憧れの存在70年「JALファーストクラス」はどう変遷? 振り返ればわかる“日本の見られ方”
創立70周年を迎えたJALの客室のなかで、最高位グレードを維持し続ける国際線の「ファーストクラス」。これまでどのような歴史があったのでしょうか。さまざまな変わり種が出ているなか、一貫しているポイントもありました。
最初は「ファーストクラス」のみだった?
創立70周年を迎えたJAL(日本航空)の国際線における客室の歴史上、常に最高峰に位置しているのが「ファーストクラス」。これより上位のクラスは設定されていません。
1954(昭和29)年2月2日、JALは36人乗りのプロペラ旅客機、ダグラスDC-6Bを用いて、戦後初の日本の航空会社による国際線定期便である羽田〜ウェーク島(アメリカ)〜ホノルル〜サンフランシスコ線へ就航しました。このときの客室は、ファーストクラスのみの構成でした。その2か月後、現在のエコノミークラスに相当する「ツーリストクラス」が設定され2クラス構成となったのです。
JALの長距離国際線の主力機、ボーイング777-300ER(2021年、乗りものニュース編集部撮影)。
以降、JALの国際線「ファーストクラス」はリッチなサービスを提供する“庶民の憧れの的”として君臨し続けます。
同社が初めて導入したジェット旅客機「ダグラスDC-8」のファーストクラスは、壁に飾られた扇に象徴される装飾や、伝統的な老松紋があしらわれた西陣織のシートカバーなど和テイスト全開な内装。「空の一流ホテル」をテーマとする機内ラウンジも設置されました。
747ではベッド誕生! 近未来席も
1970(昭和45)年に導入された「ジャンボ・ジェット」ことボーイング747では、ファーストクラス40席を設置し、「藤」をモチーフにしたインテリアを採用します。日本庭園の雰囲気を再現したことから、この747は「ガーデン・ジェット」と呼ばれ、各キャビンを担当するCAの着物やメニューにいたるまで、モチーフに合わせて統一されていたといいます。なお、747では2階席にラウンジが設けられました。
JALのダグラスDC-8「FUJI号」のラウンジ(2021年、乗りものニュース編集部撮影)。
1978(昭和53)年には、ボーイング747の2階席ラウンジを寝室へと改修。長さ約185cm寝台を設け、追加料金を支払ったファーストクラス旅客がフルフラットベッドで横たわれる「スカイスリーパー」サービスを開始します。
その後「スカイスリーパー」のサービス自体は廃止となってしまったものの、JALの国際線ファーストクラスの愛称として「スカイスリーパー」の名が残ることに。
そのひとつ、2000年代に導入された「スカイスリーパー ソロ」では、当時“テクノロジー大国”とされた日本のイメージにあわせ近未来的な形状を入れ、日本の豊かな四季を表現すべく、シートカラーを緑としました。またここではすでに、1席1席がフルフラットになることで、旅客が横になって過ごせるようにもなっています。
いまのものはどんな席? JALの歴史で一貫しているポイント
ときは下り2021年現在のJALファーストクラスは、「JAL SUITE」の愛称で、長距離国際線を担当するボーイング777-300ERに搭載されています。デビューは2013(平成25)年で木目調のデザインが特徴です。
「JAL SUITE」では、個人スペースの最大化が図られており、以前のファーストクラスシートから20%スペースを拡大。その広さはシングルベッドと同等で、旅客がつくろいで眠れる「睡眠へのこだわり」が凝らされているといいます。同機の座席開発に携わったJALの商品・サービス企画部の西垣淳太さんは「このシートの寝心地は本当に抜きん出ています」と自信を見せます。
JALの現ファーストクラス「JAL SUITE」(2021年、乗りものニュース編集部撮影)。
また、隣席とのコミュニケーションのとりやすさもポイント。中央席の仕切りは可動式で、会話が容易であるほか、個人モニター下の前の足置き(オットマン)にもうひとり座れるようになっており、席のテーブルを中央に移動させ、1席をつかって2人で食事を取れるようにもなっているとのことです。
こうした長年のJALファーストクラスシートにおいて、一貫しているものもあるとのこと。
「時代時代にあわせて日本の見られ方は変わっています。それを(国際線ファーストクラスシート)に表現しているのがJALらしさではないかと思います。『JAL SUITE』では、ボタンを配したコントローラーを見えないところに設置するなど細かいところ技工にこだわっているほか、木目をあしらうことで日本らしさを表現しています」
西垣さんは、このように答えました。