悪性リンパ腫を患い、54歳で「余命わずか」と告げられた父。10歳の一人娘へのメッセージとして撮り続けた100本を超えるYouTube動画が「家族の絆を強く感じる」と反響を呼んでいます。今も病気と闘いながら動画を更新する父が娘に伝えたい思い、そして「いのちのメッセージ」とは。

「余命半年」の父が愛娘に残し続ける「いのちのメッセージ」

2019年首にしこりを発見したことをきっかけに、悪性リンパ腫であることが発覚した加治川健司さん。その後2回の抗がん剤治療を行うも完治にはいたらず、悩み抜いた末に2020年には3回目の抗がん剤治療を行わないと選択。そして2022年2月、医師から2回目の余命半年の宣告を受けました。

医師からの余命宣告を受けて、加治川さんが考えたのは1人娘の風花さんのこと。そこで、心残りとなる1人娘に向けて、在りし日の自分の姿を残そうと、2022年2月からYouTube「ジャムミント」を始め、メッセージを残し続けています。

そんな加治川さんの家族への想いとYoutube投稿をまとめた著書『お父さんは、君のことが好きだったよ。「余命半年」の父が娘へ残すことば』は、「家族の絆が強く感じる」と大きな話題に。また、NHK総合テレビで2023年5月9日放送予定のドキュメンタリー番組『100カメ』が、加治川さんに「余命と向き合う人」として密着しました。

ここでは本著より、余命宣告を受けた加治川さんがYouTubeに投稿した愛娘に伝えたいことを一部抜粋し、再編集してお送りします。

●悪いことは突然やってくる…

風花ちゃん、こんにちは。今日は3月11日でした。
キミが生まれる2年前のこの日。東北地方の太平洋側で大きな地震があり、大勢の人が亡くなりました。

あの日、お父さんは携帯が圏外の山の中で仕事をしていて、帰宅して犬の散歩を済ませ、テレビをつけると大型商業施設が水没していて、ようやく大変な事態が起こった事に気付きました。

しばらくするとお母さんも帰って来て、2人で夕食もとらず、濁流に流される車の映像や、燃える海を唖然として見続けました。

あれから11年。急に家族を失われた方々の1人でも多くの人が心から笑える日常を過ごせていれたらいいのですが。

今回、キミに伝えたいのは、良いことは案外予測できるけど、えてして悪いことは突然やってくるということです。お父さんも何度となく突然の嫌な話に悶絶したものです。

最近で1番嫌だったのは、やはり悪性リンパ腫の告知でしたね。余命宣告の時は色々麻痺していたというか経験値を積んでいたし、ある程度覚悟もしていたのでそれほどでもなかったのですが、最初の癌告知は予想外だったので、身体が震えたというか、どうやって帰宅したのか、覚えていません。

●きっかけは首筋のコブだった

そもそもなんで癌が発覚したかというと、風花が小学校に入学した6月のある朝、首筋にコブができてました。

痛みも何もないけどカッコ悪いので薬局へ行き、薬剤師さんにコブを治す薬を頂戴なと言ったら鼻で笑われ、すぐに病院へ行けと言われました。

目についた医院に入り、症状を言うと、お医者さんの目つきが変わり、今からすぐに画像診断専門の施設に行けと言われ、CTを撮りました。

1週間後に最初に行った医院に行くと、A病院とB病院どちらがいいと聞かれ、通いやすいA病院を選択すると「悪性リンパ腫の疑いが濃厚です」とA病院への紹介状を渡されました。その時お父さんは悪性リンパ腫がなんなのか、よくわかりませんでしたが、厄介なことになったなということは理解できました。

A病院で鼻の奥から細胞を採られたり、腰の骨の中の液を採られたりして、悪性リンパ腫のステージ4と診断された時は、2つの意味で驚きました。

1つ目はお父さんは仕事柄、年に2回健康診断を受診していたのに何の意味も無かったこと。
2つ目は癌の告知って、テレビドラマでは家族にするのに、実際には患者本人に天気の話でもするようなノリでするんだってこと。

お父さんは外見から攻撃性能に特化した人と思われがちだけど、RPGでは防御力から上げる堅守防衛型なんで、この時も色んな防衛策を練ってはいたんだけど、全部吹き飛ばされました。

癌告知の破壊力、半端ないっす。

このように防げないこともあるんだけど、悪い出来事に対応できる策はもっておいたほうがいいとおもいます。良い事がおきて喜ぶ準備も、余裕があれば是非。

(2022年3月12日配信 YouTube「ジャムミント」#5 余命宣告をうけた父が9歳の娘に伝えたい癌告知の裏側と3月11日の悲劇より)

『お父さんは、君のことが好きだったよ。「余命半年」の父が娘へ残すことば』は、余命宣告された加治川さんの葛藤や、癌になったからこそわかったことや伝えたいことがつづられています。加治川さんからの“いのちのメッセージ”を通して、家族の絆が強く感じる1冊です。