「クルーゾン病 」を発症すると現れる症状はご存知ですか?医師が監修!
クルーゾン病は赤ちゃんの頭蓋骨の成長に異常が生じる「頭蓋縫合早期癒合症」の代表的な病気の1つです。頭部・顔面の形や大きさに問題が生じやすいほか、頭蓋骨の脳への圧迫により頭痛や吐き気などの症状を伴うことがあります。
今回はクルーゾン病とはどのような病気か、症状や原因、治療法などを解説していきます。
クルーゾン病とは
クルーゾン病は、どのような病気ですか?
クルーゾン病は「頭蓋縫合早期癒合症(とうがいほうごうそうきゆごうしょう)」の1つで、国の指定難病に規定されています(指定難病181)。同様の病気に、アペール症候群、ファイファー症候群があります。頭蓋縫合早期癒合症
頭蓋縫合早期癒合症とは、どのような病気ですか?
頭蓋縫合早期癒合症は、赤ちゃんの頭蓋骨にある「縫合線」が生後まもない時期に癒合する(閉じてしまう)病気です。生まれたての赤ちゃんの頭蓋骨は7つの骨に分かれており、それぞれが「縫合線」というつなぎ目によってつながれています。これは赤ちゃんの急激な脳の成長にあわせて、頭蓋骨を広げて容積を大きくするためです。この縫合線は脳の成長が終わるとともに自然に閉じますが、頭蓋縫合早期癒合症では脳の成長途中で縫合線が閉じてしまいます。そのため、頭や顔面の形態に異常をきたしやすいほか、精神の発達にも影響を及ぼしてしまうことがあります。
クルーゾン病は指定難病
クルーゾン病も含まれている「指定難病」とは何でしょうか?
指定難病は難病法に定義される難病のうち、国から医療費の助成が受けられるものをいいます。「患者数が国内で一定数に満たないこと」「客観的な診断基準が確立されていること」がその要件となっています。クルーゾン病の症状
クルーゾン病の症状には、どのようなものがありますか?
縫合線が早期に癒合すると、その部位の頭蓋骨はそれ以上大きくなることはありません。そのため、閉鎖した縫合線の周囲では頭や顔面の形態に異常をきたしてしまいます。さらに、頭蓋骨の大きさが脳より小さい場合、精神の発達にも影響を及ぼすことがあります。頭や顔面の形態異常
クルーゾン病になると、頭や顔面の形にどのような異常がみられますか?
どの部位の縫合線(骨のつなぎ目)が癒合したかで、頭や顔面の変形のしかたが異なります。クルーゾン病における頭部の変形では「短頭(頭が縦に短い)」「尖状頭(頭の上が尖っている)」「舟状頭(後頭部が横長)」「三角頭」などが代表的です。
また早期の癒合により顔面の骨が小さい場合、「相対的に眼球が大きく見える」「呼吸がしづらい」などの症状を伴うことがあります。ただし、クルーゾン病は骨のみに問題が生じる病気であるため、筋肉や眼球はほぼ正常に成長します。
精神発達への影響
クルーゾン病は精神の発達にも影響がでてしまうのでしょうか?
頭蓋縫合早期癒合症では、頭蓋骨が脳の大きさに適したサイズに成長できないことで、脳の正常な発達にも影響を及ぼすことがあります。クルーゾン病でもまれに精神発達の遅れを伴うことがありますが、すべてのケースでみられるわけでなく、その詳細はいまだ明らかになっていません。
クルーゾン病のそのほかの症状
クルーゾン病ではそのほかに、どのような症状がありますか?
頭蓋骨が小さいことで脳への圧力が大きくなると、頭痛や吐き気、嘔吐などの症状が生じやすくなります。ただ、これらの症状が生後まもなく生じるケースは少なく、多くは成長に伴ってあらわれるのが特徴です。さらに、クルーゾン病では脳から産出される髄液の出口が狭いことから、水頭症などを発症するケースもみられます。
クルーゾン病の原因
クルーゾン病の原因に、どのようなものが考えられますか?
クルーゾン病はある種の遺伝子の異常によって発症することがわかっています。その具体的なものに「FGFR2遺伝子」の異常があり、また一部では「FGFR3遺伝子」の異常により発症することもあります。親から子への遺伝
クルーゾン病は親から子へ遺伝するものなのでしょうか?
クルーゾン病は、両親から受け継いだ遺伝子のいずれかに異常が生じたことで起こる「常染色体優性遺伝疾患」に分類されています。したがって、両親のいずれかに原因となる遺伝子の変異がある場合、50%の確率で発症するといわれています。
クルーゾン病の受診科目
クルーゾン病の疑いがある場合、どの診療科を受診したらよいでしょうか?
指定難病のクルーゾン病は、難病診療連携拠点病院ならびに難病医療協力病院にて診査・治療を行います。そのため、クルーゾン病が疑われる場合は一般病院や診療所をまずは受診し、拠点病院や協力病院を紹介してもらうことが必要です。なお、各都道府県の難病医療提供体制は厚生労働省が運営する「難病情報センターホームページ」にて掲載されていますので、そちらも参考にしてください。
クルーゾン病の検査
クルーゾン病ではどのような検査を行いますか?
クルーゾン病では以下の画像検査を実施し、病気の確定診断を行います。単純頭部レントゲン検査
CT検査
MRI検査
脳血流シンチグラフィー
頭部X 線規格写真
オルソパントモ写真
クルーゾン病の診断ではそのほかに、視力や眼底検査、眼球突出度、聴力検査なども行います。なお、遺伝子検査を受ける場合は医療機関の受診と遺伝カウンセリングが必要です。クルーゾン病の治療
クルーゾン病ではどのような治療が行なわれますか?
頭蓋骨や顔面の骨を広げる手術を行います。1歳以下の場合は「頭蓋骨形成術」、2歳を超えた場合や頭蓋骨の容積が脳よりも極端に狭い場合は「骨延長術」を行うのが一般的です。クルーゾン病の治療は脳の発達障害や頭部・顔面部の変形を予防するために、1歳以下で行うのが望ましいといわれています。頭蓋骨形成術
頭蓋骨形成術とはどのような手術ですか?
頭蓋骨形成術は、変形した頭の形を修正して頭の容積を増やす手術です。頭蓋骨をいくつかのパーツに分け、正常に近い形に整えていきます。容積を大きくした分、手術直後は骨のない部分ができますが、1歳以下の場合はしばらくするとその部分に新しい骨を作ることができます。骨延長術
骨延長術とはどのような手術ですか?
骨延長術では頭蓋骨に切り込みをいれ、そのすき間を特殊な機器で少しずつ延ばしながら新しい骨を作っていきます。2歳を過ぎると新しい骨を作る力が弱くなるため、この骨延長術を行うのが一般的です。クルーゾン病の性差、年齢差など
クルーゾン病の発症に、性差や年齢差はありますか?
性差や年齢差は明らかになっていませんが、出生率は100万人の出生に対し5~16人程度と非常にまれな病気です。なお、クルーゾン病の患者数は、頭蓋縫合早期癒着症の全体のうち4.5%を占めています。編集部まとめ
クルーゾン病は「頭部縫合早期癒合症」の1つで、赤ちゃんの頭蓋骨の骨をつなぐ「縫合線」が生まれてまもなく癒合することにより発症します。正常な頭蓋骨の成長が妨げられることから頭や顔面の形態に異常をきたすほか、精神の発達に遅れが生じることもあります。
クルーゾン病は国の指定難病であるため、地域の難病診療連携拠点病院ならびに難病医療協力病院での治療が必要です。症状からクルーゾン病が疑われたらまずはかかりつけ医に相談し、今後の治療のアドバイスを受けましょう。
参考文献
頭蓋顎顔面外科学会【頭蓋骨縫合早期癒合症】
神奈川県立こども医療センター【クルーゾン症候群やアペール症候群など、症候群性頭蓋縫合早期癒合症の原因と症状】
KOMPAS【頭蓋縫合早期癒合症】
難病情報センター【クルーゾン症候群(厚生労働省作成)】
難病情報センター【クルーゾン症候群(一般利用者向け)】
難病情報センター【難病に関する問い合わせ窓口】
難病情報センター【難病情報センターご案内】
日本形成外科学会【頭蓋縫合早期癒合症】
東京医科歯科大学病院【稀少疾患先端医療センター】
東京福祉保健局【難病診療連携拠点病院及び難病医療協力病院から収集する情報について】
厚生労働省【臨床調査個人票(クルーゾン症候群)】
KOMPAS【頭蓋縫合早期癒合症の治療‐チーム医療の実践‐】