次世代を担う陸上自衛隊の新型ヘリコプターUH-2の教育訓練が始まります。それに先立ち行われた訓練開始式を取材してきました。

三重県明野にある陸上自衛隊航空科の総本山

 陸上自衛隊の次世代を担う新型ヘリコプター「UH-2」の訓練開始式が2022年7月13日(水)、三重県にある明野駐屯地で執り行われました。

 ここには陸上自衛隊における航空科職種の総本山といえる「陸上自衛隊航空学校」があり、パイロットや整備員を養成するだけでなく、装備する航空機の扱い方や新たな航空機の試験・研究などを行っています。

 そのため、UH-2の試作機(45151号機)についても先行して配備されており、このたび陸上自衛隊に引き渡されたUH-2量産初号機(45152号機)についても、明野駐屯地・航空学校が最初の配備先となった模様です。


三重県にある陸上自衛隊航空学校に配備されたUH-2の量産初号機(武若雅哉撮影)。

 機体は、すでに先月30日、栃木県宇都宮市にあるSUBARU航空宇宙カンパニー宇都宮製作所において同社から陸上自衛隊に対して引き渡しされており、7月6日に明野駐屯地へ到着しています。

 UH-2は一見すると、既存のUH-1J多用途ヘリコプターとよく似ていますが、エンジンがUH-1Jの1基から2基になったことで排気管が2本に増えているほか、機体上部のメインローター(回転翼)もUH-1Jでは2枚だったのが、4枚へと増加しているのが特徴です。

 また最も大きな変化は、一部の操縦が自動化された点にあります。

UH-2ならパイロットの負担も軽減

 たとえばUH-1Jの場合、離着陸や水平飛行、ホバリングまですべて手動によるアナログ操縦でした。すなわち、パイロットは自身が握る操縦桿とメインローターの出力を調整するコレクティブレバー、そしてテイルローターの出力を調整するラダーペダルを常に動かして繊細に機体をコントロールしていたのです。

 それに対し、UH-2はこれら基本的な操縦を、コンピューターに制御させるか否か、任意で選択することができます。


UH-2量産初号機の後ろ姿。ローターブレードの枚数やエンジン部部分が従来のUH-1シリーズと異なる識別点になっている(武若雅哉撮影)。

 このメリットは、長距離飛行時にパイロットの負担を軽減して、周囲の監視を強化できること。そして、災害救助時により安定したホバリングをすることができ、迅速な人命救助に貢献できるという点です。特に、精神的な負担を強いる災害現場では、ある程度の操縦が自動化されることで、パイロットの集中力をより高い状態で維持させることができるようになると推察されます。

 これに伴い、従来までアナログ計器が並んでいた操縦席周りも一新され、大型のデジタルモニターが並ぶ、いわゆるグラスコクピットへと進化しています。

 ただ今回、試作機(45151号機)と量産初号機(45152号機)を見比べてみたところ、前者では装備していた機首部分のレーザー警戒装置のようなものがなくなるなど細かい部分で差異も見てとれました。

 UH-2は2019年度予算で6機、2021年度予算で20機の計26機分の調達が決まっています。この数は2019年度末現在のUH-1J保有数の124機には程遠い数ですが、たとえば師団飛行隊には通常5機のUH-1Jが配備されているため、すでに5個飛行隊分のUH-2を調達することが決まっているといえ、最終的にはUH-1Jの総調達数130機を上回る150機の導入を陸上自衛隊では計画しています。

 説明によると、UH-2のコールサインは「ハヤブサ」になるそう。今後は全国の陸上自衛隊航空科部隊に配備される予定のため、導入が進めば現用のUH-1Jと同じように体験搭乗が可能になる日も、そう遠くはなさそうです。