災害対策基本法で変わった警戒レベル レベル4で求められる行動とは? - BLOGOS編集部
※この記事は2021年06月11日にBLOGOSで公開されたものです
災害から国民を守るための対策を定めた「災害対策基本法」が5月20日に改正されました。大きなポイントは、警戒レベル1~5のうち4に相当した「避難勧告」を廃止することで「避難指示」に一本化し、レベル4に達するまでに避難することが必要になった点です。
平年は6月7日ごろに梅雨入りを迎える関東甲信地方でも梅雨入りを迎えない一方で、10日には東京・練馬、八王子などで最高気温30度以上の真夏日となるなど、季節は確実に夏へと近づいています。
そんな夏に警戒したいのが、局地的で短期間の強い雨が降る集中豪雨です。あっというまに道路が冠水し、自宅も浸水する被害も想定されます。万が一の災害の際、自分や家族がどう避難するのかを想定しておくことは決して無駄ではないでしょう。
西日本豪雨をきっかけに導入された警戒レベル
台風や豪雨が発生した際、テレビをつけると避難指示が出された地域を表すテロップが表示されることがある。国や自治体が出すこうした避難情報は、国民が災害発生の危険度と取るべき避難行動を直感的に理解するための「警戒レベル」に基づいている。
警戒レベルは、2018年夏の西日本豪雨をきっかけに翌年から導入され、今回の災害対策基本法の改正まで次のように定められていた。
5=災害発生情報(発生を確認した時に発令) 4=避難指示(緊急)・避難勧告 3=避難準備・高齢者等避難開始 2=大雨・洪水・高潮注意報(気象庁) 1=早期注意情報(気象庁)
「避難勧告」を廃止して「避難指示」に一本化
今回の災害対策基本法改正を受け、警戒レベルも変更された。
これまでは、レベル4に「避難指示(緊急)」と「避難勧告」が盛り込まれていたため、住民が判断に悩むことが懸念されていた。これまでの「避難勧告」を廃止して「避難指示」に一本化。このレベルまでに安全な場所への避難が必要だと明確化された。
レベル5も「災害発生」から直ちに安全確保が求められる「緊急安全確保」に変更されたほか、レベル3も「高齢者等避難」として高齢者や身体の不自由な人の避難を促すようにしている。
新たな警戒レベルについて1~5のそれぞれを詳細に見ていく。
レベル1=状況は「今後気象状況悪化のおそれ」
具体的な状況は、「大雨の数日~約1日前」を想定し、住民は災害が発生する可能性があることを念頭に入れることが求められる。市町村も同様に、職員の連絡体制を確認するなど、“災害への心構えを高める”段階だ。
レベル2=状況は「気象状況悪化」
この段階では、住民はハザードマップなどを利用して自宅の災害リスクや、避難情報を入手する方法を確かめる行動が求められる。気象庁は、大雨・洪水・高潮注意報や、警報に切り替わる可能性がある注意報を出すことも想定される。
レベル3=状況は「災害のおそれあり」
お年寄りや身体の不自由な人は危険な場所からの避難が必要となる。そうした人以外も、普段の行動を見合わせたり自主的に避難したりするなど十分な注意が求められる。
大雨の数時間~2時間ほどまでの状況で、気象庁の情報は大雨・洪水警報や、氾濫警戒情報が想定される。
レベル4は避難が完了している段階
レベル4=状況は「災害のおそれ高い」
「誰もが避難が必要」な状況と頭に入れるべき段階で、土砂災害警戒情報や氾濫危険情報、高潮特別警報などが出される状況。過去の重大な災害の発生時に匹敵し、気象庁は「この段階までに避難を完了しておく」と明記している。市町村は災害対策本部を設置し災害対応を進める。
レベル5=状況は「災害発生又は切迫」
既に災害が発生・切迫している状況で出されるのが特徴だ。大雨特別警報や氾濫発生情報が出され、避難する行動自体が危険との前提で「すでに安全な避難ができず、命が危険な状況」を指す。
「警戒レベル4までに必ず避難」の意識を頭に
「避難勧告」を廃止した今回の改正は、避難指示との違いをなくして住民にとってわかりやすくして、逃げ遅れを減らすのが目的だ。
改正災害対策基本法が施行された先月20日に早速、非常に激しい雨が降った鹿児島県出水市、熊本県水俣市などで一部地区に避難指示が出るなどした。他の地域でも近く新たな警戒レベルが適用される例は多くありそうだ。
万が一に備えて、ハザードマップを眺めてみたり避難経路を確認したりする行動が求められる。そして、今回の災害対策基本法改正を踏まえて「警戒レベル4までに必ず避難」との一言を頭に入れておくとよいかもしれない。