【詳報】「内外の情勢に合わなくなっている憲法をアジャストする」ー船田元・自民党憲法改正推進本部長が会見 - BLOGOS編集部
※この記事は2015年04月29日にBLOGOSで公開されたものです
28日、船田元・自民党憲法改正推進本部長、衆議院憲法審査会筆頭幹事が会見を行った。冒頭発言
最初に、日本において憲法の改正がなぜ必要かということですが、自民党の中には二つの大きな考え方がございました。一つは、1945年、連合国軍のマッカーサー最高司令官から、いわゆる"マッカーサー草案"という日本国憲法の原点を与えられた、ということがありました。"マッカーサーから与えられた憲法だから、その良し悪しはともかくとして、日本人の手でつくりあけるべきである"というのが、我が自民党の党是である"自主憲法の制定"ということにつながるものです。
もう一つは、確かに"与えられた"ということは歴史的な事実であるけれども、戦後70年近く我が国の国民生活に定着したものとなっていることも事実です。しかし一方で、国際社会の大きな変化に対し十分に対応出来ていない部分が生じてまいりましたので、我々は憲法を直していくべきだ、という考え方です。
私は両方の考え方に理解を示しておりますが、個人的な考え方を言えば、後者の考えに近いということを申し上げたいと思います。
これまで、我々が憲法審査会、あるいは憲法推進本部で議論してきたことは、憲法改正のための環境づくりということでした。
一つは改正の手続きにとって重要な要素であります、国民投票法を整備すること。もう一つは、この国民投票が18歳からできるようになりましたので、やはり選挙権も18歳からにしようということで、公職選挙法の改正を行うことでございました。国民投票法はすでに昨年5月に施行されましたが、公職選挙法は現在国会で議論中でございます。
これからはいよいよ憲法改正の中身の議論に入って行くことになりますが、そこでいくつかの原則を申し上げたいと思います。
一つ目は衆議院・参議院に憲法審査会が置かれていますが、そこではオープンな議論をしていこう、ということです。
二つ目は、時間がかかることですが、改正に反対している政党、反対派も交えた中での議論であるべきだ、ということです。
三つ目には、各党の所属議員、多い少ないはありますが、原則としてそれぞれの政党に平等に発言の時間を与える、という慣例を続けたいと思います。
四つ目は、改正のやり方になります。改正したい項目は一杯あるんですけれども、それをいっぺんに改正するのではなく、関連するものを何回かに分けて投票を行う、改正を行う、という方式を取りたいと思います。
第一回目の憲法改正について、明確にそのタイミングを申し上げることはできませんが、私の希望としてはこれから2年以内に行いたいと思います。
一回目の憲法改正のテーマとして考えられることは、三つあると思います。
一つ目は環境に関する権利、環境権の設定だと思います。
二つ目は国家財政、地方財政も含めて、財政の健全化に関する条項であります。
三つ目には、緊急事態に関する条項でございますが、これは特に国会議員の任期が終わるときに大きな自然災害が発生した場合、任期を延長するという措置を取るべきではないか、そういう内容でございます。
これらのテーマについて、できればこれから先の憲法審査会において、各党のみなさんと一緒になってぜひ深掘りの議論をしていきたいと考えております。
一方、9条の改正についてはみなさんの関心が高いと思いますけれども、9条の改正は憲法改正の中心のテーマだと思っております。
しかし9条に関しましては、その改正の中身も含めて国民の間では世論が大きく二分されている現状にありますので、国会の内外においてさらに慎重な議論を行わなければいけないと考えております。ですから、9条の改正は2回目以降の改正において手がけることになると思います。
最後に2つ指摘をしたいと思います。
一つは、憲法改正の発議は国会に与えられた責務であり、内閣はその改正案を提出する権利をもっておりません。国会がすべて決めることであり、国民の代表として憲法改正の原案を作る努力を続けたいと思います。
もう一つは憲法改正というのは政治の目的ではございません。あくまで私達の安全が保証され、より豊かな生活が維持されるための手段であると考えています。
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質疑応答
ー自民党の憲法改正草案を読んだり、お話を聞いていて、多くの国の憲法にある、人々を守るという概念、それが抜けているように強く感じます。自民党の草案をお読みいただいたようで、ありがとうございます。 ただ、この草案というのはあくまでもメニューでございまして、我々としてはそこから改正したい部分を抜き出して、野党の皆さん、他党のみなさんに紹介するということを考えております。
この草案の中では義務が非常に強調されているということでございましたが、新たな義務は書いておりません。強いて言えば、家族・家庭を大事にしましょう、というスローガンを書かせていただきました。
それとは逆に、"新しい人権"ということで、環境権、犯罪被害者の権利、国民の知る権利、そういう新しい権利を付け加えたいと考えております。
私達は、国家権力が人々を苦しめたり、人権を侵害したりすることのないよう、憲法というのは国の、あるいは権力者を縛り付けるものだという旧来からの近代的な立憲主義を踏まえて、草案を書かせて頂いています。
ー国民投票は複雑な問題を簡単にしてしまうという指摘があると思います。一般のひとたちにとって問題がわかりやすくなった方が良いと思いますか。
国民投票の制度、各国に様々ございます、日本の場合には、今までありませんでした、唯一ありますのは憲法改正が是か非か問いかける国民投票、つまり国民投票の結果によって、憲法改正ができるかどうかが決まるという、義務的なものでございます。
それで一つ例を申し上げますと、例えば、憲法改正の国民投票において、例えば9条の改正が◯か×か、それと、環境を新たに導入することに◯か×か、この異なる二つの内容を合体させて問いかけると、国民はどう投票していいかわからなくなる、迷う方が非常に増える。こういう状況を避けるために、国民投票の質問項目内容はシンプルにするべきだと思っています。
それからヨーロッパの各国では、憲法に限らず国の重要な課題について国民投票を行う国があるようでございますが、私達も日本でも、憲法以外の国政の重要課題について国民投票にかけるという制度、一般的国民投票と呼びますが、これは現在憲法審査会で少しずつ議論しております。
ただ、私自身はかなり消極的です。民主党、あるいは維新の党などは積極的に導入したいという考えですが、今後の議論に委ねたいと思います。
ーさきほど2年以内に国民投票を実施したいとおっしゃいましたが、政界において2年はあっという間だと思います。
また、二つの大きな課題として、選挙の投票率が非常に低い中、どうやって多くの方たちに国民投票に参加してもらうのか、そして、大多数の日本人は今の憲法に肯定的な気持ちだと思うが、その認識をどうやって変えるのか。お考えは。
一つは憲法改正の国民投票を発議した後、非常にプリミティブな問題につきましては 2ヶ月ほどの運動期間をおいて、投票にします。複雑なテーマについては最大6ヶ月間をおいて、さまざまな運動が行われる予定です。
この運動期間中は、国会において広報協議会というPRのための部署をつくりまして、そこで盛んにPRを致します。そして同時にマスコミのみなさんにもお手伝いいただきまして、改正の中身、意味することについて大いにPRしていただくことになると思います。
もう一つの質問ですが、確かに現在、各マスコミが世論調査をやっておりますが、改正に賛成か反対か、数の上ではほぼ拮抗しております。しかしながら、戦後70年近くどこも改正していない非常に古い憲法になっておりまして、現在の内外の情勢に合わなくなっているそういう文面が相当出てきているので、やはり出来る限り現実に合わせる、現実から将来に合わせてアジャストする、そういう憲法に変えたいというのが我々の理想とするところですので、この道を追求していきたいと思います。
ーひとつは義務を新たに課すものではないということですが、自民党の草案には道徳が謳われています。道徳と法の分離が近代法の大前提だと思いますが、自民党はそれから離脱することをお考えになっているのですか。
もうひとつは、本来、憲法は国民が統治権力に対して憲法意思という命令をするものであると解されていますが、草案では国民に対する命令と受け取れるような条文がいくつかあります。これは誰が誰に命令しているのかも含めて、船田先生どう思っているのでしょうか。
また、基本的人権に条件がついていること、これも慰霊なことだと思いますが、ご自身はどう理解されているのでしょうか。
前提としては、先ほども申し上げたとおり、自由民主党の憲法草案はあくまでメニューであって、そして草案そのものが国会で原案となることは全くないと思います。私はあるテレビで、これは言葉が強すぎましたが、ズタズタになると申し上げました。むしろどんどん揉まれて、原案が本当にバラバラになって、そして最終的に成案ができると、こう思っております。
まず、自民党草案では道徳という要素が多いのではないかということですが、決して私達は立憲主義から外れることは考えとおりません。立憲主義は守りつつも、しかし、それぞれの国の憲法には、国柄、国の性格、そして国民の規範、そういうものがいくつか見られます。ですから、私たちの草案でも、国柄、国のルール、そういうものを付け加えるということはこれはやってもいいのではないかと考えております。
二つ目には、自民党の草案の中には国民に命じるというのが多いのではないかということですが、私の考えでは、そういうものはあまり多い無い方がいい、少ないほうがいいと思っております。ただ国の安全、国民の生活の秩序、そういうものを保つために、最低限、国民にお願いする、場合によっては命ずる、という項目があっても然るべきだと思います。
三つ目は、人権の行使において我が党の草案では条件がつきすぎるのではないかということですが、今の憲法の中でも、"公共の福祉に反しない限り"とこう言っておりますので、私どももその線に沿って条件をつけております。その公共の福祉ということばが曖昧でありますので、公の秩序、公益、ということで概念をはっきりさせたということでございます。
ー自民党の憲法草案は日本語の文章として非常に格調が低いと思います。自民党は民主主義とか人権に対して本当の確信を持っていないから、人類の歴史を踏まえていないから、その哲学がないからああいう三流の役人が書いたメモみたいな感じになってしまうのではないかと思いました。
また、改正の本当の狙い9条にあると皆が思いますが、集団的自衛権を認めるように9条の解釈を変えました。そして今度はガイドラインを変えて、日米安保条約を改正したに等しいと言われるほどの状況が出来てしまいました。そうすると、自民党においては、憲法9条改正に対してもう情熱を失っているんじゃないかと思いますけれどもいかがでしょうか。
自民党草案に対する評価、これは本当に私達も傾聴しなければいけないと思います、我々も日本語の勉強をしなければいけないと改めて感じました。我が党の草案がそのまま憲法改正原案になるわけでもないし、いっぺんに全てを改正するという乱暴なことではないとご理解をいただきたいと思います。また、他の党は改正の草案をほとんど発表しておりません。我々が先駆けて発表したという努力だけはお認め頂きたいと思います。
9条の改正につきましては、慎重に扱わないといけないということがございます。しかし、決して熱意が消えたということではありませんで、少なくとも現行の9条を素直に読めば、自衛隊の存在は書いてありません。認められないという書き方を、解釈で認めておりますが、それを認めない方が総理大臣になる、政権を担った場合には、一晩にして変わってしまいます。そういう、将来に向けての不安定さを無くすためにも、自衛隊の存在をきちんと書くことは、これから先も大変重要な課題であるということに変わりはない、それを我々は追求していくということに尽きると思います。
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