YouTubeチャンネル「Earthおばあちゃんねる」では、日々の暮らしや料理をアップし、登録者数15万人を超えるほどの人気者になっている多良美智子さん、88歳。その暮らしの楽しさに魅了される人も多く、初の書籍も大ヒット。このたび2冊目となる、料理にフォーカスした書籍『88歳ひとり暮らしの  元気をつくる台所』(すばる舎刊)から、ひとりでする食事の楽しみ方を抜粋で紹介します。

 

【写真】見た目も楽しい「ひとりご飯」

お皿1枚、箸置きひとつで、ひとりの食事も豊かな時間に

食事の時間は大切にしたいので、ひとり分でもテーブルセッティングしています。

常備菜を保存容器のまま出したりはせず、好きな器に盛って。昨日と同じものでも、器が変わると違った料理のように見えるから不思議です。ちくわや豆腐を切っただけのものも、器に盛りつけると立派な一品になります。私の粗食ごはんは、器にずいぶん助けられていると思います。

 

ダイニングテーブルにはクロスを敷いています。テーブルに食器がぶつかる音が緩和され、食事の時間が穏やかな雰囲気に。

以前は、その上に布製のランチョンマットを敷いていましたが、今は木製のトレーになりました。これは、お友達の家で使っていたものを気に入って、お店を教えてもらい、購入したもの。縁なしだから、トレーから器が少しはみ出ても大丈夫で、自由に配置できます。

このトレーを小さなキャンバスに見立てて、器を置きます。器は母や姉に影響されて、私も小さい頃から大好き。有田焼、益子焼、骨董など日本のものが多く、とくに料理を引き立てる藍色の器が多いです。器屋さんで、陶器市や骨董市で、長年かけて楽しみながら集めてきました。

●ごはんの時間をしっかり確保することで暮らしにメリハリがつく

 

小皿や中皿を贅沢に使い、一品ずつ盛りつけます。ときどき、ワンプレートの盛りつけをすることも。この料理はどの器に盛ろうかなと考える時間が、また楽しい。

それから、箸には箸置き、湯のみやコップにはコースターも必ずセットします。コースターは手づくりです。すべてをトレーに並べると、「さあ、ごはんを食べよう」という気持ちになります。

手を合わせて、「いただきます」と言ってから食べ始めます。調理は手抜きですが、ここは毎回手を抜きません。ひとりの食事も豊かな時間になるからです。

「ひとりなのに、わざわざ面倒では?」と聞かれることがありますが、ひとり分なので、器の数が少ないから並べるのに時間はかからないし、洗い物もすぐ終わります。ごはんの時間をしっかり確保することで1日のメリハリになり、「昼ごはんの後は、読書をしよう」などと次の行動に移るきっかけになっています。

器好きなので、以前はたくさん持っていました。でも、数年前に生前整理をしようと思い立ち、娘と長男のお嫁さんに譲りました。ほとんど使っていない器はもったいないなと思っていたので、引き取ってもらって助かりました。結婚式の引き出物などは、高齢者コミュニティのバザーで売ったりもしました。

今、手元にある器は、いちばんのお気に入りです。数を減らしたことにより、使いたい器をサッと取り出せるようになりました。出し入れがラクになったのも、テーブルセッティングが面倒でない理由です。「あの器はとっておけばよかった」という後悔はないので、思いきって減らしてよかったです。

 

多良美智子さんの食事まわりのことをつづった新刊『88歳ひとり暮らしの元気をつくるし台所』(すばる舎刊)は発売中です。