「ステュディオス」ネームタグ復活へ オリジナル商品の製造販売を再開
オリジナル商品廃止時は、セレクトショップとしての感度をより高める狙いがあった。いわゆる“セレオリ”は一般顧客に支持されていても、業界人からは「ダサい」など否定的に捉えられる傾向がある。FASHIONSNAPが2020年に同社に実施したインタビューでも、谷代表は「オリジナル商品は日本製に徹底して質は高めていたが、スタッフはあまり着ていなかったようで、自分たちが買わない物をお客さんに提供するのはどうなのか、という思いがあった」と明かしていた。実際に、オリジナル商品廃止から約1年後に実施した「トップに聞く」のインタビューでは、実店舗のウィメンズや「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」での売上に影響があったものの、「メンズに関してはむしろ売上が上がり、高額なものも売れるようになった」「ステュディオスにより洋服好きが集まるようになったような実感がある」と手応えを語っていた。
ステュディオスのオリジナル商品再開の背景には、ウィメンズの不調がある。オリジナル商品廃止後は、ウィメンズブランド「シティ(CITY)」などのストアブランドに注力していたが苦戦。単価も引き上がり、「強気な事業になってしまった」と谷代表は振り返った。
セレオリに対して、谷代表も「業界の評価に流されていた時期があった」としながら、「ロンハーマン(Ron Herman)」や「キス(KITH)」といったオリジナル商品の評価が高い例を挙げ、今回復活させるオリジナル商品では顧客と向き合いつつ、メイドインジャパンの強みを活かし、外部デザイナーの力を借りながら商品開発を進めていくという。
オリジナル商品の開発は、セレクト型コミュニティ・ストア「ザ トウキョウ(THE TOKYO)」でも本格的に展開する。今春からすでに着手しており、少しずつ売上が伸びている段階だという。ステュディオス、ザ トウキョウではいずれも間口を広げるだけではなく、ブランドを象徴するようなオリジナル商品を打ち出していきたい考えだ。反響次第では中国市場にも投入を検討する。
◆2024年1月期は既存事業強化に注力 新規出店はゼロ
2023年1月期は、日本国内の消費が盛り上がりを見せた一方で、同社がこれまで注力してきた中国本土のゼロコロナ政策が響き、売上が不振。通期連結売上高は191億8100万円(前期比3.1%増)、営業利益は2億1500万円(前期比76.5%減)、純損失5億3900万円(前期は純利益7億6200万円)に着地した。利益率が高い中国や香港事業が落ち込み、売上構成比率が下がったことなどを理由に、売上総利益率は50.1%で前期から2.3pt減となった。日本単体では営業利益は前期比45.1%増と大幅に回復した。
今期(2024年1月期)は既存事業の収益力向上と中国事業強化に努める。中国本土の外的要因以外の課題としては、「ユナイテッド トウキョウ(UNITED TOKYO)」「パブリック トウキョウ(PUBLIC TOKYO)」が内外価格差の影響もあり、狙い通りに進捗していないという。今後は日本で売れているベーシックな定番品やトレンド商品といったマス向けのラインナップを縮小し、足元の状況を注視しながらデザイン性の高い商品で勝負する考え。
日本単体においてもユナイテッド トウキョウが伸び悩んでいる。2015年にデビューし成熟した事業になったが、これまで蓄積してきたデータや既存のイメージに縛られていた部分があり、新しい提案ができなかったという。メンズではデザインチームを変えた結果、足元で成果が見え始めている状況で、ウィメンズでも体制の変更を検討していく。ともに赤字となっている新規事業「エープラス トウキョウ(A+ TOKYO)」とザ トウキョウは今期、黒字化を目指す。
なお、今期の新規出店は国内外ともにゼロ。中国や香港以外の海外戦略ではアメリカ進出に向けて準備を進めているが、予定を半年延期し、2024年度中に実現させる計画で、ニューヨークのソーホーに路面店を出店する考えだ。
※日本・香港現地法人は2022年1月期に決算期を変更したため、11ヶ月決算。前期比実績では2022年1月期に21年2月単月を加算した12ヶ月換算と対比している。
■2023年1月期連結業績
売上高:191億8100万円(前期比3.1%増)
営業利益:2億1500万円(前期比76.5%減)
純損益:5億3900万円(前期は純利益7億6200万円 ※11ヶ月間の実績)
■2024年1月期連結業績予想
売上高:200億円(前期比4.3%増)
営業利益:15億円(同597.6%増)
純利益:10億円