【漫画付き】意外と多い「動悸・息切れ」、その原因は?

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心臓や肺の調子が普段とは違う「動悸(どうき)」や「息切れ」。重要な臓器の症状であるにも関わらず、言葉があいまいで、その正体もつかみにくい。そもそも「動悸」や「息切れ」とは何か。その原因はどこにあるのか。虎溪医院の虎溪先生に解説を願った。

監修医師:
虎溪 則孝(虎溪医院 院長)

獨協医科大学医学部卒業。獨協医科大学越谷病院にて循環器内科助教や循環器内科講師を努める。2014年、埼玉県草加市に「医療法人虎溪医院」設立、院長に就任。医学博士、獨協医科大学越谷病院循環器内科非常勤講師、日本内科学会認定内科医、日本循環器学会認定循環器専門医、日本不整脈心電学会認定不整脈専門医、日本医師会認定産業医、身体障害者福祉法指定医師(心臓機能障害)。日本心電学会、日本心臓病学会所属。

心臓や肺の主な疾患を知る

編集部

まずは「動悸」「息切れ」の定義と原因を教えていただけますでしょうか?

虎溪先生

一般に「動悸」は心臓がドキドキすること「息切れ」は息が切れる(苦しくなる)ことでいいと思います。ただ「動悸」は広義には胸の不快な症状全般を言う場合もあります。人によっては胸が痛いことを「動悸」と言いますし、要するに患者さんが「動悸」と言えば、それは「動悸」です。大きく分けて心臓や肺そのものが悪い場合と、それ以外に何か原因があって心臓や肺がたくさん働かされている場合があります。

編集部

では、疾患が関係しているケースに絞りましょう。

虎溪先生

わかりました。心臓が原因の動悸で最も多いのは不整脈です。心臓自身が暴走することによってドキドキした症状を起こします。心臓以外に原因がある疾患としては甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気(甲状腺機能亢進症:バセドウ病)が有名です。さらに貧血低血糖など、体を動かすのに必要な酸素や血糖が不足すると、心臓がドキドキと早く動かされます。その他では更年期障害パニック障害も動悸の原因となり得る疾患です。

編集部

息切れについてもお願いします。

虎溪先生

肺の病気のほとんどで病状が進行すれば息切れを生じます。具体的には慢性閉塞性肺疾患(COPD)間質性肺炎肺炎肺がん気管支炎などです。また、心臓が原因で息切れ症状をきたしている状態を心不全と言います。心不全の原因としてあげられる心疾患としては心筋梗塞、弁膜症、不整脈、心筋症などです。心臓、肺以外では上記の動悸で挙げた疾患(貧血、甲状腺の異常、パニック障害など)と同様です。

「症状への不安が症状を呼ぶ」心因的なケースも

編集部

自分で原因を特定することはできますか?

虎溪先生

「原因の特定」までは難しいかもしれません。ただし明らかにストレスのかかる出来事があればそれが原因のことが多いと思います。あと同じ動悸でも「一瞬ドキッとする」だけであれば放置しても良いものがほとんどです。気になるようでしたら医療機関を受診された方がよいと思われます。加えて、「もしかしたら、大きな病気を抱えているのではないか」という不安が、より症状を悪化させているケースもあります。

編集部

受診をすれば、原因が特定できるのでしょうか?

虎溪先生

貧血や低血糖、甲状腺の病気については採血ですぐにわかりますが、不整脈の場合は症状が起きているときの心電図が必要です。たまにしか症状が出ない人では診断に難渋する場合もあります。各検査で異常がなく、不安要素が高い場合には心因性を疑います。

編集部

動悸や息切れは、何科にかかったらよいのでしょうか?

虎溪先生

まずは、身近なクリニックを受診してください。甲状腺異常なら内分泌内科ですし、貧血なら血液内科、心臓の病気なら循環器内科など、必要に応じて専門医をご紹介してもらえると思います。

拍動のリズムが数分間以上乱れたら「不整脈」かもしれない

編集部

器質的な原因で、検査が難しい疾患はありますか?

虎溪先生

たまにしかおきない不整脈はしばしば診断に苦労します。診察時に拍動の異常が起きていれば調べられますが、平常なときに受診されてもわかりません。このような場合は、持ち運びできる心電図を貸し出し、不整脈の出るまで記録していただくこともあります。

編集部

リズムの乱れがどれくらい続いていたら、不整脈を疑ったほうがいいでしょう?

虎溪先生

リズムの乱れ(脈と脈の間隔がバラバラの状態)があれば、短時間でも、おそらくそれは不整脈です。

編集部

受診の必要がないケースは?

虎溪先生

これまでと違うような感じがあれば、どのような場合でも一度は受診をお勧めします。ストレスや不安を感じやすい人であれば、それが原因かもしれませんが、同じ動悸でも一瞬だけ「ドキっ」とする症状の場合は、不整脈であってもそれほど重要な疾患でないことがほとんどです。以後、落ち着いているようなら、経過観察することが多いです。もちろん、どうしても不安なら、ご相談ください。

編集部

最後に、日ごろの生活で気をつけたいポイントは?

虎溪先生

動悸息切れの原因は多種多様で、万能薬はありません。原因をしっかり調べてそれにあった治療をする上でも、まずは診断することが大事です。気になるような症状があれば、お近くの医療機関を一度受診してみてください。

編集部まとめ

動悸や息切れの原因は、「何か疾患を患っている場合」と「大きな病気への不安を感じている場合」に大別できそうです。そしてその治療も「症状を取り除く方向」と「不安を取り除く方向」に分けられるとのこと。もちろん、これらが組み合わさっていることもあるでしょう。自分が何を望んでいるのか整理して、速やかな治療へ結び付けましょう。

低血糖、動悸に関する症状についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照してください。

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