©︎IMAGO/Matthias Koch

 無論チャンピオンズリーグ準々決勝へとコマを進めた喜びは、バイエルン・ミュンヘンの選手たちの表情にも色濃く現れていた。確かに内容的にみても突破に見合っていたとはいえるだろうが、それでも幸運の女神が味方したこともまた自認。前半38分にヤン・ゾマーが致命的ミスをおかしてヴィティーニャにガラ空きとなったゴールにグラウンダーのシュートを放たれるも、マタイス・デ・リフトが間一髪でクリア。

 ゾマーも勝敗の分かれ目となったであろうこの場面に「デ・リフトの玄関先にスイスチョコレートをトラックで山積みする」と感謝の気持ちを表現し、またトーマス・ミュラーは「時に運も味方につけないと」とDAZNとのインタビューにて振り返った。「そうなっていたらどう反応できていたか。でも僕たちは後半からは消極性を捨ててより明確に守備に取り組んでいた。だから勝利にはふさわしかったとは思う」

ゾマー「守備にいそしむ姿は素晴らしい」

 ナーゲルスマン監督も、前半の45分間については「誤っていたことがいくつも見受けられていた。自分たちが引き摺り出されてしまい、スペースが大きくなりすぎていたよ。ポゼッション時にはスペースはあったがでも不安定だった」と不満を示しており、パリ・サンジェルマンがやりたかった意図がはっきりと示されていた展開であったと総括。「彼らは6・7人の選手を引き出すことによって、スペースを生み出そうとしていた。後半からはより忍耐強く我々は守れるようになって、明らかな改善をはかれたよ。だから勝利に繋げることができた」と胸をはるように、バイエルンは今回のCLでは通算7試合目の零封。しかもその相手はインテル、バルセロナ、パリ・サンジェルマンといった強豪クラブが名をそろえているのだ。

 「守備にいそしんでくれるチームメイトをみるとクールさ。僕たちは積極的にディフェンスをするチームであり、そしてそれがなかなかチャンスを作れないこういう試合での鍵となる」とヤン・ゾマー。あくなき向上心と気迫をもってクオリティを発揮することができれば、いかなる相手からも勝利をつかみ取れるということの証が今回の結果であり、それができなければ「ブンデスリーガ内には、我々を大いに苦しめることができるクラブが多数ある」こともまた、このシーズン中に示されている。

パリには多くの疑問を投げかける敗退劇

 実際にこの試合で与えた決定機は、わずか4。前述の致命的なゾマーのミスと、あとはCKから生まれた2度のチャンスであり、パリ側からみればカタールW杯では主役を演じたメッシやエムバペの個人技に頼りすぎて、むしろ他の選手が重要な立場であるという認識の欠如からパフォーマンスも限られたものになってしまったともいえるかもしれない。それは特に大一番では致命的だ。そしてセルヒオ・ラモスもマルコ・ヴェラッティも2度の失点に絡むなど、最後まで兆しをみせられなかった試合の後、エムバペは「これからリーグ戦に集中する」とコメント。もはやそちらの体勢は決まっており、あとは悲願のCL優勝がパリの目指した先。今回のパフォーマンスはパリに多くの疑問を投げかけるもので、これでガルティエ監督とともにエムバペ自身の去就も話題となるだろう。

マズラウイ復帰でさらに定位置争いが激化

 逆にいえばこの試合の勝利は確かにバイエルンにとって見合ったものだ。非常に集中したプレーで規律面でも正しく、指摘するように守備面では我慢強く耐え続けて、待ち続けたチャンスを最大限に活かしての勝利。前回活躍をみせたパヴァールが出場停止という中で、代役を担った若手DFスタニシッチが奮闘。リーグ戦では一時つまづきがあり批判的な声も寄せられたが、何より評価の分かれ目となるCLでの結果では好成績を収めている。軸の構築のためミュラーを再重用してリーダーに据え、シュポ=モティングは日々自信の高まりをみせつけているところ。

 さらにこの試合では試合の勝敗以上にバイエルンに朗報が見受けられた。今年に入ってはじめてノゼア・マズラウイが、ベンチメンバーに顔をみせていたのである。カタール・ワールドカップにてモロッコ代表として参加していた同選手は、最終的には3位決定戦に進むなどチームと共に飛躍、しかしながらそこでコロナに感染し心膜の炎症も発症。これを受けてバイエルンはマンチェスター・シティからジョアン・カンセロを獲得し新たなライバルも加わるという過酷な状況に陥ってしまったが、この日に先発したスタニシッチも含む三つ巴の激しい定位置争いがこれから待っている。

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- FC Bayern München (@FCBayern) March 8, 2023