池上彰氏「“面白くてためになる”選挙特番を目指す」 - BLOGOS編集部
※この記事は2014年12月02日にBLOGOSで公開されたものです
2014年12月14日投開票で行われる衆議院総選挙。投票日当日は、民放各局も特番を組み、選挙の大勢や候補者の当落をリアルタイムで伝えていく。テレビ東京は、こうしたいわゆる“選挙特番”において、ジャーナリストの池上彰氏をメインキャスターに起用し、民放の中では、視聴者から絶大な支持を得ている。今回も池上氏をメインキャスターに起用し、政治家との生中継や候補者の面白プロフィール紹介など独自の選挙特番を作成するとのこと。今回で4度目となる池上氏とテレビ東京の選挙特番について、選挙戦の公示にあわせて、記者会見が行われた。会見の様子を一部お伝えする。
家族そろって政治について興味を持っていただきたい
この選挙特番を通じて、親子で、あるいは家族そろって政治について興味を持っていただきたいという思いがそもそもあります。これまでもスタッフと、そのためにどうしたらいいかということを考えてきました。何か政治と言うと難しかったり、遠かったり、政治家ってなんだか偉そうだったり、そんなイメージがありますけれど、実際は政治家も生身の人間ですし、いろんな思いでいろんな政治判断をしているわけですね。
そういう人間味のようなところも含めて、みなさんに見ていただきたいなと。だけれども、政治家というのは、やっぱり私たちの税金で生活しているというか、私たちの税金をつかっているわけですから、当然国民への責任というのもあるわけですね。政策というところで責任を問われる。その時、どのような責任を果たそうとしているのかということを、それを問いたいという思いがあります。
先程プロデューサーの説明の中に、「面白い」という発言がでましたが、選挙特番で「面白い」という言葉がでるところが不思議な番組なんですが、エンターテインメントではなくて、あえていうならば知的エンターテインメントとでも言いますか、「面白くてためになる」。そういう番組が作れればいいなと、みんなで話しているところです。
この春ごろから「秋には解散総選挙がありそうだよ」と
―一部報道によると、先日自民党から在京テレビキー局の報道局長、編成局長宛に「公平中立な報道を求める要請書」が出たということですが、これを受けて池上さんにテレビ東京から何か指示がありましたか?また、こうした要求についてどのようにお考えですか?
まったくありません。何にもありません。そして、テレビ東京の高橋社長が記者会見で答えてますよね。「何があろうと、これまでどおりのことをやっていくんだ」と。その通りだと思います。
―こうした要求がでることについては
そうですね。言われなくても中立公正をやっているはずですし、少なくとも放送局はね。新聞は自由ですけど、テレビとラジオは公共の電波を使ってる以上、そういう要請があろうがなかろうが、中立公正な立場でやらなければいけない。放送法で定められているわけですから、それをやるだけのことだよと思っています。
―最初に池上さんが「解散」を聞いたときの印象は?
この解散総選挙に関しては、この春ごろからテレビ東京の人たちに「秋にはありそうだよ」と。「早ければ10月かもしれないよ」と言っていました。そのために「この日曜日空けとくからね」とまで言っていた日があったんです。結局その日はなかったんですけど、空いているんだからということで別の仕事をテレビ局でやらされたんですよ(笑)
―「池上無双」などと呼ばれて選挙特番の中では、民放としては絶大な人気を誇っているわけだが、それをどのようにうけとめているのか。
記者として聞かなきゃいけないことを聞いている。また、テレビの前の視聴者が「きっと知りたいだろうな」と思っていることを代弁しているに過ぎないと私は思っているんですね。本来記者なんですから、ジャーナリストなんですから、聞くべきことを聞く。それを聞いただけのことだと思っています。そのスタンスはずっと持ち続けなければいけないと思っていますし、その私のスタンスをテレビ東京のスタッフ、あるいは経営陣を含めて皆さんが支えてくださっている。それによって成り立っているんだなぁ、そういう意味ではいつも感謝しています。
争点は、それぞれのメディアが打ち出すべき
―池上さんの考える今回の選挙の争点は?難しいですよね。それこそこれから考えていかなきゃいけない。安倍総理は「アベノミクスが問われている」というわけですよね。総理大臣としては、総理大臣としての設定がありますよね。それもそれぞれのメディアがその通り伝えるのか、それぞれのメディアにおいて、いや争点は違うんじゃないかということを考えていくのかと言うことでいえば、それぞれのメディアの私的な編集権というのがあるわけですから、それぞれが争点というのを打ち出していくべきものだと思うんですね。
そういう意味でいうと、まだよくわからないんですね。要するに「アベノミクスが争点です」というのは安倍さんがおっしゃっていることであって、それを各メディアが「そのとおり」と言えるかどうかということも含めて、これからじっくり考えていきたいと思います。
―何度も聞かれていると思うが、ジャーナリストが出馬する例と言うのは過去にもあったが、将来的に出馬する可能性は?
まだ聞かれるのかと(笑)。ありません、ありません、絶対ありえません。過去にも「絶対ありません」といって出た人がいるものですから、「300%ありません」と言って出た人がいるものですから、「絶対ないよ」と言っても信じてもらえないので、過去にやったんですけど、絶対選挙に出ることはありませんという今の私の発言をきちんと記録にとっておいて、もし池上が出るようなことがあれば、「あの時こういってたよね、嘘をついたよね」と指摘する、批判することができるわけですね。これが皆さん方に私がお渡しできる担保だと思います。
もし、私が本当に出るようなことがあったら是非今日のこの発言を担保に批判をしていただければと思ってます。ジャーナリストの中でも選挙に出る方はいますし、それは個人の自由ですから言いませんけれども、個人の考え方としては、ジャーナリストはあくまでジャーナリストとしてきちんと何が起きているのかを伝えるべきであって、当事者であってはいけないんだと思っているんですね。それがお答えになります。
―他局も様々な方をメインキャスターを起用して選挙特番を行うわけだが、そういった方たちをどのように意識しているのか。また、エール送るとか。
そういう他局のことをまったく意識しないのが、テレビ東京のいいところ。過去の様々な番組づくりも含めて全く独自の道を行く。それが支持を得ているんだろうと思うんですね。そういう意味では一切意識はしないというのはあります。
でもその一方で、同じ時間帯にそれぞれがやるってことは客観的にみればライバルになるわけですよね。お互い視聴者のため、あるいは日本の政治のために頑張りましょうと。エールを送るというと上から目線っぽくていやなんですけど。お互い政治のこと、選挙のことを皆さんに伝えたいという仕事においては全く同じですから、切磋琢磨して頑張りましょうということだと思います。
―毎回、若者の投票率が低いことが問題視されるが、その点については?
特に若い人にしてみると、例えば年金の問題にしても医療の問題にしても、なんかこう高齢者を重視した政治、若者のことをちっとも考えてくれないんじゃないかという不満を持っている方が大勢いると思うんですね。だから、政治に期待できないという方もいると思うんですが、これ話簡単なんですね。若い人が選挙に行かないからですよね。高齢者の方はせっせと選挙に行くわけですよ。
政治家もやっぱり人間ですから、自分に投票に来てくれる人、自分に入れてくれるかもしれない人に一生懸命つくすわけですよね。だから、政治がおかしいよねっていう文句を言っていないで、若い人がどんどんどんどん投票に行くようになれば、政治家たちは若い人を恐れるようになるんですね。恐れるようになれば、若い人のために何かをしようかということになってくるんですよ。だから、投票に行った方がいいんじゃないかなというのが、私の考え方になります。
―池上さんからのインタビューを辞退された政治家もいるようだが、そういう政治家について何か言いたいことは?
辞退した方がいるかどうかわからないですね。お約束をしていたのに、突然いなくなってしまった人はいましたし、スケジュールが合わなくて私のインタビューに応じていただくことが出来なかった方はいますが、辞退したのか逃げたのかというのは、そういう証拠があるわけではないので、私としては、そんなことは言えないですね。そういう方がいたかもしれないけど、こちらとしておかしいと言えるだけの証拠を持っていない以上、勝手な批判はできませんよね。