新宿から自転車そのまま持ち込めます! 京王が実証 「Mt.TAKAO号」ならでは?
京王電鉄が、列車内に自転車をそのまま持ち込める「サイクルトレイン」の実証実験を行いました。モニターはサイクリスト6人。初めての人もいれば他社で経験ありという人も。新宿から高尾山口まで、どう感じたのでしょうか。
座席は1人3〜4席を占有する形に
東京の大ターミナル駅から、自転車をそのまま列車へ持ち込んで移動できたらどんなに楽でしょうか。日本の鉄道会社の多くは運送約款で、列車内に持ち込める手回り品を制限しており、自転車については「解体して専用の袋に収納したもの、または折りたたんで専用の袋に収納したもの」でないと持ち込めないとされているケースがあります。
新宿駅にて、京王線の「Mt.TAKAO号」に乗り込むモニターのサイクリストら(2023年1月28日、大藤碩哉撮影)。
2023年1月28日(土)、京王電鉄が新宿〜高尾山口間で「サイクルトレイン」の実証実験を実施。これは座席指定列車「Mt.TAKAO号」(10両編成)の1両を貸し切りとし、折りたたむなどせず自転車をそのまま持ち込めるサービスです。
朝8時半。新宿駅の地下駐車場には、スポーツタイプの自転車を持った6人のモニターが集合していました。発車10分前の8時50分、京王線のホームへ移動開始。「Mt.TAKAO号」が入線して来たのは54分でした。ただ座席をクロスシートからロングシートへ転換するため、ドアが開くまでには2分弱かかりました。ちなみに「サイクルトレイン」においてロングシートモードにする理由は、車内での通路確保のためです。
ドアが開き乗り込んだら、手すりがある場所に自転車を置き結束バンドで括りつけます。座席はモニター1人が3〜4席を占有する形に。内訳は2〜3席が自転車用(前に置く)、1席がモニター着座用です。
そのまま持ち込める手軽さよ…
「Mt.TAKAO号」の途中停車駅は明大前(世田谷区)のみ。新宿駅から終点の高尾山口駅までは43分で到着です。列車内でモニターは、当日のサイクリングコースの確認や仲間同士での談笑をしていました。
列車内へ愛車をそのまま持ち込める。サイクリストも満足そうだった(2023年1月28日、大藤碩哉撮影)。
参加者の1人、30代の男性に話を伺うと、当日はJR山手線で新宿駅まで来てから「サイクルトレイン」に乗ったとのこと。山手線へは自転車をそのまま持ち込めませんから、新宿駅では自転車を組み立てたといいます。
この組み立て、もしくは分解といった作業には、人によるものの10〜30分かかるとのこと。特に駅で行う際は周囲の通行の妨げにならないよう隅で行わなければならず、そういった手間のかからない「サイクルトレイン」は魅力的だと話します。また「サイクルトレイン」乗車は3回目だといい、前回は伊豆箱根鉄道駿豆線だったそう。
話を伺ったもう1人も30代の男性でした。新宿駅へは自宅から約10km自走したとのこと。やはり自転車の組み立て、分解の手間を省くためだそうです。モニター募集は、今回の「サイクルトレイン」を共同で開催した自転車メーカー「ジャイアント」のウェブサイトで知ったそうで、「サイクルトレイン」への乗車は初めて。愛車をそのまま列車へ持ち込める非日常を味わいたかったと話します。改めて、43分間の乗車は快適だったと満足げな表情でした。
ニーズはどのくらいあるのか
高尾山口駅では、モニターは皆エレベーターは使わず、各々の自転車を担いで階段で改札口へ。いわゆる“ママチャリ”とは違いスポーツタイプの自転車は、車体にカーボンなどの素材を使うため、想像するより軽いのだそうです。
新宿より幾分気温の低い高尾。さらに連日の寒気の影響で、日陰の路面は凍結していました。モニターはサイクルコースの最終確認を行い、「無事にここへ戻って来ましょう!」と挨拶し出走。復路は15時15分発の「Mt.TAKAO号」で新宿へ戻るようです。
いざ出走(2023年1月28日、大藤碩哉撮影)。
一連の実証実験の目的について京王電鉄は、「都心エリアにお住まいのサイクリストの、多摩西部地域への観光ニーズと、列車内への自転車の持ち込みに関するお客様のニーズを確認」することだとしています。モニターへの応募も想定以上にあったそうです。
停車駅や料金についても、モニターへのアンケートや今後の実証実験を通して最終的に判断するといいます。特に停車駅については、自転車というある程度サイズがあるものを携行する観点から、ホームの広さやエレベーターの有無など駅設備の制約も考える必要があるとしています。そのため、今回は最速達列車である「Mt.TAKAO号」で行われたのでした。
いずれにしても、第2回以降の実施を前向きに検討し、回数を重ねて課題などを洗い出していきたいと話しました。