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カメラや写真に向かう姿勢というのは、10人いたら10人それぞれに違うと思うのだけれど、私にとって写真を撮る行為とは、自分の心象風景と現実との接点を瞬間的に切り取る行為みたいに思っているところがあります。基本的にはスナップ写真ばかりですが、撮影は日々を記録する「日記」というよりも、ちょっと「詩」を書くような時間に似ているというか。

そういう人間がSONYのα7Cのようなカメラを手にしたらどうなるか、というのをこの2週間ほど体験させていただきました! 人気のα7 IIIとほとんど変わらないスペックで、フルサイズのカメラなのに、見た目はめちゃくちゃコンパクト。小さめのレンズをつければスナップシューターにもってこいだし、望遠レンズを付けてもさほどバランス悪くならずに応えてくれる。自分が日常的に見るもの、感じられるものを、ひとまわりもふたまわりも大きく広げてくれそうな存在です。

実は私、一眼レフカメラのデビューはソニーの入門機でした。かれこれ10年ほど前。しかし、重さに負けて手放し、その後はフルサイズならRX1R、あとはRX100M2やM7などの“コンデジ”を所有したりして、軽さ重視で動いてきました。なので、α7Cという小さなフルサイズのカメラが発売されると知った2020年の秋、軽くショックを受けた私は、銀座のソニーのお店に発売前チェックに出かけたりしてました。

でも……その時の懐事情で買えなかったんですよ(涙)。そうこうしているうちにAPS-CセンサーのFUJIFILMのXシリーズにハマっていってしまったというお話は、こちらの記事でも書いた通り。最近はオールドレンズや、ちょっと頼りないヴィンテージ・カメラなどでも遊んでいます。

さて、そんな流れのなかで、今私の手元にやってきたα7c。あれこれを経て手にしてみたら、正直思ってしまった。「やっぱりよく写るカメラは、正義だ」と。カリッとシャキッとクールに決まる。日本の技術の粋が、小さい筐体にぎゅぎゅっと詰めこまれたすごいヤツ。まったく危なげないシャッターフィーリングで、「もっと切れ、もっと切れ」とカメラが言ってくる。大丈夫だから、行けるから、と。

そうそう、シャッターの回数って、みなさんどうなんでしょう。自分は多いと思いますか?少ないと思いますか? 私は多分少ない方だと思う。デジタルなんだから、思う存分バンバン撮ればいいものを、同じ対象のスナップならせいぜい撮って2枚。フィルムカメラをやるようになってからは、息を殺して渾身の一枚を撮るみたいなクセ(?)までついて、ますますシャッターを切らないタイプになっていたかも。

それがね、変えられてしまうんです。α7Cだと。私にしてはたくさんシャッターを押しました。白いご飯が進むみたいに、どんどん押してしまう。

今回お借りしたレンズは単焦点2本。広角のFE 24mm F2.8 G(ページトップの写真)と、明るく撮れるFE35mm F1.8です。両方試してみて、自分はあまり広角の扱いに慣れていないことを知りました。どうしてもにじり寄りたくなってしまう(笑)。真冬という寒い季節柄、あまり綺麗な風景もないからか。それでも上野公園へと持ち出して、広々とした場所で撮ってみました。たくさんのスズメたちの写真はクロップしてます。広げてもやっぱりフルサイズ、いい感じです。

35mmくらいが、やっぱりいいみたい。そして日中は忙しいと、夜しかスナップできないことも多いから、明るく撮れる F1.8はとてもいい。24mmのレンズの1.5倍くらい大きいけれど、なにせα7cのボディが小さいから、持ち出すことになんの抵抗感もない。それより、心地よい明るさと画角で撮れる喜びが勝る。暗くても本当に綺麗に撮れるので、夜の渋谷で普段はやらないポートレートにも挑戦。大好きなミュージシャンであり友人の菅谷詩織さんの街中撮影に同行させてもらい、私も撮らせてもらいました。特別な機材は使わなくてもこの写り、楽しくなります。赤い提灯をボカして入れたいからここ立って〜とお願いしたり。

作・編曲家、ピアニスト、鍵盤ハーモニカ奏者の菅谷詩織さん。アルバム『Shade』がApple MusicやSpotifyの公式プレイリスト楽曲に選ばれ世界中で大好評♪

このレンズはとにかく家の中でもよく撮れる。テーブルの上に出しっぱなしにしておいて、ちょっと気が向いたら猫を撮る。親バカですが、こんなに可愛く撮れたことはない。なぜなんだ。自分の猫がこれだけ可愛く撮れるというその一点だけで、買いじゃないのか。理由としては十分だ。

すっきりした見た目がけっこう良い。FE 35mm F1.8のレンズ。

ところで、自前レンズも付けてみました。ときどき取材仕事で記録写真も頼まれるので、中古で買ったα7SIIがあるんですが、そこにタムロンの28-200mm F2.8-5.6のズームレンズをつけっぱなしにしています。これをα7Cに付けて、いそいそと野鳥観察に行きました。

200mmまで伸ばしてもやや遠い鳥さんたちですが、フルサイズなので、自分で「いい感じ」と思えるギリギリのところまでクロップして楽しめます。公園のアイドル カワセミのふくふくしたお腹のオレンジ、陽に干してる(?)ブルーな背中が可愛いです。ムダに眼光鋭いカモも、佇んでるアオサギも、会えてうれしい気持ちになるのはカメラのおかげ。

タムロン28-200mm F2.8-5.6のズームレンズを付けたところ。相性バッチリとは言えないけれど、使い勝手に問題はない。

都内なのに、ちょっとバイクで走れば、こういう自然と触れ合える。バイクといったって、私の愛車はリトルカブ。ブロロロロガシャコンっ!とたいそうな音を立てて走るバイクは、やっぱり昭和チックな乗り物です。ここで取り出したるは、古いレンズです。フィルムカメラのコンタックスG1と一緒に買った、Planar 45mm F2のレンズ。どうしてもα7Cで試してみたくて、マウントアダプターを使って装着してみました。

令和のカメラに昭和のレンズ。これほんと素晴らしい。なんとも言えないエモーショナルな写真が撮れました。Planarらしい、柔らかくも解像度のある写り、フレアやゴーストも適度に入ったりしながらも、現代カメラがしっかりと描写してくれるこの感じ。新鮮です!愛車の写りを見てキュンとなる、究極の自己満足タイムを過ごせます(笑)。

コンパクトにして十二分な性能のα7Cは、まるで小さな秘密兵器のよう。見るからに大きくてハイスペックなカメラのカッコよさ気持ちよさもあるけれど、「へへへ実はやるんだぜ」みたいなこういうカメラ、やっぱり好きだなぁ。

う〜ん エモい!
古いレンズで写すと、令和の新宿もどこか昭和っぽいテイストに。
デザイン的にはこのPlanar 45mm F2のレンズとの相性がとてもよく感じた。マウントアダプターはK&F Concept KF-CGE(コンタックスGマウントレンズ → ソニーEマウント変換)。