高齢化に伴い足腰が弱くなるなど身体的な衰えから車の運転ができなくなり店舗に出向いて買い物をするのが難しい人が増えています。

これは「買い物困難者」と呼ばれ社会問題になるなか遠くの店に行かなくても買い物ができる仕組みを作ろうと県内の企業や団体が様々な取り組みを進めています。

宇都宮市に本社を置くホームセンターのカンセキです。カンセキはこれまで会員限定で店舗の窓口でのみ受け付けていた宅配事業「スマイル便」を今年4月に拡大し、会員に限定せずカタログから選んだ商品を電話一本で宅配できる事業として新たにスタートさせました。

        

カンセキ 渡瀬力さん:「スマイル便は今までカンセキを利用していただきたお客様、高齢になって思うように買い物にいけないというお客様のためにカンセキの方からお宅に商品を届けようという思いから始まった取り組みです」

宅配といえばインターネットという世の中ですが、高齢者には苦手な人も多いことから電話での注文にしているといいます。この4月には専門のコールセンターを設置しました。

コールセンタースタッフ:「生の声が多い。お客様から注文以外にもお声をいただくことが多いのでお電話で対応させていただいているのはお客様のためにもなっている」

渡瀬さん:「スマイル便の一番大きな特徴はお客様に寄り添ったサービスです。今インターネット進んでますけれどスマイル便に関しましてはお電話でご注文になれます。電話に関しては専門のオペレーターが丁寧にご案内申し上げますがお客様をお待たせすることなく最新のITを使いながら裏でシステムを動かしております」

コールセンターで受け付けた注文はその場でパソコンに入力され、その情報を各店舗のタブレットで見られるようになります。

タブレットを見たスタッフは店舗の棚から対象の商品を取り出し車両に積み込んでいきます。

スマイル便の配送は外部の事業者ではなくカンセキのスタッフが行います。配達先で利用客から商品についての質問を受けた際に即座に答えられるようにするためです。

カンセキ駅東店の石崎光守さんはこれまで店舗のスタッフでしたが、配達先での丁寧な接客が評判となり今では指名が入るほどの人気の配達員となりました。

配達員 石崎さん:「できるだけ話をするようにして体調はどうですかとか聞いてます。結構やっぱり免許証返納されてるお客様も結構多いんで助かりますってお客様がね多いです」

石崎さんがこの日配達に訪れたのは一人暮らしの高齢者のお宅です。

普段からスマイル便を利用しているというこちらの女性は、75歳の時に自動車の免許を返納して以来買い物が難しくなったといいます。

注文した女性:「スマイル便楽しみにしてます。子どもにももう年なんだから車なんか危ないから返納しちゃいなって言われて返納したんです。こういう風に届けてくれたら年取ると助かりますよね。車運転できなくてもね」

石崎さん:「お客様あってのカンセキです。喜んでいただけて我々もやっぱり嬉しいですね。励みになります。車ね返納されるお客様結構多いですから結構行くたびにやっぱり喜んでくれるんで、こういったの励みになりますね。これからも頑張っていきたいと思います」

カンセキは買い物困難者は2030年に栃木県内およそ10万世帯に膨れ上がると予想しています。買い物困難者を救うスマイル便の取り組みは続きます。

一方こちらは、「JAなすの」が運営する金融サービスと日用品の販売を兼ねた移動金融購買店舗。その名も「なっちゃん号」です。

月曜から金曜まで5日間かけて「JAなすの」の支店がない地域を巡っていて、この日は那須塩原市の野菜の集荷場を訪れました。

入金や出金はもちろん、税金や公共料金の払い込み、食料品や生活必需品の簡単な買い物もできます。

なっちゃん号に乗っているのはドライバーの印南良一さんと在庫管理の篠崎剛さん、それに、窓口の江連紀子さんの3人です。

地域の人たちも週に一度のなっちゃん号を楽しみにしているようです。

利用者女性:「地元です。金融機関もやってないんですよ。だからここ利用して助かります」

利用者男性:「リウマチでちょっとひどいんです。もう手の方も足の方も言うこと聞かなくなっちゃって、なっちゃん号が来てくれたら嬉しいですよね」

利用者男性:「もう歳だから下まで下がったりできないから人と話するのもできないからみんなこうやってね良い人だからだからここにきて買い物しちゃう」

利用者女性;「おかず頼んだりお世話になってます。やっぱり来てもらえればすごく便利ですよ。買い物あまりあの自分で行けないからやっぱり来てもらえれば最高です。車運転できないからバスや歩かなきゃなんないから助かってます」

利用客に来てもらうのではなく買い物が困難なら店の方から利用客のいる場所へ出向いてしまおう。

企業や団体には今後、そんな発想の転換が求められていきそうです。