初売りといえば…の「福袋」、“売れ残り”を詰めているって本当? その起源は?
デパートなどの商業施設では、年始の初売りで「福袋」を販売するところが多いです。好きな商品を選べないとはいえ、通常よりも安く購入できるため、開店前から行列ができることも珍しくありません。ところで、この福袋は「クリスマス商戦などで売れ残った商品を詰めている」といううわさを聞いたことがありますが、本当でしょうか。経営コンサルタントの大庭真一郎さんに聞きました。
「売れ残り処分」「集客」で一石二鳥
Q.そもそも、日本で福袋が発売されるようになったのはいつごろで、どのような店が始めたのですか。
大庭さん「福袋は江戸時代に、呉服店の『越後屋』(現在の三越)がその年に仕立てた着物の余り生地を袋に詰め、冬用の着物の売り出し時期に合わせて販売したことが始まりといわれています。呉服店の『大丸屋』(現在の大丸)も同様の取り組みを行ったという記録が残されています。その取り組みが全国の呉服店へと広がっていきました。
現在のような形の福袋については正確な記録がないため、いつから販売されるようになったか不明ですが、1970年代には玩具の詰め合わせなど、現在に近い形での福袋が売られていたという記録があります」
Q.福袋の中身が売れ残りの詰め合わせというのは本当なのでしょうか。
大庭さん「そうした福袋もあります。昭和期に本格化した現代の福袋のもともとの目的は売れ残り商品の処分です。しかし、福袋の販売には、集客効果を高めるという意味合いもあります。売れ残り商品は人気のない商品であることが多く、福袋の中身がそのような商品だけで占められていた場合、福袋自体が魅力のない商品となり、集客の効果も発揮されません。
そのため、福袋専用の商品を作り、袋の中に詰めることで、福袋の魅力を向上させる取り組みも行われています」
Q.なぜ、売れ残りの詰め合わせを福袋として販売するようになったのですか。
大庭さん「商品が売れ残った場合、店側は在庫として抱えるか、処分するかの選択を迫られるのですが、在庫として抱える場合、保管コストが発生します。保管コストの発生を嫌って、売り場に陳列し続けた場合も、他の売れる可能性のある商品の販売機会を失ってしまいます。一方、処分する場合も処分コストが発生します。
これらのことを勘案し、売れ残り商品をまとめて安く販売することで店側のコストを削減するとともに、集客にもつなげるという“一石二鳥の効果”を期待して、売れ残りの商品が詰まった福袋の販売が行われているのです」
Q.毎年のように、行列をしてまで購入したい人がいるのはなぜですか。何か仕掛けがあるのですか。
大庭さん「近年では、幾つかの福袋に『当たり』となる商品を詰めたり、福袋でしか手に入らない限定品を袋に詰めて、そのことを事前に消費者に周知したりするなど“お得感”を演出する工夫を店側が行い、集客につなげています。在庫を抱えることによる店側のコストの発生リスクを回避し、集客効果を高めることのメリットが大きいため、今後も福袋の販売に関する工夫が多様化していくものと考えられます」
Q.せっかく、福袋を買ったのに、中身が価格と釣り合っていないように思い、がっかりすることもあります。これは、店側がわざと行っているのでしょうか。
大庭さん「店側が意図的に、価格と釣り合わない商品を福袋に詰めて販売を行うことはありません。先述したように、福袋は、在庫を抱えることによる店側のコストの発生リスクを回避し、集客効果を高める目的で行われるため、福袋自体の販売で、店側が大きくもうけなければならない理由はないからです。
福袋には、中に何が入っているか分からず、欲しかったものが安く手に入っていたときには得をした気分になるが、欲しかったものが入っていないことで損をした気分になることもあるという“くじ引き”のような性質があります。とはいえ、客に対して損をした気分にさせるのは店側のイメージ低下につながるため、それを防ぐためにも、福袋の中身を見せて販売する方法も広がっています」