※この記事は2014年12月03日にBLOGOSで公開されたものです

本エントリは、信州大学教育学部「比較教育学演習」の授業での、第47回衆議院議員選挙の各党のマニフェストから、教育と子育てに関する政策をまとめた資料から、転載をさせていただいております。

※2014年12月1日時点で各党のウェブサイトに掲載されているマニフェストを参考にまとめたため、掲載されていない政党が複数あります。

■少人数学級

民主党
・一人ひとりの子どもがきめ細かい教育を受けられるよう、義務教育における35人以下学級を着実に推進します。

公明党
①新しい教育の推進
少子化の進展などに対応した新しい教育への転換が重要であるとの視点に立ち、子どもたち一人ひとりの個性や学習状況等に応じた、きめ細やかな教育を推進します。

日本共産党
・「40人学級にもどせ」などとんでもない。少人数学級に踏み切る一点での共同をひろげ、実現させます。

・今年10月、予算編成をすすめる財務省が「35人学級は効果がない。来年から40人学級に戻せ」と言いだしました。大多数の教育関係者、国民が反対の声をあげています。少人数学級をすすめるのか、元に戻すのか、選挙の大きな争点です。

・安倍政権が暴走 35人学級は2011年に小1で実現、2012年に小2(※)に広がりました。ところがその直後にうまれた安倍政権が、それ以上の学年への35人学級の拡大をとめてしまいました。そしてついに財務省が「40人学級にもどせ」と言いだしたのです。とんでもない暴走です。選挙と世論で変えるしかありません。(※小2は法律化されず予算上の措置のみで実施)

・少人数学級推進の一点で共同を広げ法案を成立させます。

・少人数の方が子どもをていねいにみられることは明らかです。文部科学省さえ、少人数学級の良さを認めています。日本共産党は少人数学級推進の一点で共同をひろげ、他党とも協力し、少人数学級推進の法律を制定するため全力をつくします。同時に、高校に少人数学級をひろげます。

社会民主党
・30人以下学級の早期完全達成と教員定数の拡大

■道徳教育

自由民主党
・教育行政の責任体制の明確化等を行い、いじめ問題に的確に対応できる体制を整えるとともに、道徳を「特別の教科」として位置づけ、道徳教育を充実します。

日本共産党
・国定道徳の押しつけでなく、市民道徳の教育を
安倍首相は愛国心教育を強調し、「道徳の教科化」をすすめようとしています。しかしそれは、教科書検定などを通じて国に都合のいい愛国心などを押しつけようというものです。しかも文科大臣は戦前「お国のために血を流せ」と教えた教育勅語を「しごくまっとう」と礼賛している人物です。私たちはこのような国定道徳の押しつけに反対し、すべての人に人間の尊厳があるという民主主義を土台にし、子ども自身の選択による価値観形成を大切にする市民道徳の教育を提案します。愛国心も戦前の偏狭な愛国心の問題を伝えてこそ、世界の人々と共生できるものとなりえます。憲法や子どもの権利条約などの学習、身の回りの問題をみんなで解決していくクラス討論や学校行事などの自治活動、すべての授業や生活で子どもが人間として大切にされ体罰などがきびしく批判されること、そうした教育全体をとおした道徳教育を尊重します。「道徳の時間」はそれらの一つとして位置づけてこそ有効なものになります。

次世代の党
・「独立自尊」の精神を養い、愛国心を育む教育
・社会における公正と秩序を維持するための規範・道徳教育

■特別支援教育

自由民主党
・障害のある子供たちのため、教職員の専門性向上、通級による指導の充実、拡大教科書等の普及・充実、学校施設のバリアフリー化等の必要な教育条件を整備します。

公明党
④障がいのある子どもへの支援
障がいのある子どもが十分な教育を受けることができるよう、特別支援学校の教室不足の解消やバリアフリー化などの整備を進めるとともに、特別支援教育コーディネーターの配置拡充や専門性の向上、特別支援教育に対応する教職員等の資質向上を図るなど、特別支援教育の一層の充実に取り組みます。 また、発達障がい児等の教育機会を確保するため、発達障害支援アドバイザーの配置拡充を進めるなど、必要な教育環境の整備に向けた支援を拡充します。

日本共産党
・特別支援教育・障害児教育を拡充します

特別支援学校や特別支援学級などに在籍する子どもたちが急増しているにもかかわらず、それに必要な条件整備が図られていないため、各地で「教室をカーテンで仕切って二学級が使う」「できるだけ音を出さない音楽」「できるだけ体を動かさない体育」など小中学校では考えられないような事態がおきています。設置基準を設け、こうした劣悪な条件を改善するために全力をあげます。

・特別支援学校は特別支援教育体制への移行により、小中学校での教育にも一定の役割をはたすことになりました。ところがそれに伴う増員がなく、多くの矛盾がうまれています。教員定数を増やすとともに、小規模分散の地域密着型をめざします。

・特別支援学級は子どもたちの障害の複雑化に対応するため、教員を増員します。通級指導教室の編制基準をもうけ、必要な教員を配置します。通学の保障をすすめます。医療・福祉など専門機関とのネットワーク、巡回相談など地域全体の支援体制をつよめます。「子どもの最大限の発達」や「社会への完全かつ効果的な参加」を目標とするインクルーシブ教育(国連の障害者権利条約)の立場から、日本の教育制度がインクルーシブ教育にふさわしいものとなるよう、国民的な合意形成をはかり、改善を進めます。(詳しくは、「障害のある子どもたちの教育条件を改善するための緊急提案」をご参照ください)

■新しい仕組み

自由民主党
・小中一貫教育や高校の早期卒業の制度化、フリースクール等多様な教育機会の確保と支援方策の充実、夜間中学の設置促進等、教育制度の柔軟化を図ります。

維新の党
・多様な教育提供者の競り合いによる教育の質と学力の向上をめざし、教育バウチャーを支給する。

公明党
⑤多様な教育機会の充実 公立夜間中学校を全都道府県に1校以上設置するなど、学齢期(満6歳~15歳)に就学できなかった義務教育未修了者や在日外国人などの学習支援を推進します。 また、自由で独創的な学びの場を提供するフリースクールを公的に支援する仕組みづくりや、定時制・単位制高校や通信教育課程導入の大学等の増設・拡充を進め、多様な教育機会の確保・充実に取り組みます。

・教育委員会制度を廃止し、選挙で住民から選ばれた首長が教育目標を設定する。

■震災対応・防災

維新の党
・復興は人づくりから。地元の大学に地域の若者を集め、東北で起業する環境を整備する。
・「子ども被災者支援法」の基本理念に基づき原発事故被害者の生活再建支援を最優先にする。

公明党
⑥学校施設の耐震化と長寿命化対策
学校施設の耐震化(非構造部材を含む)100%を実現します。また、予防保全という考えの下、劣化状況調査を実施し、学校施設の長寿命化を進めるとともに、維持費の圧縮を図ります。

日本共産党
・放射能から子どもを守ります
多くの人々と力をあわせ「即時原発ゼロ」を求め、放射能から子どもの命と健康が放射能に脅かされることのない社会にします。福島の子どもたちの命と健康を守る検診・医療制度の充実、教育条件の整備、福島県をはじめ放射能汚染が心配されるすべての地域を対象とした、食の安全確保、学校や保育所等の施設、子どもの通学路や遊び場などの放射線量測定と除染について、国の責任を明確にして取り組みをつよめます。子どもの健康を心配し自主避難した人なども含めて、すべての原発被災者・被害者を支援します。

・学校耐震化、防災拠点としての整備をすすめる
東日本大震災はあらためて、学校の防災拠点としての重要性を明らかにしました。しかし少なくない学校で避難所・防災拠点として必要な水や燃料、毛布などの整備が十分ではありません。国の制度を確立し、整備を進めます。学校の耐震化はある程度進みましたが、いまだに約1割の学校が対策を講じられていないと考えられ、一刻も早い対策が求められています。また、地震の際には天井材、内外装材、照明器具、窓ガラスなどの非構造部材にも被害が生じ、子どもらへの重大事故につながりかねません。ところが、非構造部材の対策を行っている学校は全体で3割程度にとどまっています(2012年4月1日現在)。耐震化の遅れの背景には、地方財政の逼迫があります。国の予算を増額し、全ての耐震調査・耐震化工事への補助率と補助単価をひきあげるなど、保育園や幼稚園も含めて遅れた耐震化を確実に進めるようにします。

▼東日本大震災被災地の教育の復興、放射能・原発に関する教育
東日本大地震から二年以上が経過しましたが、被災地では教育上の解決すべき問題が今なお数多く残されています。現在進行中の福島第一原発事故による災害、放射能汚染への対応も不十分で、子どもの被曝への心配もやみません。
子どもは復興の希望です。その子どもたちの成長や安全が保障されていない現状を放置してはなりません。日本共産党国会議員団が現地調査にもとづき震災の直後におこなった「東日本大震災――学校教育についての申し入れ」をふまえ、以下のことに全力でとりくみます。

・地元の要望にもとづく学校再建・教育条件整備を全額国の負担ですすめます
大規模な被害をうけた学校の再建はこれからです。現地の要望は、安全な高台に移して安心な学校を建てたい、いまの校地に盛土をして校舎をより高い位置に建て直したいなど様々です。ところが国の支援が不十分なもとで、自治体によっては震災に乗じて学校の統廃合を一方的に進める動きもおきています。未曾有の津波で地域全体が大きく破壊された中での復旧であり、地元住民の要望にもとづく学校再建を全額国の負担ですすめます。私立学校や専修学校・各種学校の再建や修繕も公立学校と同様の措置をとるようにします。

・「給付型奨学金」の創設などにより被災者の教育費や生活の心配をなくします
震災により保護者の生活基盤が破壊されたことは、進学の断念、生活の困窮によるネグレクトなど子どもに深刻な影響をあたえています。復興の大原則として生活基盤復活を求めるとともに、被災者への返済不要の「給付型奨学金」(程度に応じて月数万円から10万円)を創設、被災者への私立高校、専修学校・各種学校、大学等の授業料減免の拡充、被災地の給食費、教材費等を復興まで不徴収とするための国庫補助、保護者の生活を支援するスクールソーシャルワーカーを中学校区に最低一名以上配置など教育の面から子どもの教育費や生活の心配をなくす手立てをとるようにします。震災によって親を失い、孤児となった子どもへの支援の体制を拡充します。

・福島をはじめ被災地の教職員定数をふやします
子どもの心のケア、生活の心配、学習の遅れなど、被災地の学校は多くの課題がある一方、教職員自身も被災し困難をかかえています。子どもたちをていねいに育てられるよう、被災地の教職員定数の増員をすすめます。とくに原発事故により福島県では多数の子どもが他県に避難し、また、避難しなくとも被曝を心配しながら教育活動を続けなければならないなど、きわめて困難な状態が続いています。ところが国の教員配置に関する措置は、震災前の教職員数の維持にとどまるなど、たいへん不十分です。困難な状況に対応したいっそうの手厚い条件整備をすすめます。

・線量調査、除染など被曝低減対策、健康調査をすすめます
原発事故による被曝から健康を守る原則は、「これ以下なら絶対に大丈夫という値はない」という考え方(「しきい値なし」)にたち、被曝量を可能な限り下げることです。とくに子どもは大人より感受性が高いわけですから、被曝量をより低く抑える必要があります。ところが国は、子どもの被曝限度を「事故収束後の復旧期」の最大値である「年間20ミリシーベルト」とし、当初は被曝量を下げるための校庭の表土削除すら「必要ない」として保護者らの激しい怒りを呼びました。こうした対応をあらため、被曝低減対策、健康調査、学校給食の安全対策、線量の高い地域の子ども・保護者が、無償で各地の「林間学校」等公的施設で休暇をとれるような措置をすすめます。

・原発推進教育を中止し、原発と被曝についての科学的な教育を保障します
自公政権は2002年から、原子力発電所立地を目的とするエネルギー特別会計によって偏った原発推進教育をすすめていました。すでに「原発安全神話」が書かれた副教材「わくわく原子力ランド」等はわが党の追及で「見直し」となりましたが、それにかわって発行された副教材は、原発事故についての反省もなく、放射能や被曝の過小評価を子どもに与えるような内容となっています。こうした原発推進教育の影響を一掃して、原発や被曝に関する科学的な教育が自主的にとりくめるようにします。

社会民主党
・約束3 原発再稼働は認めず、脱原発社会の実現を目指し再生可能エネルギーを促進します

・「原発事故子ども・被災者支援法」の基本方針を抜本的に改め支援対象地域を拡大し、子どもを放射能から守ります。福島の子どもたちや妊産婦の保養を支援します。

・被災県への中長期的な教職員の加配措置、全国からの自治体職員派遣増加や中途採用を増やせる交付税拡充など、被災自治体支援を強化。



担当: 林 寛平(信州大学教育学部)
学生: 飯島香純、大木健晴、森下結衣、加地里帆子、山田真由美

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