信号待ちで停止線を越えたらバックで線まで戻るべき? バイクの先頭待機は違反になる?
停止線オーバーは厳密には違反
渋滞した道路を走行中、混雑した交差点を渡り切る前に赤信号になってしまい、停止線からはみ出た状態で信号待ちになってしまうことがあります。
また、渋滞中でなくても、信号待ちの停車で停止線をほんのわずかに越えてしまうこともありますが、そんなとき、後続車がいなかったらバックすべきなのか悩ましいところです。
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停止線からはみ出したらバックしても良いものか、それともはみ出たまま停車すべきか、どちらが正しいのでしょうか。
まずは、停止線を越えると法律的にどうなのかを調べてみました。
道路交通法施行令第2条「信号の意味等」内には「赤色の灯火」(赤信号)の項目があり、「車両等は、停止位置を越えて進行してはならないこと。」と明記されています。
やはり停止線(停止位置)を越えての一時停車は違反となり、この場合、「信号無視」扱いだと違反点数が2点、反則金7000円から9000円(普通車)が科される可能性があります。
また交差点内の場合、道路交通法第50条「交差点等への進入禁止」には「前方の状況で交差点内に停止して通行の妨害になる場合は進入してはいけない」「同じく横断歩道や自転車横断帯、踏切なども途中で止まりそうな場合は進入してはいけない」といった内容が明記されています。
これは「交差点等進入禁止違反」に該当し、違反点数1点と反則金6000円(普通車)が科される可能性も。
しかし実際は、夕方のラッシュ時などでは横断歩道にまではみ出した状態で信号待ちしているクルマも多いですし、警察官が通りかかってもすぐに違反切符を切られているケースばかりではないようですが、その一方で、わずかにはみ出ただけで取り締まられたケースもあるといいます。
都内の教習所で教官としての勤務経験を持つI氏に話を聞いてみました。
「停止線をオーバーしての停車は厳密にいえば違反に該当します。しかも法規定では、フロントタイヤではなくフロントバンパーでも停止線より手前が原則。ただし交通状況は刻一刻と変化しており、停止線のはみ出しに関しての取り締まりは、その場に居合わせた警察官の裁量による部分が大きいでしょう。
横断歩道まではみ出るような明らかなオーバーは違反となりますが、停止線を多少越えたレベルでは、交通の妨げにならない限りは違反切符を切られることはあまりないと思います」
そんな「停止線のはみ出し」よりも、取り締まりが厳しいのは「一時停止」なのだとか。
「停止線は極端なはみ出しでなければお咎めはあまりない印象ですが、事故に直結する一時不停止は厳しく取り締まりの対象になっています。
とくに信号のない交差点などで歩行者が歩いている場合は、必ず一時停止と最徐行する必要があります」(元教習所教官 I氏)
それでは、停止線からはみ出して停車してしまった場合、停止線までバックで戻るほうが良いのでしょうか。一見マナーが良さそうに感じる行為ですが、I氏は公道でのバックはおすすめできないのだそうです。
「一見すると停止線を守る優良ドライバーな行為に感じますが、バック走行は死角も多くどんな状況なのかを把握しにくいのでおすすめできません。
たとえばバックミラーで後続車がいないことを確認しても、目を離した隙に歩行者や自転車が車両後方を通過するかもしれません。
車体前方が停止線を越えてさらに横断歩道までかかり歩行者の通行の妨げになる場合は、安全を十分に確認してからの多少のバックもアリかもしれませんが、それ以外は逆にその場で停止しているほうが安全です」(元教習所教官 I氏)
スピード違反などと違い、日常的に取り締まりの対象になりやすい一時停止違反はしっかりと止まる必要があります。
ブレーキの踏みが甘くてクリープ現象などでユルユルと前に出る、または歩行者がいるのに先行してしまうと違反となり、違反点数2点と反則金7000円(普通車)の違反切符を切られることがあります。
バイクが停止線より前で信号待ちするのはOK?
停止線に関連して気になるのが、クルマの間をすり抜けてきたバイクが停止線を越えて信号待ちしているシーン。なかには車体全部が完全に停止線を越えた状態のバイクも多く見かけます。
「法律的には、バイクでもクルマでも停止線のルールは変わらないで、本来は停止線より手前で停まるのが正解です。
ただし、よほど交通の妨げになるような場合を除き、取り締まられないケースも多いようです。
これは後方から脇を通って前に出る『すり抜け』は違法ではないということと、バイクなりに交通の妨げにならないような配慮ある行動なのかが大きく影響しています」(元教習所教官 I氏)
先述した道路交通法では道路を運行する車両に関してはすべてに適応されるため、本来であればバイクも停止線手前で止まらなければなりませんが、しかし、すり抜けで前に出るのは違法ではないというのは、どういうことなのでしょうか。
「渋滞などで発生した車列の脇をバイクがすり抜けていくのは、クルマが停車している場合や悪質・危険な走行でない限り、またセンターラインなどを越えなければ違反ではありません」(元教習所教官 I氏)
道路に描かれた「センターライン」は、原則として「白の破線」「白の実線」「黄色の実線」があります。
白の破線は「はみ出しも追い越しも可能」、白の実線は「はみ出し禁止」、黄色の破線は「追い越しのためのはみ出し禁止」。つまり、このラインさえ越えなければ、追い越しは違法ではないということになります。
「ここで難しいのが、道路交通法30条『追い越しを禁止する場所』です。道路の曲がり角や上り坂の頂上付近や急な下り坂、トンネル、交差点や踏切、横断歩道や自転車横断帯の手前から30m以内といった場所は本来であれば追い越し禁止です。
なので、白バイやパトカーなど現場に居合わせた場合は、違反切符を切られる可能性が高いといえます」(元教習所教官 I氏)
ただ、バイクがすり抜けをするのは、単純に急いでいる場合だけでなく、詰まった交通状況でクルマとバイクが混在することで生じる余計なトラブルを回避するためにしているライダーが多いことも取り締まりに関係してくるといいます。
「人間の心理的なもので、クルマの運転手は周囲にバイクが並んでいると、接触などで加害者になるのを避ける心理が働くそうです。
そして現在バイクに乗る人の多くはクルマの運転免許も取得しており、そういった心理が分かるからこそ、渋滞内で前後のクルマの間からバイクをできるだけ遠ざけようと考えます。
また、すり抜けが違法でないことや、軽量なバイクのほうが加速も良いことなどを加味して、瞬時に判断して前に出ているのでしょう。
停止線で停まっているクルマよりも前に出たほうが安全なので、停止線を越えてしまうというわけです」(元教習所教官 I氏)
ただし、これもあくまで道路状況に応じた対応の範囲内でのこと。あからさまにすり抜けを繰り返すだけでなく、車線変更までして前に出ていくバイクは完全な違法として取り締まられるだろうとI氏はいいます。
つまり、スムーズな交通のためのすり抜けは、容認されている部分もあるというのが正解のようです。
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停止線をはみ出してしまうと違反になる可能性は否定できないものの、あくまで常識の範囲内のレベルであれば黙認されることが多そうですが、むしろ停止線のはみ出しを気にするあまり、バックで下がるほうが危険であることから控えたほうが良いということです。
もちろん停止線の手前で止まることが大前提ですが、歩行者の通行の妨げにならない程度であれば、むしろ動かないで信号が変わるなり歩行者が渡り切るまで待つというのが良さそうです。