「安倍首相は態度が悪い」国民民主党、大塚耕平・玉木雄一郎共同代表に結党の意義を聞く - BLOGOS編集部
※この記事は2018年05月23日にBLOGOSで公開されたものです
民進党・希望の党の有志議員が新たに結党した「国民民主党」。代表には大塚耕平氏、玉木雄一郎氏がそれぞれ共同代表として就任した。新党がこのタイミングでの結党となった理由、主要政策や肝いりの「プロジェクトABC」について話を聞いた。【取材:田野幸伸・村上隆則 撮影:弘田充】
安倍政権の民主主義に対する冒涜的な姿勢が極まった
-- 民進党、希望の党の有志議員が結党した「国民民主党」ですが、その目的について教えてください
大塚耕平共同代表(以下大塚):国民民主党は新しく立ち上がった政党ですので、新党としての使命があります。それは、国民主権をしっかり具体化すること。国民主権というのは「選挙で政権を選べる」ということですから、政権交代が可能な状況をつくるために、その中核政党となるべく、新しく立ち上げました。
それから、国民の皆さんの最大の関心事は生活や経済を向上させる、発展させることです。安倍首相はアベノミクスが成功したと言っていますけれども、過去5年間、実質賃金は下がっていますし、国民の皆さんはあまり好景気を実感できていない。そこで私たちは、国民生活の向上と国民経済の発展のために全力を尽くす新たな国民政党としてスタートを切ることにしました。
-- 前回の衆院選から6ヶ月、なぜこのタイミングで?という声もあります
大塚:安倍政権の民主主義に対する冒涜的な姿勢が極まったと感じたからです。
民主主義というのは、政策論には賛否いろいろあっても、議論のための事実や情報を公開し、共有し合い、熟議を尽くし、そこで決まったことには従う。しかし、多数派の意見が絶対に正しいとは限りませんから、権力は抑制的に運用する。これが民主主義の基本です。
ところが、安倍政権はどうですか。事実を隠ぺいするどころか改ざんする、熟議を避ける、権力は乱用する。民主主義の危機にわれわれが直面をしている今、このタイミングこそ、民主主義を守り、高めるために、新しい国民政党が必要だという思いに至りました。
今回、玉木さんとの共同代表という形ですが、役割としては玉木さんがフォワードで、私がミッドフィルダーからディフェンスという感じでしょうか(笑)。
玉木雄一郎共同代表(以下玉木):私は衆議院議員として、昨年10月の選挙のときに、安倍政権としっかり対峙できるもう1つの勢力を作るために希望の党に移り、1対1の構造を何とか作って政権交代にもっていこうとしました。
今の選挙制度だと、選挙区に野党の候補者が2人、3人出たりすると自民党の候補には勝てません。去年から森友・加計の問題も出ていたし、おかしな政治は変えていかなければならないという中で、あの大きな決断があって、われわれは希望の党に移って戦いました。ですが、例の「排除」の発言があったりして、十分に期待された議席数を得ることができなかった。
政治は結果ですから、あの試みは失敗したと総括せざるを得ないと思います。その結果、本当は野党の数をできれば1つに集約をして、1対1の構造をつくって戦おうと言ったにもかかわらず、いろんなことがあって、党の数を減らすどころか増えてしまった。その混乱は今にも続いています。
大塚さんが言ったように、今の政権は、森友加計の問題、防衛省の日報、さらに財務省のセクハラと、戦後ないぐらいに問題が生じています。それなのに攻める野党がバラバラで、信頼できる票の受け皿がないことが、非常に民主主義を劣化させてしまっています。だったらもう一度、政治勢力を結集するための努力をしなければいけないし、そのための第一歩として、われわれは今回、民進党の有志と、希望の党の有志が1つになって新しい党を立ち上げました。
場合によっては、この国会中に解散総選挙も私はあると思っています。そのために、最低限の選挙の備えも行っていかなければならない。また野党バラバラのままで負けて、自民党の議席を増やすようなことになれば、国民が選挙に行かなくなってしまうんじゃないかという懸念すらある。
議会制民主主義を正しく機能させるためにも、しっかりとした受け皿、少なくとも政権を担える核となる政党を作ろうということで、今回、私たちは国民民主党を立ち上げました。
-- 立憲民主党が野党第一党となったわけですが、国民民主党としては、今後野党を1つにまとめる案として、どう手をつなぎ合ってやっていくお考えですか
大塚:今回、新党に参加してくれたのは62人。メディアの皆さんは「4割の議員が参加しなかった」と書きますが、逆です。6割もの人が参加してくれたというのが実感です。新党結成はゼロからの出発ですから、志を共有し、この厳しいチャレンジに参加してくれる勇気ある同志が6割もいたと感じています。
玉木:本当によく60人を超える方々が集まったなと思っています。安倍政権に対抗する勢力なので、野党側で議員の所属政党がどこになっても実はあまり問題ではありません。大切なことは、野党の側がしっかり選挙で協力をしたり、一体となって取り組めるような「野党連携」をどう進めていけるかということです。
大塚:私自身は民進党の代表に就任した瞬間から「3党連携」を目指すと公言していますので、引き続き、同じ目的に向かって協調できる人たちには幅広い連携を呼びかけ続けます。諸般の事情によって新党に参加いただけなかった元同僚の皆さん、あるいは今、他党の所属になっている皆さんにも、当然、今後も連携を呼びかけます。
もっとも、国民民主党がまずはしっかりした基盤を確立し、地に足のついた活動を展開していくことが重要です。連携を視野に入れつつ、独自の活動に注力していきたいと思っています。
玉木:希望の党にいた立場からすると、小池さんが立ち上げた希望の党の方々と、われわれのように後から民進党から加わった側にはどうしても路線の方向性の違いがありました。
去年の選挙のときには「あの人に排除された」とか「排除した」とかいうことが、どうしても付きまとったんですが、少なくとも今の国民民主党にはそういうことに関わった方々は参加しませんでした。
そういった意味ではこれからいろいろ連携をしていくときのユニットとして、非常に接続可能性の高いユニットが1つできたと思っています。ここからいかに野党再編につなげていけるかということに、尽力をしていきたい。
-- 大塚代表がAbemaTVに出演された時、公明党とも組めるところがあれば、声は掛け続けていくとおっしゃっていましたが、公明党・共産党との連携はどうお考えでしょうか
大塚:公明党さんは、もともと、旧民主、民進の時代から、われわれと政策的にはかなり親和性が高いと感じています。政治の構造というのは未来永劫、硬直的である必要もなければ、そうである必然性もありません。広く連携し、少しでも日本を良くできる政権を樹立するために、多様な組み合わせがあって良いと思います。そういう意味で申し上げました。
今の与野党構造を前提に考えると、参議院の一人区においては、野党候補の一本化が必要です。これに尽きます。共産党の皆さんによくお考えいただきたいのは、例えば、衆議院選挙のときに、協力できれば候補者は立てないけれども、協力できなければ候補者を立てるという方針では、後者の場合、結果的に票が割れて自民党を利するわけですよね。
協力できるときには野党の味方だけれども、協力できないときには与党を利する形になるのは、あまり合理的ではないと思うので、日本のために、より大局的な見地からいろいろなことをお考えいただければありがたいと切望しています。
われわれは政党である以上、常に政権を目指すわけですが、複数の勢力で政権をつくるときには、基本政策の一致が必須です。そこは一線を引かざるを得ないと思っています。
安全保障は「近くは現実的に、遠くは抑制的に、人道支援は積極的に」
-- 政策についてお聞きします。まずは安全保障について国民民主党はどのようにお考えでしょうか
玉木:われわれは、「近くは現実的に、遠くは抑制的に、人道支援は積極的に」というのが基本原則です。特に、対北朝鮮情勢が非常に緊迫化しているという状況認識の中で、わが国の防衛、特に近くでの防衛、これはアメリカとの関係も含めて現実的な対応をしていきます。
ただ一方で、いわゆる地球の裏側まで行って、日本の国益に関係しているのかどうかよくわからないような地域での武力行使はしない。特にアメリカに依頼されて、一緒に付いて行って、遠い海外の領域において武力行使するようなことはやらないと。国際貢献のあり方は、あくまで人道支援に徹するというのが基本的な私たちの立場です。
現行の安保法制はどうなのかということになると、ホルムズ海峡とか、そういったところでの武力行使はできるようになっているわけで、例えば近海で日本のために共同で防衛をしているような米艦に対して攻撃があったようなときには、これはある種、わが国に対する攻撃ともみなしていいような体制とか、そういったものには、われわれはきちんと対応します。
ただ、地球の裏側でやるようなことができないように、今の安保法制を、もっと武力行使の要件を厳格化して、ある種、幅を縮めるような具体的な法改正案を作って出していきたいと思うんです。これを他の野党の皆さんにも呼びかけていきたい。
2015年の時は、集団的自衛権の行使が可能となる安全保障関連法もまだ法案段階だったので、この法案を白紙撤回しろとか、廃案ということを言ったんですけれども、もう今は法施行されていますから、それぞれの自衛隊法や武力攻撃事態法など、現行のいくつかの法律の中に溶け込んでいるわけですよね。そうすると、それがけしからんと言うのであれば、具体的な法改正案として、改正条文として提出しておかしなところを削いでいくしかないんですよ。
単にやめろとか、白紙撤回ということを叫ぶことが重要ではなくて、行き過ぎた、あるいは広がり過ぎた自衛権の範囲を狭めるのは、今の段階においては法改正案を出して安保法制の見直しという形をとるしかないので、それを早急に取りまとめて、他の野党にもしっかりと提案をしていきたい。
一方で、出過ぎたところは縮めますけれども、例えば領域警備、尖閣諸島をはじめとした南西諸島方面に対して、軍隊が押し寄せてくるというような状況ではなくて、武装した漁民が大量に来る可能性があるということについては、国対国の戦いではないので、いきなり自衛隊が出ていくと、かえって緊張がエスカレートしてしまう。
いわゆるグレーゾーン、警察権の行使のところと、軍事力を行使するところのグレーなところに対する対処が現行の法制度では非常に弱いわけです。
こういったところは足りないところをきちんと付け足すような法案も用意して、出過ぎたところは縮めるけれども、足りないところはしっかり補いましょうというような現実的な対応で、安保法制の見直し法案を提出していきたい。
安倍総理は「そもそも態度が悪い」
-- 憲法改正についてはどのようにお考えでしょうか
玉木:憲法改正はしっかりと議論をしていきたいと思っています。例えば解散権の制約であるとか、こういったものは、例えば他の野党・立憲民主党さんなども議論したらいいと言っていますから。
憲法を一字一句変えないということは、われわれはないので、しっかりと憲法の議論はやっていったらいい。地方自治のあり方なんかは、現行憲法は4条しか地方のことを書いていないので、そういったことも中央と地方の格差の広がりの遠因になっていると私は思います。新しい地域分散型の時代には、そういったものも直していかなければいけないんじゃないかと。
-- 憲法9条についてはどうでしょうか
玉木:安倍総理が言っている9条改憲は、もう根っこから間違っていますから大反対。絶対認めるわけにはいきません。いくつかの問題があって、これは大塚代表が本会議で聞いたんだけれども、「9条を変えて何か変わるのか」と安倍総理に聞いたら、「何も変わらない」って言うんですよね。何も変わらないことをなぜやるんだと。
われわれは9条の下で必要最小限の武力行使を認め、急迫不正の侵害があり、他の手段がなくて、そして、行使するときには必要最小限とすべきとしてきました。武力行使の3要件についても、「必要最小限」というところを今回の自民党案は「その必要な措置を講ずる」という文言にして、”最小限”は少なくとも取っているんです。
そうすると、量的には今よりも拡大する可能性が条文上あるので、「何も変わらない」「自衛隊を書くだけです」ということ自体がそもそもウソですよね。ウソをついてまで最高法規である憲法を変えようとする、まず、態度が悪いね。
大塚:それは言える。そもそも態度が悪い。
玉木:権力を縛るべき憲法を変えようとする権力者の態度が悪い。こんな安倍政権の下で憲法改正を認めていたら、軍事力行使の範囲は際限なく広がってしまうし、現に「必要な措置を講じる」だけだと、いわゆるフルスペックの集団的自衛権まで読めます。
こういうところを、国民をごまかしながら、「9条2項を残しているから大丈夫ですよ」って、ウソをつけっていう話ですよ。
-- 大塚代表はいかがですか
大塚:去年の11月、代表質問のときの答弁に加え、安保国会のときの安倍さんの答弁でもうひとつ驚くべきことがありました。その2点から、われわれの安保の考え方と、安倍さんの考え方の違いがよくお分かりいただけると思います。
昨年11月の代表質問の際、私は「憲法に書いてあろうとなかろうと自衛隊は合憲の立場です」と、はっきり申し上げました。
その上で安倍さんに、あえて憲法に自衛隊を合憲だと書こうとおっしゃるならば、今は違憲だとお考えなのですか。そうではなく、今も合憲だとお考えならば、書くことによって何が変わるとお考えなのですかという質問をしました。それに対して安倍さんは先ほど玉木さんが言ったとおり、「何も変わらない」と答えた。であれば、立法事実がないわけですから、憲法改正の合理的根拠がない。これが1点。
2点目は、2015年の安保国会のときに、ついうっかり当然のこととして聞いた質問に対して、安倍さんがフリーズしてしまったのです。
具体的には、質疑の流れの中で、「個別的自衛権は国家の自然権ですが、集団的自衛権は自然権ですか?」と素朴に質問したところ、どうやら「自然権」という言葉をご存じなかったようで、フリーズしちゃったんですよ。
集団的自衛権というのは、1944年の国連設立に向けたダンバートン・オークス会議において議論された国連憲章原案には含まれていませんでした。原案では、集団的安全保障という地域間相互防衛という仕組みで地域の平和を守ることを想定していたのですが、ソ連や中国など、常任理事国の拒否権が発動されると、この地域的相互防衛という仕組みがうまく機能しないことが予想されたので、翌年、国連憲章に突然盛り込まれたのが集団的自衛権という別の権利。つまり、後天的な権利でした。自然権ではないのです。
だから、安倍さんには、個別的自衛権と集団的自衛権について、前者は自然権だけれども、後者は自然権ではないという理解を共有したかったのですが、そのことをご存じなかった。
この2つを踏まえた上で原則論を申し上げれば、自然権としての個別的自衛権は国家の権利として当然われわれは有していることに加え、国民の皆さんの生命と財産の安全を守るために全力で行動するのは当然のこと。この2点さえ確認、共有できていれば、いかなる政権でも国の安全は守れます。
より重要なのは、外交力を含めた総合力を展開し、日本が安全保障上の危機のような事態に陥らないために最善を尽くすこと。われわれは、そういうスタンスです。
玉木:皆さんも、冷静に公開されている情報をよく読んでいただくとわかるんですが、北朝鮮情勢が大変ですよね、だから、9条改正が必要だよねというふうに、どこかイメージで思っているかもしれませんが、「北朝鮮が大変だから9条を変えましょう」とは安倍総理は一言もおっしゃっていない。
なぜ9条を変えるかというと、自衛隊が合憲だと明記されていない事によって、自衛隊の隊員のお子さんが学校でいじめられるからかわいそうだとか、憲法学者が違憲だと指摘して、中学校の教科書に違憲と載っているのをやめさせようというのが理由であって、半島情勢の緊迫化と安倍改憲案は、まったくつながらないんです。
「かわいそうだから」というのは、はなはだ感情的な話であって、しかも今の安倍改憲案だと、その目的は達成できません。仮に100歩譲って、自衛隊という組織の名前を憲法上に書けば、自衛隊という存在については、たぶん違憲の疑いは消えるでしょう。ただ、戦後われわれが問題にしてきたのは何かというと、その自衛隊というものが行使できる自衛権の範囲について、9条2項で「戦力を持たない」と書いているのに、防衛費5兆円もの規模の戦力は、いったい何なんだと。
戦力と呼べるのか、戦力未満なのか、警察力以上戦力未満なのかという、この永遠の議論をやってきたわけで。でも、自衛権の範囲については、結局何も憲法上に書かないわけですから。その意味では自衛隊を巡る違憲論は消えないわけです。
だから今、安倍総理がおっしゃっていることについては、ウソ、ごまかしがあるし、かつ100歩譲ってそれを認めたとしても、改憲の目的は一切達成できない。二重、三重において、百害あって一利なしの改憲だと。
憲法改正案を、雰囲気やノリで押し切ろうとしていく手法は避けるべきだし、とりわけ憲法という、権力を縛る法体系を議論するやり方としては、内容もそうですけれども、手続きにおいても非常に私は問題があると思います。
プロジェクトABCで技術立国目指す
-- 国民民主党の成長戦略でもある「プロジェクトABC」が先日発表されました
玉木:われわれは「プロジェクトABC」をこれからやっていきます。AはAI(人工知能)を活用した革新的な技術、テクノロジーをどうやって次の日本の課題克服につなげていくか。
Bはベーシックインカム。人類は100年生きるようになるし、かつAIが出てくると仕事が半分ぐらいなくなるといわれている中で、人間が生まれてきて、尊厳ある生活を送り続けるための最低限の生活保障をどう設計するのかというのはとても大事です。
CはCommunity Independenceで地域コミュニティの自立を促すような仕組みを考えています。
-- まずAのAIですが、具体的にAIをどのように活用していくのでしょうか
玉木:例えば、いろんな分野で人工知能の活用が出てきていますが、1つは政府、われわれも、ほとんどAIで代替できるようになる。陳情なんかもAIで割り振れるんじゃないかなと。音声で回答してくれる、「教えて、霞が関」みたいなものを用意しておいて、「ダムが古くなって壊れているんだけれども、これどうしたらいいのかな?」と問い合わせがあったら、国土交通省のしかるべきところにつながるとか。少なくともいろいろな処理はAIによって可能になってくると思うので、政府自体をAI化していくということもできるのはないでしょうか。
また身近なところで言うと、もうすでに始まっていますけれども、自動車の自動運転化が進めば、過疎地域の公共交通機関不足が解消できる。電車もバスもない地域に、民間の車も使って、シェアリングエコノミーなんかも絡ませながら、移動困難者をゼロにするとか。
そういうテクノロジーの進歩、AIの進歩をうまく使って、人口減少とか過疎化とか、そういう問題に対する革新的なソリューションを提供していけばみんなハッピーになると。
大塚:国民生活の分野、つまり、国民の皆さんの利便性が高まらなければ意味がないので、その観点からのAIの活用。その延長線上に行政のAI化があり、これは当然やります。
それと同時に、AIがそういう次元に達するためには、量子コンピューターの実用化に向けて日本が世界の最先端を走らなければなりません。実用化されるAIの技術やサービスを日本が海外から買うことになってしまっては、国富が流出するだけです。日本がAIの分野で最先端を走る戦略、とりわけ量子コンピューターの分野は、がっちり予算を付けて、最先端を走り続ける努力が必要と思っています。
玉木:私は、もう一回、日本を技術立国にしたいんですよ。
大塚:そうそう。
-- では、もう2位じゃ駄目なわけですね?
大塚:分野によっては、1位を目指し、維持することが必要です。
-- Bにはしばしばネットで議論になる「ベーシックインカム」がしっかりと書かれていました。詳しくお聞かせいただけますか
玉木:いわゆる月7万円とか、金額はいろいろな数字がありますけれども、そういうものをどうやって提供していくのか。われわれは、たぶん公党として初めて、財源も含めてベーシックインカムの議論に取り組み、1つの政策的な提案をしていく最初の党になると思います。
最低限の所得保障をどうやって皆さんに提供するのかは、いろいろなやり方があると思います。国民全員に7万円配るとなると、約100兆円弱のお金が掛かるので、それをどう確保するのか。
まず現実的に考えられるのは、サラリーマンには給与所得控除というのがあります。例えば給与所得控除を35万円増やしたとして、その方が所得税20%だったら、7万円ぐらい払う税金が減る。
そうすると本来、税金で取るべき額のうち7万円を保障していくというのは1つ考えられますよね。問題は税金を払っていない人、所得の低い人にどう還元するかというと、給付するしかない。その給付のやり方をどのようにやるのかと。
例えば、高齢者。国民年金は基礎年金だと6万4,000円ぐらいです。ここには半額、税金が入っています。高齢者が単身で生活するのにだいたい7万2,000円かかると厚生労働省が言っているので、もうちょっと乗せて7万円ぐらいの最低保障のある年金制度、あるいは税金の投入比率をもう少し高めれば、それは年金と呼べないかもしれませんけれども、何かそういった7万円程度の高齢者向けの所得保障の仕組みがつくれないかなと。
もしそれをやるんだったら、今の生活保護を一部やめて、その財源を持っていったり、いろんなことをやっていかなければならないので、いずれにせよ、生きていくのに必要な額を減税措置と税金の控除と給付とを組み合わせながら、すべての世代に保障していきたい。
特に子育て世代がしんどいので、税金をまけてあげるというか、取らないようにするのに合わせて、子どもがいるということを1つの基準として、そこに加算していくと。いわゆる子ども手当のようなものをそこに乗せる。あるいは第2子、第3子と増えるにつれて、その額を増やしていくとか、総合的に考えて、あらゆる人生のライフステージにおいて、生きることに困らない、尊厳ある生活を保障できるような、最低の所得保障をすべての年代、すべての世代に保障していくような総合的な基礎的所得保障の仕組みを入れたい。
理論的にいわれるベーシックインカムというよりは、もっと現実的に考えて、ある種、「日本型ベーシックインカム」呼べるような、どんな世代にも7万円程度の所得がちゃんと手元に毎月残る仕組みをぜひ作っていきたい。
-- 最後にCですが、資料には目新しい「ブロックチェーン」という言葉もありました
玉木:国の分散化を進めるために、地域コミュニティにブロックチェーン技術を活用します。国が全国津々浦々の都道府県や地域コミュニティの面倒を見ることは不可能なので、ある程度自立してやってもらわなければいけない。
地方公共団体が持つ信用の中で、ブロックチェーンを使った仮想の地域通貨を発行して、地域の新しいモデルをつくることができれば、新しい経済圏が生まれるし、法定通貨とは違った、また新たな資金の獲得手段にも私はなると思うので、地域もどんどんそういう分散型の技術を取り入れながら、まさに分散型国家を作っていくと。
エネルギーもどこかで大きく発電して、それを壮大な送電網で送るんじゃなくて、ソーラーシェアリングとか、地域でそれぞれ小口の分散型のエネルギーで自立してやっていくというようにする。まさにブロックチェーン技術がそうなんだけれども、全部を中央統制型でやるのではなくて、各地域が独立してやっていく。われわれの考える国家強靭化策というのは、そういう地域の自立・分散を促していくような新しい国づくりです。
今年は明治150年ですよね。日本は明治維新以降、中央集権化を進めてきて150年になるんですけれども、われわれはこれを巻き戻していきたいなと思っています。海外からの観光客は明治維新よりも前の文化や施設に行っているわけですし。その資源で食わしてもらっているわけ。当時は、人口が3,300万人ぐらいしかいなかった。今に生きる文化は、多様な藩や地域があった時代に育まれたものだから、新しい江戸時代と言うか、江戸時代と平安時代が非常に分散化が進んでいたんだけれども、そういう画一的中央集権型ではない国家・社会づくりをやりたいなと。