国立大医学部生のアンケートで判明。リビング学習より集中できるスペースのつくり方
リビング学習が学力アップに効果ある。よく聞く話ですが、実際のところどうなのでしょう。一級建築士のしかまのりこさんは、学力の高い国立大医学部生男女56人を対象に、独自にアンケートを実施。結果、「じつはリビングは学習する場所には不向き。かといって子ども部屋を用意すればいいという問題でもない」ということに気づきました。そして、子どもが落ち着いて勉強に集中できる環境づくりには、ずばり「学習ルーム」という結論に。そのつくり方を語ります。
国立大医学部生男女56人の半数以上が「リビング学習」を経験だが…
「勉強のできる子どもにしたい」という思いから、個室に学習机とベッドを設置して、子ども部屋として与える家庭が一般的です。しかし、学力の高い国立大医学部生男女56人に筆者が行ったアンケート結果では、子ども部屋で勉強していた学生はそれほど多くありません。
「小学生のときは、どこで勉強していましたか?」という質問に対して、中学受験をした子どもも含め54%が「リビングダイニング」と回答。リビングダイニングで勉強する「リビング学習」が過半数になっています。
その理由としては「家族がそばにいるから」「寂しくないから」というものが多く、小学生のうちは勉強に取り組む際も、家族の温もりが大切なようです。
しかし一方で「テレビの音が気になった」「家族の会話で勉強に集中できなかった」という意見も多く、とくに「音」に関して、リビング学習にはデメリットもあります。
中学生では、リビングや子ども部屋での勉強に限界を感じる
では、中学生での勉強の様子を見ていきましょう。「中学生のときはどこで勉強していましたか?」という質問に対して、46%が「子ども部屋」、25%が「リビングダイニング」と回答。しかし、その内訳をみると「中学受験をしたため、高校受験をしなかった」学生が、大半を占めていました。
一方、「高校受験をした」学生は「塾や図書館・自習室」などの外部空間(29%)と答えており、高校受験で結果を出した学生は、「リビング学習」や「子ども部屋」での勉強に、限界を感じていたことがうかがえます。
なぜ、リビングや子ども部屋では、勉強に集中できないのか?
では、将来の進路を決める「大学受験」をひかえた高校生での勉強は、どうだったのでしょう。「高校生のときはどこで勉強していましたか?」という質問に対して、64%の学生が「塾や図書館・自習室」などの外部空間と回答。そして、「子ども部屋」が32%と続きます。
また「リビングダイニング」は4%と減り、大学受験という最難関の時期に「リビング学習」は、ほぼ選択されていませんでした。
また「あなたがいちばん集中して勉強できた場所をひとつだけ選んでください」という質問には、78%の学生が「塾や図書館・自習室」などの外部空間をあげています。
その理由として、「周りが勉強しているので」「誘惑がないから」「集中できるから」と回答しています。
このように、勉強に集中できるという点では「塾や図書館・自習室」などの外部空間が「子ども部屋」や「リビング学習」を大きく引き離し、すべての時期で支持されているのです。
そして、子ども部屋が勉強空間として支持されない理由としては、「子ども部屋は、趣味のものなどを置いているため、誘惑が多く集中できない」「疲れたら、ついベッドで寝てしまう」などが上位に。子ども部屋に求められる「勉強する機能」と「就寝やリラックスする機能」の両立が、じつは難しいことが要因になっています。
つまり集中して勉強してもらうためには、「子どもが集中できる勉強空間=学習ルーム」を、子ども部屋とは別につくることが必要になります。そして、この「学習ルーム」ですが、じつは部屋割りの工夫で簡単につくることができます。
では、どのように「学習ルーム」をつくればよいのか。一般的な3LDKマンションの間取りを使ってみていきましょう。
小学生の時期は、リビングダイニング隣に「学習ルーム」を!
先ほどのアンケート結果にもありましたが、小学生の期間は、中学受験の有無にかかわらず「リビング学習」が支持されています。
しかし、リビングダイニングは家族が集まる場所であるため、ほかの家族がTVを観たり、会話など団らんしたりすることも。勉強に集中するためには、そういった「音」がジャマになってきます。
そこで、リビングダイニングの一角に学習机を置いたり、ダイニングテーブルを学習デスクとして使ったりする「リビング学習」ではなく、リビングダイニングに隣接する部屋を「子どもが集中できる勉強空間=学習ルーム」として部屋割りします。
こちらはリビングダイニングに並ぶ洋室を「学習ルーム」とした例です。
食事をしたりテレビや会話をして団らんしたりするときは、間仕切り扉を開けておき、オンライン授業や集中して勉強するときは、間仕切り扉を閉めて「学習ルーム」として独立させます。
モデルケースのマンションの玄関に入って、右手にある洋室は、兄弟姉妹で一緒に使う「子ども部屋」として部屋割りします。この「子ども部屋」は、従来の子ども部屋から「勉強をする機能」を独立させ、「学習ルーム」へと移動させたものです。
そして、掃除や片づけなどの運用ルールは、基本的に子どもたちで作成・運用させます。完璧でなくても、ある程度は目をつぶって見守りましょう。
幼い子どもの頃から、ひとつの部屋を兄弟姉妹で使うことで、協調性や思考力・思いやりや、コミュニケーションの力をはぐくむこともできます。
中学生以降は、リビング横から静かな場所に「学習ルーム」を移す
先ほどのアンケート結果にもありましたが、「高校受験」をする中学生や「大学受験」をひかえた高校生には、「塾や図書館・自習室」などの外部空間が「子ども部屋」を差し置いて支持されています。
この外部空間が支持される理由は、「誘惑がなく集中できるから」です。
そこで、先ほど設置した「学習ルーム」を、家族がTVを観たり、会話など団らんしたりするリビングダイニングから切り離した、静かな場所に部屋割りします。
こちらは玄関入った右手の洋室を「学習ルーム」とした例です。リビングダイニングから離れているので、静かな環境で勉強に集中できます。
そして、リビングダイニングに並ぶ洋室を兄弟姉妹で一緒に使う「子ども部屋」として部屋割りします。
食事をしたりテレビを観たり、会話をしたりするときは、間仕切り扉をあけておき、就寝するときは、リビングダイニングとの間仕切り扉を閉めて「子ども部屋」として独立させます。
筆者宅も、当初は一般的な部屋割りである「子ども1人に子ども部屋」を与えていました。しかし、「学習ルーム」を使った部屋割りに変えてから、姉妹は驚くほど仲がよくなり、また学力が大幅に伸び「学年トップ」をとるようになりました。
子どもが勉強に集中できる環境をつくりたいと考えている方は、模様替えや部屋割りの参考にしてください。