2色ライトで歩道も車道もOK!? 「電動キックボード規制緩和」方向性が見えてきた!

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電動キックボードの「新たな姿」とは

 電動キックボードの規制緩和に向けた具体的な動きが見えてきました。

 道路交通法改正案について2022年3月4日、閣議決定されました。これに伴い、警察庁は2022年1月に開会した現在の通常国会に同改正案を提出して法案の成立を目指します。

【画像】電動キックボード「新スペック」! 国の保安基準骨子案を見る(16枚)

 今回の改正案の中には、電動キックボード使用の際の免許不要やヘルメット着用は義務ではなく推奨などについて規定。年齢制限については、16歳以上となるようです。

 2024年夏までに施行される見込み、との報道があります。

性能調査の対象となった電動キックボードの一例(画像:国土交通省)

 道交法改正に伴い、電動キックボードの技術的な要件などを規定する道路運送車両法に関する議論も進んでいます。

 具体的には、国土交通省が2021年10月13日から有識者会議の「新たなモビリティ安全対策ワーキンググループ」を始めています。

 第1回(10月13日)で論点整理、第2回(12月2日)で関係者ヒアリングなど、第3回(2022年2月28日)で制度・基準骨子案の検討による車両安全対策検討会への中間報告を実施。そして3月頃に開催予定の車両安全対策検討会で、保安基準や型式認定制度の骨子を審議するという流れです。

 つまり、直近の第3回での議論が、その後の若干の修正はあるにせよ、大筋では電動キックボードの新たなる姿を示すことになったといえるでしょう。

「新たなモビリティ安全対策ワーキンググループ」の第3回は、それまでの委員の意見を踏まえて、国交省の事務局側が案を提示しています。

 主な項目では、最高速度は15〜20km/h。寸法は普通自転車相当(長さ190cm×幅60cm)。動力は電動に限る。定格出力は600w以下。乗員は1名などです。

 重量については上限を設けないという案が示されています。これは、航続距離を伸ばすためにバッテリーが大きくなった際、重量に上限があると車体側を過度に軽量化して車体強度などの安全が損なわれる可能性があるためです。

 制動性能については独立した操作装置を有し、独立して作用する2系統を有すること、またこのうち1系統は停止状態に保持できるもの、という案を示しています。つまり、1系統は回生ブレーキで、もう1系統は油圧などを使う通常のブレーキを想定しているといえます。

 制動距離は、最高速度から全てのブレーキで作動した場合に停止まで5m以内。また、ひとつの制動装置で作動した場合は11.5m以内という案です。

歩道も車道もOKにする「識別点滅灯火」とは

 また、注目されるのは識別点滅灯火の保安基準です。

 道交法改正では、6km/h以下で走行する場合、現行の電動車いすなどと同じ歩行者扱いとする案があるため、歩道通行車モードと、車道を通行する小型低速車モードの切り替えを想定しています。

 走行モードが他人から見ても分かるよう、案では、歩道通行車モードだと緑色、小型低速車モードだと水色の識別点滅灯火が一定周期で点滅する装置の装着が義務化されます。

電動キックボードの識別点滅灯火(案)(画像:国土交通省)

 スピードリミッターについては、下り坂での加速も考慮して、最高15〜20km/hとします。

 そのほかには、電動キックボードの車輪が小さいことで、段差の乗り越えでの性能試験もおこなうことを想定しています。

 走行安定性の保安基準・試験法は、くぼみ・傾斜出口、段差(垂直)、段差(カーブ)、斜面の4項目で、最高速度と8km/hの2つの速度で実施します。

 バッテリーは、UN規則、EN規格、航空・船舶の輸送規格、PSEマーク(電気用品安全法に基づく表示)など、国内法令などに規定される基準・規格に適合するものとします。

 そして、型式認定も実施する予定です。

 電動車いすなど、歩道通行が可能な乗り物と原動機付き自転車の中間として、小型低速車という考え方を用いる予定ですが、小型低速車についても原動機付き自転車と同様に、現行の地方運輸局による型式認定を受けることを義務化するという案です。

 このように、道路運送車両法のおいても、電動キックボードに関するさまざまな規制緩和が実施される可能性が高まってきました。

 こうなってくると、すでに販売されている電動キックボードと、新たに規定される小型低速車に属する電動キックボードとの違いについても、ユーザーに向けた丁寧な説明が必要になると思います。

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 電動キックボードをめぐる事情を理解するため、筆者(桃田健史)も実際に購入して日常的に使用するようになりました。

 役場に書類を提出して原動機付き自転車のナンバーの交付を受け、保険会社で自賠責保険と任意保険に加入し、そしてヘルメットを着用して電動キックボードのある生活を始めています。

 今後、小型低速車としての電動キックボードがどのように周知され、そして普及していくのか、さまざまな視点から見守っていきたいと思います。