フジ『ぽかぽか』で「ルフィ逮捕」連呼の悪ノリに不快感、時事ネタ“完無視”する『ラヴィット!』との差
「ちょっと待ってください! 皆さん、ルフィ逮捕ですよ! ルフィ逮捕となりました! 強制送還されたあのルフィが、今日本に着き逮捕されました!」
【写真】「大人のやーつ」娘と散歩中のハライチ・澤部がツッコミを入れたのは?
2月7日放送のフジテレビ系のバラエティ番組『ぽかぽか』放送中、番組進行を遮って声高に叫んだのはMCを務めるハライチ・岩井勇気。
企画コーナーの出演者を迎える直前に流れた《フィリピンから送還中の機内で今村磨人容疑者と藤田聖也容疑者を逮捕》とのニュース速報を伝えた格好だが、岩井に合わせるように番組内のテロップでも《速報“ルフィ”逮捕》と表示。
カメラ目線で何度も“ルフィ逮捕”を連呼する岩井に対し、「我々は(ニュースを伝えなくて)いいんですよ、別に。『ぽかぽか』やってんだから」と慌てて嗜める相方・澤部佑。カメラマンまでもが煽るように岩井をアップにするとスタジオは大爆笑。
「いいから!他に任せて。そういうのは」なおも場を収めようとする澤部を嘲笑うかのように、岩井は「アナウンサーの神田さん、お願いします」と、同じくMCの神田愛花に振ると、「ルフィと言われる男が逮捕されました。詳しい情報が入り次第ニュースセンターからお伝えします」と困惑しつつも“職務”を果たしたのだ。
日本中を震撼させた連続強盗事件の指示役として関与が疑われる、“ルフィ”と名乗る日本人4人の逮捕劇が連日にわたってニュースや情報番組、ワイドショーを賑わせている。その流れに『ぽかぽか』も乗っかったようだ。
岩井の発言に“不適切”“不謹慎”
「これが芸能人や政治家のスキャンダルなら騒がれることはなかったのですが」とは、スポーツ紙芸能デスク。
「強盗被害者だけでなく死者も出ている一連の凶悪犯罪だけに、ネット上では笑いのネタにしたような岩井の発言を“不適切”“不謹慎”と批判する声が上がっています。さらには容疑者の名前や事件名でもなく、“ルフィ逮捕”とのテロップを出した番組、フジテレビにも疑問視する声。
“バラエティだから”と言えばそれまでのやりとりですが、番組を仕切る澤部が見せた対応が全て。番組の本質から脱線しようとも、“おもしろければいい”という体質はそう簡単には変わらなそうで」
同局の“お昼の顔”として2023年1月にスタートした新番組『ぽかぽか』は、生放送のバラエティ番組だ。同枠で放送されたエンタメ系情報番組『ポップUP!』、そしてワイドショー色が濃かった『バイキング』や『バイキングMORE』とは別路線を走っている。
「そもそもフジのお昼といえば『森田一義アワー 笑っていいとも!』や『ライオンのごきげんよう』が象徴するように、バラエティ番組の方が馴染み深いわけで、そんな原点回帰や、裏番組との差別化を図るためにも時事ネタを一切取り扱わない(終盤のニュースコーナーを除く)方針を打ち出したはず」(前出・芸能デスク)
2014年に『いいとも』を引き継いだ『バイキング』も、当初はタレントや芸人が日替わりでMCを務めるバラエティ番組としてスタートした。ところが視聴率が振るわないと見るや、徐々に坂上忍をメインMCにしたトークバラエティ、そしてニュース討論番組へと姿を変えていく。
番組が根付くまで待てない
キー局の情報番組を手掛ける制作会社ディレクターが、その背景を代弁する。
「かつて視聴率をほしいがままにしていた時代を知る上層部は、今もなお数字に固執する傾向があるみたいで、新番組の低空飛行が続くと早々に“テコ入れ”を口にするそう。時にバイキングのようにうまく転ぶこともありますが、多くは早期の打ち切りになることも。
“番組が世間に根付くまで待っていられない”という印象で、制作側は常にプレッシャーを感じていますよ。片や、当初は“おもしろくない”との烙印を押されながらも、方向性を見失わずに番組を続けたことで結果を出したのがTBSさんの『ラヴィット!』だと思います」
TBS系の朝番組として2021年3月にスタートした『ラヴィット!』。お笑いコンビ『麒麟』川島明と田村真子アナが司会を務める番組は、それまで同枠で続けていたワイドショー路線から脱却した、ニュースを一切扱わない完全なるバラエティ。
しかし、同局にとって大きな“賭け”だったようで。
「前番組の『グッとラック!』が振るわなかったとは言え、主婦も多い“F2・3層”の視聴者が多い時間帯で、時事ネタを捨てることは勇気がいる決断だったと」(前出・ディレクター、以下同)
放送当初は『ジョブチューン』(同系)や『ヒルナンデス!』(日本テレビ系)の“二番煎じ”などと揶揄されては早期の打ち切りが囁かれるも、地道に放送を続けたことで流れが徐々に変わった。
時事ネタに触れない内容に好感
「世帯視聴率は『モーニングショー』(テレビ朝日系)には及ばずとも、録画して視聴したり、『TVer』でスマホ視聴する若い世代も多く、たびたびSNSのトレンドに上がっては話題になり、習慣化されていった印象です。
そして当時のワイドショーや情報番組といえば、コロナ偏重の報道ばかりで毎朝うんざりしていた視聴者も多かったと思います。その中で時事ネタには触れない『ラヴィット!』は新鮮で、ニーズにマッチした結果と言えます。
制作側はおもしろい番組を作りたいのは当然で、それにはブレない方向性や本質を演者やスタッフ、局とで共有する必要があると思います。岩井さんの発言は本人なりに、番組を盛り上げたい一心でしょうが、澤部さんも含めて今1度確認した方がいいかもしれませんね」
番組スタート時から世帯視聴率は『ポップUP!』を下回り、時に1%台を記録するなど苦戦を強いられている『ぽかぽか』。果たして『ラヴィット!』のように我が道を進むのか、それとも“テコ入れ”の機会を伺っているのか。