「暖房病」になると現れる症状・対策はご存知ですか?医師が監修!
寒い時期になりやすい病気として暖房病があります。暑い時期の冷房病は聞いたことがあり、同様の症状と思う方も多いかもしれません。
しかし、原因や細かい症状は全く異なります。勘違いしたままでは、思わぬ体調不調を招く可能性もあるでしょう。
そこで本記事では、暖房病についてご紹介します。症状・原因・病院へ行く目安・受診する科・暖房病の対策なども詳しく解説するので参考にしてください。
暖房病の症状と原因
暖房病はどのような病気でしょうか?
暖房病とは、暖房が効きすぎることで発症する諸症状の総称です。冷房病の場合は、冷房が効いた室内と暑い外気との激しい温度差によって、自律神経が正しく働かなくなってしまう病気です。同じような名前ではありますが、暖房病は違います。体が温かくなりすぎてさまざまな症状が発症するのです。
症状を教えてください。
暖房病の症状としては、次のようなものが挙げられます。肌・目・喉の乾燥
頭痛
吐き気
暖房が効きすぎている部屋は、非常に乾燥した状態となります。通常、人が快適に過ごせる湿度は40%~60%程度です。しかし、暖房が効いて乾燥が進むと湿度は20%台に下がってしまいます。ここまで乾燥が進むと、肌・目・喉などの乾燥を引き起こすのです。
また、暖房によって頭や上半身が温められることによってのぼせてしまい、頭痛・めまい・吐き気などのさまざまな症状を引き起こします。
暖房で頭痛やめまいが起こる原因は何でしょうか?
頭痛やめまいなどが起こる原因は、効きすぎた暖房による脱水症状です。冬は空気が乾燥しやすい傾向があり、その状況でエアコンなどを使用すると先述したように湿度の著しい低下が起こります。乾燥した部屋の中では、特に自覚症状がないまま皮膚や粘膜などが乾燥し、呼気から水分が失われる不感蒸泄が増えてしまいます。それに加えて、冬は汗をかきにくい季節です。
そのため、水分を失っている自覚や警戒心が低く、夏場と比較すると水分補給を行う機会が少なくなります。その結果、脱水症状を引き起こすのです。
暖房による不調の原因は脱水にあるのですね…。
暖房によって脱水が起こると、さまざまな不調につながる可能性があります。冬では自覚しにくい脱水症状を引き起こしているケースがあり、これを隠れ脱水と呼びます。隠れ脱水は、深刻な脱水症状の手前の状態でありながら、自覚しないために水分補給を怠りがちです。そして、先述したような不感蒸泄などにより水分がさらに失われると、血液中の水分が減るためドロドロとした流れにくい血液になってしまいます。その結果、血流が悪くなり頭痛や吐き気を発症してしまうのです。
暖房病の受診と治療
病院へ行くべき暖房病の症状はありますか?
病院に行くべき暖房病の症状としては、吐き気や頭痛が挙げられます。脱水症状によりこれらの症状を引き起こす可能性があるとご紹介しましたが、実は初期段階にみられる症状があります。主な初期症状としては、口の粘つきや肌のかさつきです。この状態では、脱水はまだ軽度の段階です。
しかし、脱水が進行すると吐き気や頭痛を感じるようになります。危険な状態の可能性もあるため、これらの症状を感じた場合には専門の医療機関を受診した方が良いでしょう。
何科を受診すれば良いでしょうか?
暖房病による体調不良を感じた場合には、内科を受診しましょう。脱水症状に対して、経口補水液などを使用して治療が行われます。また、緊急を要するような症状がみられた場合には救急科を受診しましょう。治療方法を教えてください。
暖房病の治療方法としては、脱水症状の改善に向けての対処を行います。主な治療方法は、自力で口から水分補給が可能な場合には、経口補水液などの投与を行います。しかし、重度の脱水症状を引き起こしている方や高齢の方の場合は、自力での飲食が困難なほど衰弱しているケースもあるでしょう。その場合は、点滴により水分や電解質の補給を行います。
また、頭痛やめまいなどの症状以外にも、血圧の低下や意識障害などの症状がみられる際には入院したうえでの治療が必要となる可能性もあります。
暖房病の対策
暖房病の対策を教えてください。
暖房病の対策としては、次のようなものが代表的です。こまめな水分補給
水分量の多い食事
湿度を保つ
隠れ脱水により暖房病の症状が表れるため、脱水症状にならないようにこまめな水分補給が非常に大切です。喉の渇きを感じた段階では、軽度の脱水症状が起こっている可能性があります。
そのため、喉の渇きを感じていない場合でも、こまめに水分補給を行うことが非常に大切です。特に、高齢者の場合には喉の渇きを感じる機能が低下していることも珍しくありません。脱水症状になりやすい傾向があるため、こまめに水分を摂るようにしましょう。大まかな目安として、高齢者の場合は1日あたり1.2Lの水分を飲む必要があると考えられています。
また高齢者でない場合でも、健康のためには現在飲んでいる水分に加えて、さらにコップ2杯分の水を飲んだ方が良いといわれています。この目安をもとに、水分を定期的に補給することが非常に大切です。また、水分量の多い食事も重要です。
特に高齢者の場合は、1日に必要な水分を全て飲み物から補給するのは難しいと考えられています。そのため、積極的に水分量の多い食事を摂ることが必要です。水分量の多い食材としては、主にホウレンソウや小松菜などの緑黄色野菜、リンゴなどの季節の果物などが挙げられます。電解質も含まれているため、飲み物からの水分補給が難しい場合には、食事にも気をつけましょう。
さらに、湿度を保つことも大切です。冬は乾燥しやすく、暖房をつけると先述したように湿度が大きく下がります。快適な湿度は40%~60%といわれており、湿度を保つことで他の病気の予防にもつながります。最適な湿度を保つためには、加湿器の使用や定期的な換気を行いましょう。
また、乾燥を招く可能性があるものとして、発熱量の多い室内の照明なども挙げられます。発熱量の多い室内照明が設置されているのであれば、比較的発熱量が少ないLED照明などに変えることでも乾燥が防げるでしょう。
職場の暖房にはどのように対処すれば良いでしょうか。
職場においても基本的な対処法は変わりません。こまめな水分補給や湿度を保つことが大切です。しかし、職場の湿度を自由に変えられないケースもあるでしょう。その場合は、加湿器などを使って、自分の周囲だけでも湿度を上げる工夫を行いましょう。水を入れたコップを置いたり、濡れたタオルなどを干したりする方法も有効です。また、扇風機やサーキュレーターなどを使って室内の空気を循環させましょう。室内の空気を循環させれば、温まった空気が溜まるのを防ぎます。部屋全体の温度を均一にできて脱水症状を防げるでしょう。さらに、定期的な換気も大切です。職場の窓を開けられるのであれば、空気の入れ替えを行い、温度が上がり過ぎないようにしましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
脱水症状を引き起こして、さまざまな症状が表れるのは夏の暑い時期だけではありません。エアコンなどで温まりすぎても暖房病として発症する可能性があります。軽度であれば乾燥を感じるなどで済みますが、重度の脱水症状となると頭痛や吐き気などを感じるケースもあります。冬は脱水症状をめったに起こさないだろうと思い込まず、こまめな水分補給を行いましょう。
また、少しでも体調に違和感を覚えた場合には、早期の専門の医療機関への受診も大切です。気づかないうちに脱水症状が進行すれば、さらに体調を悪化させる可能性があります。思わぬトラブルを引き起こさないためにも、乾燥を防ぎ温まりすぎないように、できる範囲での対策を行いましょう。
編集部まとめ
暖房病は、乾燥から脱水症状を引き起こし、さまざまな体調の悪化を招く可能性があります。
脱水症状は夏に起きるものと思われる方も多いですが、エアコンなどの効きすぎによって冬でも起こるのです。
少しでも頭痛や上半身だけ温まり過ぎているといった違和感を覚えた場合には、部屋の加湿や空気の入れ替えにより対処しましょう。
また、同時に専門の医療機関への受診も大切です。早期発見と早期治療が、症状悪化の防止につながります。
参考文献
冬でも注意「冬の脱水症状」(千葉市医師会)
脱水症(健康長寿ネット)