70代の母が介護施設へ。布団や衣類、「実家の片づけ」は困難を極めた
年齢を重ねていく両親を見て、また家族の病気や引っ越しなどをきっかけに「実家の片づけ」が気になっている方も多いのでは。ここでは実家が空き家になったことで片づけを始めたライフオーガナイザーの尾花美奈子さんのお話を伺いました。
いつでも起こりうる実家の片づけ。どこになにがあるのかわからない…
「実家の片づけ」や「生前整理」という言葉がよく聞かれるようになりました。自分の親に万一のことがあったときの実家の片づけに対して不安を感じたり、片づいていない危険性を心配したり、多くの方がそういう思いをされているのではないでしょうか。
そこで今回は、私自身が実家の片づけをした経験がみなさんの参考になればと思います。
●きっかけは母の入院。介護施設に入り実家が空き家に
きっかけは母の入院でした。既に父は他界しており、ホームヘルパーさんの助けを借りつつひとり暮らしをしていた母。去年10月下旬の定期健診で病気が見つかって入院することになり、その他の身体的問題も考慮して退院後は医療体制の整った介護施設への入所を医師から勧められました。
「勧められた」と言ってももうその選択しかないような内容で、その話し合いから入院まではわずか3日間。母は家族と長年暮らした家をいきなり去らねばならない現実を突きつけられ泣いておりました。娘の私ですら受け入れがたいことだったので本人は尚更です。
●実家の片づけ。タイムリミットは1か月
その3日間でできたことは入院準備のみ。退院後に施設で暮らすのに必要な物の準備は私に託されました。入所予定は12月に入ってすぐ。約1か月でやらなければなりません。
施設の部屋はミニキッチンとバス・トイレがついたワンルームの個室。高齢者のワンルーム暮らしとは言え、衣類や日用消耗品、寝具、カーテン、小さいサイズの洗濯機や冷蔵庫など、若い人がひとり暮らしを始めるときと同じようにそろえる必要がありました。
調理器具は必要ないし衣類や趣味のものも最低限になる分、ラクに準備ができるかと思ったらそれは大間違いでした。
●「なにがあるのか本人以外わからない」に阻まれる
いちばん大変に感じたのが、準備するものが自分のものではなく母ものだったからです。「衣類はあのタンスに入っている」「寝具はあの引出しの中」と大体の場所はわかっていたけれど、その場所をあけて見たときにそこにあるものが具体的になんなのかわからなかったのです。
たとえば、肌着も長袖なのか半袖なのか畳んでいるからひと目ではわからない。同様に靴下も足首丈なのかふくらはぎ丈なのかわからない。広げて確認できた後はまた畳み直さないといけない。
寝具も敷布団カバーなのか掛布団カバーなのかわからず、とくにカバー類は何枚もあったのでどれを持って行くのか私では決めかねてしまい、入院中の母の携帯電話に電話をかけて聞きました。
そのときも、母の携帯電話はガラケーだったのでオンラインでの会話ができず、写真を撮って送っても写真を見ながら通話ができないので結局言葉だけでのやりとりになり、母も「そんなものあった?」「そこに入ってない?」と記憶があやふやになる場面もあって苦労しました。本人が準備をするならこういったことはなかったわけです。
●自分だけがわかっていてもだめ。家族シェアが必要
母は整理整頓が得意な方ですが、それでもラベリングがなかったのでほかの人にはわかりづらい状態でした。片づいていない家であったなら尚更ではないでしょうか。
部屋にものがあふれていたり、あちこちに散らばっているといったことがないように整えることはもちろんですが、ラベリングをしたり家族に説明しておくなどした方がいいと母の荷物の準備をしていて痛感しました。
また、同時進行で不用品をまとめたり片づけもしていたのですが、母が片づけておいてくれて助かったこと、片づけておいてくれなくて困ったことも今後まとめていきたいと思います。