「ChatGPT」で小説を書いている作家にAIを使ったらどうなったのかインタビュー、AIで小説を書く方法や倫理的な課題について一問一答
OpenAIが開発したチャットボット「ChatGPT」は、経営学修士課程(MBA)の最終試験で合格点を獲得したり、研究論文の著者として名を連ねたりといった活躍を見せており、AIを活用して創作を行う人も増えています。Leanne Leedsというペンネームでミステリー小説を執筆し、AmazonのKindleで矢継ぎ早に長編小説を発表している小説家のジェニファー・レップ氏が、IT系ニュースサイト・The Vergeのインタビューに回答しました。
https://www.theverge.com/23520625/chatgpt-openai-amazon-kindle-novel
The Verge:
レップ氏を始めとする独立系の作家は、早くからAIなどのツールを活用していましたが、ChatGPTが登場してからは多くの人が突然ChatGPTに取り組むようになったと感じます。それについてはどう思われますか?
ジェニファー・レップ氏(以下、レップ):
以前はAIを何に使うべきかも分からず、見ない振りをしている人がほとんどでしたが、ChatGPTはそれを一変させました。今日では私が参加している作家グループのような多くのグループで、AIについての議論が行われています。
これまでのところ、多くの人の関心は重要でない部分での用途です。例えば、「私はプロットを作るのは苦手だから、誰かにプロットをきっちり練るのを手伝ってもらいたいんだけど、AIはそれがすごく上手だからプロット作成に使おう」とか、「あおり文を作るのは苦手だけど、誰かに作ってもらうにはお金を払わなくてはならない。それに、あおり文は小説の執筆とは言えない。それなら、あおり文を作るのが上手なAIに書かせよう」という具合です。また、校正に使う人もいます。
そうした人の多くは自分が書きたいものの核心に近づいた時にAIの使用をやめますが、私は使っています。AIは私の作品のプロットやアイデアの原動力になったり、登場人物を作ったりしませんが、より速く執筆するのに使っています。ですから、私はAIの是非をめぐる小説家たちの議論に加わるべきか悩むことがよくあって、大抵の場合は傍観しています。
The Verge:
多くの人はどこでAIを使っていいかどうかの線引きをしていると思いますか?
レップ:
多くの人々の心配事は盗作です。AIが、許可があるとないとにかかわらずいろいろなデータをクローリングして作られたものであることは、よく知られています。
また、倫理的な問題もあります。私は、小説家のジム・ブッチャーの語り口や、無感情なのに皮肉が効いた文体が好きなので、彼のオーディオブックをよく聞いています。
そこで、あるキャラクターでそれを表現しようと思って、AIに「ジム・ブッチャーのスタイルで書き直して」と命令してみました。すると、アーバンファンタジー的な、無感情な感じの言い回しに書き換えられました。さて、これはどこから来たものなのでしょうか?
このような問題はビジュアルアーティストらの懸念と同じたぐいのもので、同じ恐怖から来たものです。ただ、ビジュアルアーティストのコミュニティではこの傾向がより顕著に出ています。
また、私の友だちのインディーズ作家の内3人は、AIが自分の作品を読むことを許可していませんが、私はAIで彼らのスタイルをある程度再現することができてしまいました。
The Verge:
AIを説明文のようなものに使うことと、他の作家の文体を模倣するのに使うことの間に境界線があると思いますか?
レップ:
はい。それこそ私の倫理的な一線です。私はジム・ブッチャーが好きで彼のように小説が書ければいいと思いますが、自分の作品を彼の文体に書き換えて、彼の作風を盗もうとは思いません。ただ、倫理的な問題を抜きにすれば、テクノロジーでそれができるようになったのは確かです。
The Verge:
ChatGPTを作品に取り入れたことはありますか?
レップ:
今はタイトルとプロット、特にミステリー小説のプロットを作るのに使っています。また、あおり文も作らせています。
ChatGPTで小説を書き始めたとき、最初は自分が誰で、何を必要としているかを伝えることから始めました。例えば「私はテキサス州の小さな町、テーブルロックで起きる超常現象モノのミステリーを書いています。それには女性のアマチュア探偵が登場します。また、殺人事件の被害者が必要で、彼らがどのように殺されたのかが必要です。4人の容疑者も必要で、容疑者の動機とそれを突き止める捜査方法についての情報が必要です。そして、真犯人は誰なのかを教えてください」という具合です。すると、ChatGPTは命令したとおりに出力してくれました。
The Verge:
ChatGPTで作品を作ってみて、どうなりましたか?
レップ:
今は7作分のプロットがありますが、これらの殺人ミステリーはすべてChatGPTが作りました。一部は私が編集しましたが。特に印象に残っているのは、ChatGPTに「この作品はコージー・ミステリーなのでユーモアが必要」と伝えると、私が必要としているものを理解してくれることです。容疑者の名前もかわいらしいものにしてくれますし、動機も血なまぐさいものやシリアスすぎないものにしてくれます。
The Verge:
そこまで自動化しても、自分がストーリーをコントロールしていると感じますか?
レップ:
私が書くコージー・ミステリーには2つの要素があります。それは、殺人事件の発生とそれを契機に動き出す登場人物たちです。しかし、私の作品では殺人事件が物語の展開そのものより重要ではないことが多々あります。つまり、殺人事件が起きてもそれは愉快な騒動やおかしさの元になるものに過ぎないので、殺人事件がすべての発端であるにもかかわらず、それがどういう事件かはプロットにとってあまり重要ではないわけです。
The Verge:
ブックカバーにもAIを使っているとうかがいました。
レップ:
全ての表紙をDALL-Eで作った訳ではありませんが、7冊目の本では使いました。この作品には、ライコイという、不細工なのがかえってかわいらしい猫が登場します。ライコイというのは、毛がある猫とを毛がない猫を掛け合わせた新しい品種らしく、毛がまばらに生えているところがオオカミ男のような猫です。
ですから、表紙を作るにはライコイの猫を見つけて、その写真を撮影できるカメラマンを雇う必要がありましたが、それは高く付きます。そこで、ふとDALL-Eを使ったらどうかと疑問に思って、さっそくアカウントを作って使ってみました。その結果、私は時間とお金の節約ができましたが、カメラマンや猫の飼い主はお金を受け取ることができませんでした。
The Verge:
小説を書くAIや、小説家によるAIの使用は、今後どのように進化していくとお考えですか。
レップ:
私はどっちつかずな状態なので、AIがこの先どっちに転ぶかは分かりませんが、AIを使うのが苦手な人には絶対にお勧めできません。でも、AIはそういう人たちの暮らしにも浸透していくと思います。既に私たちは似たようなソフトウェアにまみれていますから、そこから離れるのは難しいでしょう。
それと、ChatGPTには衝撃を受けました。私は以前、「あと3〜4年したらAIツールもまともになるだろう」と思っていましたが、ChatGPTが出て「ああ、こんなにすごいことになったんだ」と実感しました。それからもうしばらくたっていますが、AIはさらに信じられないスピードで進歩していますから、今後どうなるかという質問にはほとんど答えられません。