※この記事は2017年05月20日にBLOGOSで公開されたものです

■スポーツはビッグビジネス

今回はスポーツビジネスの話である。
2015年のスポーツ用品売上ランキング・ベスト10では。

1位 ナイキ(米) 3,060,100万ドル(3兆円以上)
2位 アディダス(独) 1,860,650万ドル
3位 ザ・ノース・フェイス(米) 1,237,700万ドル
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7位 アシックス(日) 389,931万ドル
8位 プーマ(独) 372,570万ドル
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(***は日本では有名でないが、欧米で人気のメーカー)

この、2位と8位が歴史的には本物の兄弟(ダスラー兄弟)が別れでできた会社というのだから、このドキュメンタリーが面白くないはずがない。

思えば第二次大戦後、スポーツビジネスは想像を絶するビッグビジネスになった。特にテレビ中継や雑誌掲載による影響は絶大だった。

オリンピックで、ワールドカップサッカーで、内外の野球で、内外のゴルフのトーナメントで、バスケットボールで、スキー等の冬季スポーツで我々はスター選手の身に着けている服、使用している用具、履いている靴、を常に見ている。時に超クローズアップで。


『ザ・ライバル』ダスラーVSダスラー ~プーマとアディダスの兄弟対決~より

マイケル・ジョーダンの履いていたエアー・ジョーダンはシリーズ14まで作られたのだが全世界で一体どれだけ売れたのであろうか? 「それを使ったらスター選手の様に自分も超人・名人になれるかも知れない」。皆はそう夢想するのは当然かもしれない。特に上位の2メーカー等はプロ使用だけではなく日常のスポーツ用、普段着用、応援用などにも使われるのだからその需要の大きさは底知れない。

プーマ、アディダスの歴史

ここに、興味深い「世界的スポーツ用具メーカー」の歴史がある。

1920年、ドイツのニュルンベルク近郊で兄ルドルフ・弟アドルフのダスラーが靴の製造会社「ダスラー」を設立。兄ルドルフが販売、弟アドルフが生産を担当していた。

戦後1948年、兄弟の意見対立により会社は分裂。(戦争中の出来事が関係していたという) 兄ルドルフが「プーマ社」を、弟アドルフが「アディダス社」を設立。


『ザ・ライバル』ダスラーVSダスラー ~プーマとアディダスの兄弟対決~より

1951年「アディダス」はフィンランドの会社より3本線の商標登録の権利譲渡される。1970年以降、スポーツ用品がビッグビジネスになるにしたがってアドルフの息子ホルスト・ダスラ―が経営を引き継ぎ、巨大スポーツ広告代理店を設立しIOC会長やFIFA会長やIAAF(国際陸上競技連盟)会長と太い人脈を持つようになりこの時期、アディダスは売り上げ世界一のスポーツメーカーになる。

ホルストが51才で急死した後、経営は混迷を深め1993年フランス人実業家のドレフュスが経営権を握り黒字に転換する。


『ザ・ライバル』ダスラーVSダスラー ~プーマとアディダスの兄弟対決~より

一方、プーマも大スポーツイベントでの展開を徹底化しアディダスに迫るものの抜き去るには至っていない。1974年創設者ルドルフ・ダスラ―が死去。長男のアルミンの下で急成長したがアメリカおける大量の安売りが災いしブランド価値が低下しスイス企業に売却される。

しかし、その後コストカットやマーケティング戦略が功をそうして2003年には1993年の16倍以上の株価上昇を遂げるに至る。

ナイキに受け継がれる日本企業のDNA

このドキュメンタリーから話は飛ぶが今やスポーツ用品の世界一のメーカーとなった「ナイキ」社はスタンフォード大学で経済学を学んだフィル・ナイトと、オレゴン大学・陸上コーチのビル・バウワーマンがブルーリボンスポーツ(BRS)社を設立。在学中にナイトは論文「日本の運動靴は、日本のカメラがドイツのカメラにしたことをドイツの運動靴に対しても成し遂げ得るか」を書いた。

卒業後に早速日本の神戸に出向きオニツカタイガーの品質と低価格を気に入り、1962年にオニツカの米国販売権を取得するなどした。

しかしその後、長年に渡り両社間の法的紛争は絶えず現在は終息に向かっている。ナイキが初期に日本のオニツカタイガーに創業のヒントを得たのは間違いない。そう、ナイキのDNAに日本のオニツカタイガーのDNAがしっかり受け継がれているのである。


『ザ・ライバル』ダスラーVSダスラー ~プーマとアディダスの兄弟対決~より

まさに、20世紀から21世紀に勃興したスポーツ産業。世界的なスポーツの繁栄は「世界大戦」という戦争上の選択肢を捨てたかにみえる人類によるスポーツに名を借りた「代理戦争」とも言える。この「ダスラーVSダスラー」はそのスポーツ勃興期に起きたスポーツ産業に関する兄弟げんかであり利権闘争としての貴重で胸躍る記録になっている。

関連サイト

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