倒な道具は手放す

重い道具は洗ったり、出し入れしたり、さまざまな面で負担に。50代からは軽く、手入れがラク、家事に慣れない家族でも使えるものを

(2) 壊れてもすぐに買い直さない

頼りにしていた道具が壊れても、すぐに買い直さず、しばらくそれなしで暮らしてみます。案外と暮らしは回り、ものを減らすきっかけにも

(3) サイズは小さくしていく

70代に入り、食事の量も減少したので、器や調理道具などはサイズを見直しました。収納スペースにもゆとりが出て、しまいやすさもアップ

●石黒さんが「買ってよかったもの」

【スリーエム ジャパンのスコッチ・ブライト™ オフィスキッチンクリーナー】

洗剤を使わずにがんこな汚れがすっきり

なくなったら買う消耗品で愛用している中の1つが、ガラスや陶器を傷つけずに汚れを落とす、特殊な研磨粒子入りの使い捨てクリーナー。

「薄くて小さいので、小回りが利いて使いやすい。茶渋や糸底の汚れをきれいに落とせます」

・40枚入り(中央ミシン目でカットすると80回分)縦10.5×横7.5×厚さ0.6cm ¥880(編集部調べ)

70代からの台所は「そこそこ」でよし。60代と大きく変わったこと

『70歳からの軽やかな暮らし 今ここにある小さな幸せを大事にする31の知恵と工夫』(PHP研究所刊)より、石黒さんの年齢を重ねてからのキッチンの工夫をご紹介します。

●こぎれいな台所、こざっぱりした身支度に笑顔

仕舞い忘れがひどい。雑巾が必要になってストックを出しに納戸の引き出しを開けたら、隅から何年も前に手づくりしたキッチンブラシが出てきました。

どうしてここに入れたのかさえ思い出せません。今使っている手づくりより遥かにデザインも仕上がりもいい。とっておきにと、入れておいたのだろうけれど、そのまま忘れてしまったのです。その後にいくつもつくりました。

部屋の引き出しは1年でぐるりと整理するので、何年もしまい忘れたまま、ということはないのだけれど、納戸の引き出しは日用品のストックと息子のものだけなので、点検の必要を感じていなかったのです。これでは、つくった意味がない。つくったものは見えるところに置く。猛省しました。

年を取っても持てる軽いものこそが一生もの、ずっと大切にしてきたものこそが本物

もの選びに向き合ったからこその、「一生もの・本物」についてのエッセイを寄稿してくれました。

●100円のほうき自体は一生ものではありません

掃除道具の取材で机の下を帚(ほうき)で掃く写真をカメラマンが撮っていたときに編集者が「腰が痛くなりませんか」と訊きました。「痛くなったら、すぐにやめますよ。そのために掃除機とモップもあるのですからね。

私は毎朝4時半に起きます。最初にすることはパソコンを立ち上げてメールのチェックです。そのときに机の下に綿埃(わたぼこり)を見つけます。部屋は全体が汚れるのではなく、人の居るまわりが汚れます。机の下や台所です。だから、朝はそこだけを帚で掃きます。掃除機ではうるさくて、安眠中の家族を起こしてしまうでしょ」と答えました。

この帚は長さ65cm、180gと軽く、しかも100円です。使っていくうちに先が反ります。ひどくなる前に水をスプレーして乾くまで外に吊るしておくとまっすぐに戻ります。短く薄くなってきたら新しい帚に替えて、庭帚に下ろします。天然素材だけで作られているので、そのまま燃えるごみ収集に出せます。

夫が留守でひとりの時間に掃除機を掛けます。私が留守のときには夫がします。床面積100平米を充電式掃除機でことが足りるのは、帚があるからです。100円の帚自体は一生ものではありません。せいぜい3年です。でも、この軽さなら90歳になっても持てます。ストックもあるので、一生使っていきたいと思う道具のひとつです。

たくさん試してたどり着いた!「長年使っているもの」

気づけば5年、10年…。いろいろと試して、厳しく選んだ道具たちは、年月を経て「相棒」になっているそう。デザインも使いやすさもお墨つきです。

●ベルナーのPLしりしりスライサー

オールプラスチックだからステンレス製より軽く、扱いがラク!

穴部分で軽く野菜を動かすと簡単に細切りができる、ドイツ・ベルナー社のしりしりスライサー。

「力をほとんど入れずに食材をおろせます。往復で使えるので本当にラク」

・(現行品)縦34.1×横12.6×厚さ3.3cm(刃部の幅8.4cm) ¥2310(ユーロキッチンかさい) ※現在は上のオレンジのみ取り扱い

●京セラのセラミックスライサー(厚み調節機能付き)

包丁、まな板いらずで野菜の下ごしらえが簡単に!

料理に合わせて厚みが3段階に調節可能。「セラミック刃はさびないのが魅力。汚れが気になったら漂白して気持ちよく使えます。10年以上使っていますが、切れ味は変わりません」(石黒さん以下同)

・縦27.7×横9.2×厚さ2.4cm ¥1980

この記事で紹介したアイテムは、撮影時に各店舗で販売されていたアイテムです。本記事公開時には、仕入れ状況によって同じアイテムがない場合や、すでに販売終了していたり、価格が変更になる可能性もありますので、ご了承ください。価格は一部編集部調べです。