円錐角膜に対するコンタクトの処方を眼科医が解説 視力矯正はソフト・ハードコンタクトどっちを選ぶ?

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円錐角膜は角膜に起きる進行性の疾患。角膜の形が変化するため、コンタクトレンズを選ぶ際には注意が必要です。では、一体どのようなコンタクトレンズが適しているのでしょうか? 道玄坂糸井眼科医院の糸井先生にMedical DOC編集部が話を聞きました。

円錐角膜とは目のどんな病気?見え方・視力の症状や治療法について知りたい

編集部

円錐角膜とはなんですか?

糸井先生

円錐角膜とは、黒目の中央部よりやや下方が薄くなり、少しずつ円錐状に角膜が突出してくる病気のことです。両目に現れることが多いのですが、片目だけということもあります。

編集部

どんな人によく起きるのですか?

糸井先生

一般に、10~30代で発症するといわれていますが、40代以降で発症することもあります。男女比では、男性が多く発症するといわれていて、報告にもよりますが、男性200~500人にひとり、女性2000~3000人にひとりくらいと考えられています。

編集部

円錐角膜になると、見え方や視力に影響があるのですか?

糸井先生

初期の頃は、「ものが二重に見える」などの症状が見られ、進行して角膜がますます突出すると、見え方にゆがみを生じたり、視力が低下したりします。しかし、角膜の突出する部位によっては初期に自覚症状がないこともあるので注意が必要です。

編集部

円錐角膜は治療できるのでしょうか?

糸井先生

視力を矯正し、症状の進行を遅らせるという意味も含め、ハードコンタクトレンズで矯正するのが一般的です。ただし、年齢が若い男性で、アトピー性皮膚炎のある人は進行が早いことがあります。決して数多くではありませんが、症例によっては角膜移植を必要とするケースもあります。

円錐角膜の人のコンタクトはハード・ソフトどっち?円錐角膜用レンズとは?

編集部

円錐角膜の人が視力を矯正するには、どんなコンタクトレンズを選べば良いのでしょうか?

糸井先生

一般的に市販されているコンタクトレンズはソフトとハードですが、円錐角膜の人は原則としてハードコンタクトレンズが適応になります。なぜなら、ソフトコンタクトレンズの場合、角膜形状異常に伴う視力低下を矯正することができないからです。また、場合によっては角膜突出を進行させることもあります。円錐角膜が軽度の場合でも、原則としてハードコンタクトレンズで視力を矯正します。ソフトコンタクトレンズを使うのであれば、ごく初期に限定し、使い捨てタイプのシリコーンハイドロゲルレンズに代表される酸素透過性の高い素材に限定するべきです。

編集部

ハードコンタクトレンズを使うと、視力が矯正できるのですか?

糸井先生

視力を矯正するだけでなく、角膜突出の進行を遅らせる効果も期待できます。

編集部

ハードコンタクトレンズだとどうしても異物感が気になり、痛いのですが。

糸井先生

ハードコンタクトレンズの異物感が気になってつけられないと訴える人のレンズのフィッティングを見ると、ハードコンタクトレンズが角膜の形状にフィットしていないケースが非常に多いです。円錐角膜の方にハードコンタクトレンズを処方するには、一般の目と違って非常に高いフィッティング技術が求められます。信頼できる専門医に処方してもらい、目の形にフィットしたハードコンタクトレンズを使用すれば、ほとんどの方が違和感なく装着できるのではないかと思います。

編集部

円錐角膜用レンズがあると聞いたことがあります。

糸井先生

円錐角膜が初期~中期では、通常のハードコンタクトレンズで視力を矯正することができます。しかし症状が進んでくると、コンタクトレンズのカーブが角膜に合わなくなり、異物感が出たり、レンズがはずれやすくなったりしてしまうことがあります。そこで開発されたのが、円錐角膜用多段カーブハードコンタクトレンズです。

編集部

円錐角膜用多段カーブハードコンタクトレンズとは、どのようなものですか?

糸井先生

円錐角膜になると、円錐の突出と周辺の形状の差が大きくなります。その違いをコンタクトレンズに反映させたのが、円錐角膜用多段カーブハードコンタクトレンズです。通常のハードコンタクトレンズと違って、コンタクトレンズの後面が複数のカーブになっており、円錐角膜の角膜形状にもフィットしやすくなります。

編集部

そのほか、円錐角膜の人が視力を矯正する手段はありますか?

糸井先生

円錐角膜用多段カーブハードコンタクトレンズでも異物感が強い場合には、酸素透過性の高い使い捨てソフトコンタクトレンズの上にハードコンタクトレンズを処方するというテクニックもあります。これは、度が入っていないソフトコンタクトレンズの上に、ハードコンタクトレンズをつけることで装着感をよくする方法です。良好な装着感、視力矯正、円錐角膜の進行抑制の3つを実現できます。当院では、10%以上の円錐角膜の患者さんがこの治療法を採用しています。

円錐角膜の人が眼科でコンタクトレンズを処方してもらうには 保険適用の有無、費用も教えて

編集部

円錐角膜の人が、眼科でコンタクトレンズを処方してもらうにはどうしたら良いのでしょうか?

糸井先生

まずは患者さんの目の状態や角膜形状を入念に検査し、それから角膜の形状に合ったトライアルレンズをつけていただき、レンズフィッティング状態を確認します。フィッティング状態がよければ視力を測定し、オーダーするレンズ度数を決定します。

編集部

そのあとはどうなりますか?

糸井先生

注文したコンタクトレンズが届いたら、実際に装用して再び検査します。場合によってはレンズを削って、レンズデザインを修正したり、レンズ度数の微調整を行ったりすることもあります。その後も定期的に検診を受けていただき、角膜の形状とコンタクトレンズが合っているかを確認します。

編集部

費用は大体いくらくらいですか? 保険は適用になるのですか?

糸井先生

一般の方がコンタクトレンズを作られる場合と同じように、コンタクトレンズは実費をご負担いただきますが、検査や診察には保険が適用されます。レンズはメーカーにもよりますが、片目1.5~3万円程度ではないでしょうか。なお、ソフトコンタクトレンズとハードコンタクトレンズを両方装着する場合は、ソフトコンタクトレンズ代がプラスになります。

編集部

最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあれば。

糸井先生

円錐角膜の場合、ハードコンタクトレンズを処方して視力を出すのが一般的で、レンズフィッティングを工夫すれば、ほとんどの患者さんが違和感なく、ハードコンタクトレンズを装着できます。しかし、フィッティングには高度な技術が求められるので、レンズの装用感が悪いと訴える円錐角膜の患者さんの多くがフィットしていないハードコンタクトレンズを装着しているのが現状です。そのためレンズフィッティングが悪く、違和感が強いために、角膜移植を検討する方も少なくありません。しかし、適切に処方すれば、ハードコンタクトレンズで視力の矯正と進行の抑制を実現することは可能です。もし、今使用しているコンタクトレンズが目に合わないと感じるなら、ぜひ、専門医にご相談ください。個人的には、ハードコンタクトレンズの処方成功率は99%だと感じています。

編集部まとめ

「円錐角膜で視力が矯正できない」「角膜移植しか手段がない」とあきらめている人もいるかもしれませんが、適切にコンタクトレンズを処方すれば視力を矯正することができます。そのためには、専門医の診察を受けることが大切。もし現在、治療効果が得られていない場合はかかりつけ医に紹介状を書いてもらうなど、セカンドオピニオンを検討してみると良いのではないでしょうか。

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