「富士そば」労組幹部2人の懲戒解雇は無効、労働審判 委員長「会社は正直に向き合って」
立ち食いそばチェーン「名代富士そば」を運営するダイタングループ(東京都渋谷区)の労働組合の幹部2人が懲戒解雇されたのは不当だとして、解雇無効などを求めた労働審判で、東京地裁の労働審判委員会は9月2日、解雇無効と未払い賃金1人あたり318万円の支払いを命じた。
会社側が審判に異議を申し立てたため、今後民事訴訟に移行する。
懲戒解雇されたのは、「富士そば労働組合」の安部茂人委員長と書記長。2人はグループ会社の一つである「ダイタンディッシュ」の社員だった。
9月9日に都内で会見を開いた安部委員長は「会社側は様々なパワハラや不当労働行為を激しい勢いでおこなっている。1日も早く復職させていただき、いい会社づくりに向けて努力したい。会社は正直に自分の心と向き合って、労働審判無効の審判を受け入れてほしい」と訴えた。
●代理人「組合壊滅の意図がある」
ユニオンによると、2人が懲戒解雇されたのは1月29日付。会社側は2人の懲戒解雇について、残業代請求労働審判に提出した資料の改ざん・捏造、勤務管理システムの勤怠データ改ざんなどが理由と通知した。
これに対し、ユニオンは「会社側は全く証拠を示しておらず、そのような事実は全くない」と真っ向から否定。労働審判でも会社側の主張は懲戒解雇の理由として認められなかった。
また、会社側は第2回労働審判が開かれる9月2日に「2020年11月に開いた記者会見が名誉毀損に当たる」などの理由で、1カ月後の10月2日付で2人に普通解雇を予告した。
代理人の棗一郎弁護士は「組合トップ2人を狙い撃ちで解雇して排除するというのは、組合壊滅の意図がある」と指摘。大久保修一弁護士は「会社が第2回労働審判の当日に新たな争点を取り上げてきたことは、労働審判自体の意味をなくすもので不当だ」と批判した。
安部委員長は「コロナのリスクを負ってお店を守っていただいている部下や原告として裁判で戦っている部下もたくさんいます。皆さんに対していい会社を作ることが、僕を働かせてくれた恩返しだと思っております。何が何でも復職したいです」と話した。
●会社側は
会社側は取材に「労働審判において解雇無効の判断がされたことは大変残念に思っておりますが、主張のうち2人が労働時間に関する証拠をねつ造したという部分については概ね認められており、最低限の成果は得られたものと理解しています。すでに異議申し立ては行っておりますので、訴訟移行後は主としてその他の点について丁寧な主張立証に努めて参りたいと思います」とコメント。
予備的解雇については「今回の労働審判ではこの予備的解雇の有効性については残念ながら判断の対象とされませんでしたが、訴訟移行後は当然その有効性についても判断されるものですので、この点についても丁寧な主張立証に努めて参りたいと思います」としている。