安全性に加えて通気性もバツグン!ツーリングを快適にするアライの最新ヘルメットをお試し!

写真拡大 (全20枚)

安全性では世界一との評価を得ているアライヘルメット。初期の製品からFRP製の帽体と、発泡体の衝撃吸収素材という基本形を確立し、多くのライダーから支持されてきました。レースシーンではトップライダーが愛用していることでも知られていますが、同等の安全性を市販品でも実現していることも特徴です。

フラッグシップモデルからエントリーモデルまで、安全性では差を付けていない点もアライ製品の特徴で、モデルごとの違いは、快適性や用途に合わせた作りにあります。

また、長い歴史の中で、安全性だけでなく快適性についても進化を続けてきました。30年来アライヘルメットを愛用してきた筆者が、現行のツーリング向けモデル「アストロ-GX」と、オープンフェイスタイプの「クラシック・エアー」を実際にかぶってレビューします。

 

■ツーリングでの快適性を磨き上げた「アストロ-GX」

現行の「アストロ-GX」は2021年に発売された最新のツーリング向けモデル。見た目では、後頭部に大きめの“GTスポイラー”を装備している点が特徴です。アライ製のヘルメットは“R75 SHAPE”と呼ばれる曲面で構成されたタマゴ型のフォルムが特徴ですが、近年の流行であるエアロフォルムを取り入れています。

ただ、このスポイラーもタマゴ型の帽体に部品を後付けした作り。アライの安全性を実現するうえで重要な曲面によって衝撃を“かわす性能”を維持するため、強い衝撃が加わった場合はスポイラーが外れて曲面で衝撃を受け流す設計です。頭部後方の乱気流を抑え、エアロダイナミクスを向上させるので、長時間における疲労軽減に貢献します

もうひとつの特徴が、通気性の高さ。フロントの「Arai」のロゴ部分に開閉可能なダクトを装備した、その名も“フロントロゴダクト”を採用しています。同社のレース向けトップモデルである「RX-7X」にも大きめのダクトを装備していますが、“フロントロゴダクト2はツーリングなどの速度域での通気性を向上。時速50kmで約40%のエアー吸気量が増加しています。

また、頭頂部に近い箇所には左右に“Gフローダクト”と呼ばれるコンパクトながら大容量のエアー吸入量を確保するベンチレーションを装備。丸く滑らかなフォルムを維持しながら、通気性を増大させています。

そして、“GTスポイラー”の内側にも頭部の熱気を負圧で引き出すエアーアウトダクトを装備。フロントからエアーを取り入れるだけでなく、後方から熱気を抜くことでツーリングでの快適性を大きく高めています。

 

■安全性と使いやすさを向上させたシールドシステム

筆者は30年ほどアライ製のヘルメットをかぶっていますが、近年の大きな進化だと感じるのはシールドシステム。

昔のアライのヘルメットは、シールドが着脱しやすいとはいえませんでした。しかし、2015年から採用されている「VAS」と呼ばれるシールドシステムは、着脱が簡単で、シールドを交換したり清掃したりする作業が飛躍的にしやすくなっています。

ただ、このシステムも元は安全性を高めるために採用されたもの。

新旧モデルを比較するとわかりやすいですが、シールドの取り付け部分が24mm下げられています。これによって帽体の丸い面積がより広く確保できるようになり、安全性がさらに向上しているんです。

シールドの取り外しは簡単。シールド内側にある黒いレバーを押すと取付部のカバーが外れ、シールドを閉める方向に動かすだけです。取り付けも、ピンを赤い溝の部分にはめて、シールドを閉める方向に動かすだけと手軽にできるようになっています。

アライのシールドは、雨天でも曇りにくいことに定評がありますが(MotoGPで活躍したダニ・ペドロサ選手が雨のレースで試用し、曇にくさからヘルメットメーカーを切り替えた逸話は有名)、曇り止めの「ピンロックシート」を装着することで、さらに曇りにくくすることが可能。これをつけると、口元で息を吹きかけても曇らせることができないくらいになります。

また、ツーリング向けには「プロシェードシステム」というシールドも用意されています。これは、サンバイザーを兼ねるスモークシールドが一体となっているシールドシステム。スモーク部分を上げておけばサンバイザーとして機能し、下げればスモークシールドになるという便利なシステムです。

このシステムにも、バイザーをヘルメット本体に装備するのではなく、シールド側に一体化させることで“かわす性能”を損なわないようにというアライの考え方が現れています。

 

■クラシカルな見た目と快適性を両立

もうひとつ試してみたのが「クラシック・エアー」というオープンフェイス(ジェット)タイプのヘルメット。こちらは2020年に登場したモデルです。

クラシックなシルエットを実現していることもあって、アライ製品にしては珍しくスネル規格を取得していませんが、スネル規格と同等の3mからの耐貫通テストもクリアしており、安全性は高いレベルにあります。

安全性を確保しながら、スリムなシルエットを実現しているので、クラシックなルックスで頭が大きく見えないのもメリットですが、一番の特徴はエアーという名前にもあるように通気性です。

フロントに吸入口こそありませんが、新開発の“エアフローライナ・ベンチレーション”というシステムを搭載。これは後方に設けたエキゾーストダクトから、ヘルメット内の熱気を排出させるためのベンチレーション機構です。

これはシェルの内側に熱気を抜くための排気口を設け、その穴をつなぐように内部に風の通り道を作り、エキゾーストダクトから熱気を抜くシステム。これによって、シェル外側にはダクトを設けずクラシックなデザインを実現しながら、通気性を確保しています。

さらに、着脱式の内装を採用することで、内装部品を洗濯できるようになりました。元から内装は抗菌・消臭仕様でしたが、洗濯が可能になったことでさらに清潔に使うことができます。

このタイプのヘルメットは、乗っているバイクや服装などに合わせて、スタイルを変えられるのもメリット。筆者は上の写真のようにコンペタイプのシールドを装着して使っていますが、クラシカルなバイザーなども装着できるので、最近流行りのスクランブラータイプのバイクにも似合いそうです。

 

■ツーリングに最適な快適性を実感

スペックからも、かなり期待値の高い「アストロ-GX」と「クラシック・エアー」ですが、実際にかぶって走ってみると、その快適性は期待以上でした。

まず、「アストロ-GX」ですが、かぶる際から従来モデルとの違いが感じられます。アライ製のヘルメットは、安全性を重視しているため、入り口がタイトで着脱の際には結構キツさを感じるものでした。しかし「アストロ-GX」は従来より開口部が前に5mm、左右にも5mmずつ広くした新設計の帽体が採用されています。これも、休憩の際などにヘルメットを着脱する機会の多いツーリング向けの配慮です。

通気性についても、走り出してすぐに違いを感じることができました。筆者は普段、同社製の「RX-7X」をかぶっていますが、こちらも大きめのダクトがあって通気性は高いものの、その効果を感じるためには結構なスピードを出す必要がありました。高速道路などでは効果を感じるものの、ミニサーキットを走っているくらいでは「少し風が入ってきてるかな」という程度の印象だったのが、「アストロ-GX」では街乗り程度の速度域でも効果を実感することができます。

「GTスポイラー」の効果も高速域ではすぐに実感できて、スピードを出しても頭が振られることがありません。これは、高速道路を使った長距離ツーリングではかなり疲労感に違いが出てきそうです。ツーリング向けのモデルではありますが、圧倒的な着脱のしやすさもあって、街乗りや通勤などでの使用にも適しています。今後は「RX-7X」よりも、「アストロ-GX」の出番が多くなりそうだなと感じました。

そして「クラシック・エアー」の快適性にも驚かされました。筆者は同じオープンフェイスタイプの「クラシック・モッド」というモデルも使っていましたが、「クラシック・エアー」はかぶった瞬間から違いが感じられます。内装の感触もさらっとしていて快適。内装が頭に密着している感覚が薄いので、「ちゃんとかぶれているかな」と確認してしまったほどです。

走り出しても通気性の高さは段違い。風が抜けていく感覚はヘルメットをかぶっていない状態に近く、きちんとかぶれているのか再び確認してしまったほどでした。街乗りでウィンドウなどに映る自分の姿を見てみると、予想以上に小顔(小頭?)に見えてカッコいい。これで安全性が高いのですから、クラシックタイプのヘルメットを求めているなら、迷わずこれを選ぶべきと感じました。

*  *  *

安全性に定評があり、それが理由で30年ほどかぶり続けてきましたが、最新モデルをテストすることで、快適性も確実に進化していることが感じられました。アライのヘルメットは値段が高いという声も耳にしますが、命を守るものでもありますし、ツーリングやバイクライフが快適になるのであれば、それだけの価値はあるものだと実感できると思います。

>> アライヘルメット

<取材・文/増谷茂樹>

増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。

 

 

【関連記事】

◆サーキットで鍛えられた安全をすべてのライダーに! アライヘルメットが世界一安全といわれる理由
◆レプリカ世代垂涎のマシンからスクランブラーまで、東京モーターサイクルショーで見かけた気になるバイク6台
◆Z900RSからハンターカブまで! 歴史的名車を現代の技術で復刻したバイク6選