大人も子どももなぜかワクワクする屋根裏部屋。天井の低さや、部屋の狭さを逆手にとり、自分だけの楽しい空間を実現できます。「新築だけでなく、リノベーションでもつくれますよ。昔ながらの切妻屋根の家なら、大きな屋根裏部屋ができます」。そう語るのは、一級建築士の守谷昌紀さん。自身が手がけた5つの事例を紹介してもらいます。

事例1. 遊び放題!リノベで屋根裏に楽しい子ども部屋が誕生

1つ目の事例は、住宅密集地に建つ4軒長屋。中央2軒をフルリノベーションした、子ども部屋としての屋根裏部屋です。

 

特徴は、なんといっても階段とボルダリング壁の2方向から、屋根裏部屋へ行けること。

ボルダリングのホールド(つかむところ)は、カラフルなものが採用されがちですが、部屋の雰囲気をそこなわないよう、ウォームグレーとしました。

 

 

LDKとスキップフロアになっており、高低差が小さいのもポイントです。

 

切妻屋根なので、天井の一部に低いところがでてきます。屋根勾配に配慮しながら、階段やハシゴでのアクセスを検討しないと、頭をぶつけてしまいかねません。ここは要注意。

 

天井の高いところは、トランポリンで遊んでも問題ありません。

 

天井の低いところには、机を置いて座って使うようにすれば、屋根裏部屋の全体のスペースをうまく活用できます。「屋根裏部屋が散らかるぶん、リビングにオモチャが広がらなくてうれしい」と建主からも好評。

子どもは友達が来ても遊び放題。親は小言を言わずにすみます。

 

LDKとつながっていますが、子どもが大好きな隠れ家的な雰囲気も残しました。子ども部屋としての屋根裏部屋は、「遠すぎず、近すぎず」の距離感が大切なのです。

 

事例2. わずか1畳、窓から空や月をめでる北欧テイストの屋根裏部屋

こちらも、市街地に建つ4軒長屋をフルリノベーションしました。南面する屋根裏部屋の窓が、左上に見えています。

 

建主は北欧を訪れるのが大好きで、北欧テイストのインテリアになりました。

 

2階の中央から、オリジナルのハシゴで上ると、1畳ほどの小部屋があります。

 

北欧では長く寒い冬を家の中で楽しく過ごせるよう、カラフルなインテリアを好む傾向にあります。テーマカラーを思いきって青にしました。

 

こちらは、デンマークの建築家アルネ・ヤコブセンがデザインした、ドロップというチェア。ここに座ると、カウンターの上の窓が目に入ります。

 

背面には、愛読書をディスプレイするニッチもつくりました。

 

窓から青空や月を見ながら、読書を楽しみます。大人が気分転換をする癒やしの屋根裏部屋です。

事例3. 夜はまるでプラネタリウム!山手から海を眺める屋根裏部屋

3つ目もリノベーションの事例です。

 

LDKからハシゴを上ると、3畳ほどの空間があります。

 

キッチンの上にあり、ここならリビングダイニングの開放感を損ないません。

 

左右に換気用の窓を設け、夏はここから涼しい風が流れ込んできます。中央は眺望を楽しめるよう1枚ガラスにしました。

 

窓からは神戸の市街地、そしてその先に広がる海まで見下ろせます。

 

夜は自分だけのプラネタリウム。皆既月食も観察できました。屋根裏部屋はいちばん高いところにあるので、眺望を十分に楽しみたいところです。

 

事例4. ここはサッカーミュージアム?趣味を楽しむ屋根裏部屋

ここからは新築の場合を紹介します。

「リヴァプールは夢、レイソルは生活」は建主のことば。サッカーを観るのも、プレイするのも大好きな家族が、応援するチームの地元に建てた家の事例です。

 

リヴァプールとは、イングランド・プレミアムリーグの名門チーム。そのホームスタジアムの額が、玄関に飾られています。

リバプールを訪れ「この街の家のような外観にしたい」思うように。この要望を受け、家のデザインのモチーフにしました。

 

2階には20畳のLDKが。屋根裏部屋へは、リビング側からアクセスします。

 

そこは趣味を楽しむ6畳ほどの小部屋です。

天井高さが1.4mまでで、直下の床面積の1/2以下なら、階数にも延床面積にも算定しなくてもよいという法律があります。敷地面積が限られる都心部においては、家を広く使う有効な方法です。

 

ハシゴは可動式が必須で、構造上の制約もあるので、そこは設計士に相談するほうがよいでしょう。

 

LDKと広く面したこのケースは、南からの日が差しこみ明るさも十分です。

 

屋根裏部屋に窓があれば、LDKの温かい空気を自然に排出することもできます。存在価値が倍になるので、知識として覚えておきたいところ。

しかし窓の大きさに制限を設けている行政機関もあり、事前の確認が大切な部分です。

 

高い位置にあるので、転落防止用の柵は慎重に設計しなければなりません。機能、デザイン、コストが共存できる一点を探すのが設計といえるのです。

 

好きなサッカーチームのお宝グッズが飾られたサッカーミュージアムとしての屋根裏部屋でした。趣味を楽しむ部屋があると日常がずっと楽しくなるものです。

事例5. 大人と子どもが取り合いになる10畳の屋根裏部屋

最後も市街地に建つ新築のケースです。北側道路に面していちばん高い位置に見えるのが、屋根裏部屋の窓です。

 

道路と反対側、2階の南端に16畳のLDKをプランしました。

 

都心部では敷地が限られるので、天井高をとってLDKを縦に大きな空間としました。天井高さは4mほどありますが、一体となった屋根裏部屋が奥に見えています。

 

階数や延べ床面積に算入されない条件を満たしているので、これだけ大きいとよりお得感があります。

 

10畳ほどある、かなり大きな屋根裏部屋です。

 

友達が遊びにきたときは、みな一目散にこの部屋へ。足をブラブラできるよう手すりをデザインしました。

 

子どもは本を読んだり、大人はヨガをしたりと、いろいろな使い方ができます。エアコンがあるとさらに便利。

 

大人もこの小部屋が大好きです。上りやすいよう、ハシゴは専用にデザインしました。ダイニングテーブルの脚と合せて黒にしましたが、インテリアとしてもしっかり統一感を出したいところ。

 

子どもはこの特等席で、朝日を浴びるのが大好きです。おウチ時間を大人も子どもも楽しめるのが屋根裏部屋なのです。

 

子ども部屋、趣味の部屋…と用途はいろいろ。法律のチェックも忘れずに!

リノベーションにおいての屋根裏部屋は、子ども部屋、癒やしの空間と、使い方、大きさともいろいろなバリエーションがあります。

新築での屋根裏部屋は、法律を満たせば延床面積に算入しなくてもよい、プラスアルファの空間をつくることができます。天井の高さ、平面的な大きさに加え、窓の大きさにも決まりがあることも注意しておきたい点です。

広々とした空間は気持ちのよいものですが、天井が斜めになっていたり、狭い小部屋だったりするからこそ、楽しくおしゃれな空間とすることも可能です。

お得感のある、ワクワク楽しい屋根裏部屋を、家づくりに取り入れてみてはいかがでしょうか。