「皮膚がん」を疑う症状・原因はご存知ですか?医師が監修!
皮膚がんの患者数が年々増えていることをご存知でしょうか。高齢化に伴い10年前の2倍以上に増え、年間3万人罹患しています。
軟膏を塗ってもしばらく治らなかったりシミがどんどん大きくなってきたり、その原因は加齢のせいではないかもしれません。
「肌が白いとなりやすい」や「ほくろを取るとがんになる」など様々な仮説についての検証と早期発見のためのポイントまで解説します。
皮膚がんの特徴
皮膚がんとはどんな病気ですか?
皮膚がんには種類があり、顔面・手足・背中などの皮膚表面に色素・できもの・湿疹・水虫に似た症状として現れることが多い病気です。皮膚は表皮・真皮・皮下組織・皮膚付属器に分けられ、これらの細胞から生まれるがんを全て皮膚がんといいます。発生初期は痛みやかゆみなどの症状はありません。
皮膚がんはなぜ発症しますか?
皮膚がんの原因の一つに紫外線があります。紫外線が細胞の遺伝子に傷を付けてしまい発がんします。白人では紫外線がよく当たる部位には基底細胞がん・有棘細胞がん・悪性黒色腫の3大皮膚がんができやすいといわれています。肌の色が黒い人より白い人の方がメラニン色素が少ないため紫外線のダメージを受けやすいことが理由で、黄色人種はその中間になりますが日本人でも肌の色が白い人は紫外線に注意すべきです。
他にも高齢化・子宮頸がんの原因のヒトパピローマウイルスにより発症することや、昔の火傷や傷跡・放射線治療を受けた部位に発症することもあります。
皮膚がんの疑いがあるのはどんな状態ですか?
初めは小さかった色素やできものが段々大きくなってくる・軟膏治療が効かない・爪に黒い線が増える・外陰部・脇の下・肛門の周囲に赤褐色の色素や湿疹ができるなど見た目に現れることが多いため、気付いたら放置しないことが大切です。皮膚がんには種類があると聞きました。
代表的な皮膚がんは以下の4種類です。基底細胞がん
有棘細胞がん
乳房外パジェット病
悪性黒色腫(メラノーマ)
他にも日光角化症・ボーエン病・皮膚血管肉腫・皮膚付属器がん(汗腺がんや脂腺がん)・メルケル細胞がん・隆起性皮膚繊維肉腫などがあります。
皮膚がんができる場所と見た目の特徴を教えてください。
基底細胞がんは皮膚がんの中で最も高頻度にみられるがんで、顔面に黒色の色素が現れほくろと見分けがつきにくいです。有棘細胞がんは紫外線があたる部位にできやすく皮膚表面がカサカサしているのが特徴で、表面が腐って陥没したりグジュグジュし臭いを発したりすることもよくあります。乳房外パジェット病は赤い斑点や皮膚の色が白く抜けたような初期症状がみられ境界が不明瞭な淡紅色斑が特徴で、外陰部周辺や脇の下など乳房以外のアポクリン腺が多く存在する部位に発生し、無症状ですがかゆみを伴うこともあります。
悪性黒色腫は黒色で出来始めはほくろと似ており日本人では足底に多くみられ形が乱れており境界が不明瞭、直径が6ミリ以上などが特徴です。
皮膚がんの診断と治療方法
皮膚がんを疑うポイントはどんなところですか?
最近急にほくろが大きくなった・盛り上がってきた・出血した
かたく触れるできものがある
急にシミが6ミリ以上の大きさになってきた
鼻や目の周りにできものがある
左右非対称でギザギザのほくろができた
爪に黒や茶色い線が入った
頭や顔に紫色の大きくなった湿疹がある
顔・手・お尻などにできた湿疹がステロイドを使用しても2週間以上治らない
昔の火傷やケガをした部位に湿疹のようなものができて治らない
陰部や肛門周辺などに赤い斑点や白斑のような湿疹ができた
頭をぶつけたところのあざが治らない
一見、皮膚表面は普通だがつまむとしこりがある
顔にカサつくピンクのできものがある
検査の方法について教えてください。
ダーモスコピーという真皮上層の10~30倍拡大できるルーペで皮膚を切らずに良性・悪性の検査ができ、皮膚深部の検査にはMRI・CT・エコーなど画像検査でがんの性質を判定しがんの疑いがあれば腫瘍の一部を採取し病理検査を行います。手術前に触診や画像診断などでリンパ節転移が確認されない患者さんが対象となるセンチネルリンパ節生で最初にがんが転移するリンパ節を調べることもあります。
治療には手術を行いますか?
がんの種類により手術方法も異なり、基本は外科手術で腫瘍部位の切除をし進行すると転移を起こす可能性のあるものは化学療法・放射線治療を行います。センチネルリンパ節を取り除く手術の後はその通り道を考えた再建法が必要です。もし診断を受けたらなるべく2週間以内に手術を行うことが必要です。イボ様のものにはレーザーや液体窒素で治療が可能なものもあります。
どんな薬を使いますか?
治療薬は皮膚がんの種類と進行度によって異なります。悪性黒色腫は進行期には分子標的薬で治療を行い免疫チェックポイント阻害薬を術後補助療法として行うことが一般的です。患者さんの状態によって治療法を使い分けています。外用薬・内服薬で治療できるものもありますので高齢者でも治療がしやすいでしょう。
皮膚がんに対処する時のポイント
皮膚がん発症を予防するポイントを教えてください。
皮膚がんのリスクを減らすためにSPF15以上の日焼け止めを使用した紫外線対策が有効で、帽子・日傘・長袖・サングラス・UVカット効果のあるコンタクトレンズもお勧めです。細胞に傷が付くことが原因で刺激がリスクになっているため、ほくろをいじったり取ろうと傷付けたりしないようにしましょう。ビタミンエースと呼ばれるビタミンA・C・Eを摂ることもおすすめです。
ビタミンAは粘膜・細胞の成長と免疫機能の改善に働きかけ皮膚免疫に役立ちますし、ビタミンCとEは抗酸化作用があり紫外線で細胞が錆びないように守ってくれます。
命に関わる病気ですか?
他のがんと比較すると死亡率は低いのが現状です。血管やリンパ管を通してがん細胞が散らばり脳や肺など臓器へ転移すると命に関わりますが、早期発見ができれば治療部位も小さく済むため、進行しないうちに対処できれば危険度も下がります。皮膚に違和感を感じたらまずは病院へ行きましょう。家族ができるフォローは何かありますか?
客観的に見て肌状態が前と違うなど気付いたら教えてあげることが発見に繋がります。既にがんと診断された場合ご家族の方も辛い気持ちになると思いますが、患者さんのためにも暗い表情で接することはせずにリラックスできる環境をつくりましょう。好きなことや趣味など楽しいと感じる時間は脳に良い作用があり免疫力が上がることが分かっています。長期に渡る治療だと患者さんもご家族も疲れがでてきますので、時には治療を一時休憩して気晴らしすることも必要です。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
年々、検査や治療法が向上しており新薬も出てきていますのでなるべくお体に負担をかけない方法でがん治療ができるようになってきています。ただ手遅れにならないことが前提です。皮膚がんは初期段階では自覚症状がないことがほとんどで見た目に現れやすいことが特徴ですので、上記の「皮膚がんを疑うポイント」を参考にしていただき、思い当たる時は相談に行きましょう。
編集部まとめ
メラノーマという言葉は耳にしていましたが、それ以外にも皮膚がんにはいくつもの種類があることが分かりました。まずは気付くことが大事です。
普段から、自分の体を見ていないと病変に気付くことができないので顔・手足・足の裏など特に皮膚がんに罹患しやすい部位は観察しておきましょう。
皮膚がんに限らずですが、免疫力がないとがんに負けてしまうので日頃からビタミンを摂り、適度な紫外線対策をしてよく笑うなど細胞を活性化していくと良いですね。
参考文献
悪性黒色腫(メラノーマ)(日本形成外科学会)
海外の情報(厚生労働省)
メラノーマ(ほくろのがん)(日本皮膚科学会)