iPhoneで作成したIDやパスワードをWindowsやAndroidと同期させる方法を紹介します(筆者撮影)

数多あるサイトやアプリのIDやパスワードを、1つひとつ覚えておくのは現実的ではない。サイトやアプリによって、最低限求められるIDやパスワードの仕様も異なっているうえに、利用頻度もまちまち。記憶力が相当よくても、忘れてしまうことはあるはずだ。一方で、覚えやすいからといって、同じIDやパスワードを使い回していると、1カ所からでも情報が流出してしまった際に、別のサービスでも被害にあってしまうリスクがある。

そのため、IDやパスワードiPhoneに記憶させてしまうのが手っ取り早く、安全だ。iPhoneには、安全性の高いIDやパスワードを自動的に作成する機能も備わっている。一方で、同じサイトやアプリをパソコンやタブレットでも使いたい場合、複雑すぎるIDやパスワードだと、後で入力する際の作業が大幅に増える。特にパソコンがWindowsだったり、タブレットがAndroidだったりすると、Safariが利用できないのが難点だ。

そんなときに活用したいのが、今回紹介するテクニック。ひと手間かけるだけで、WindowsやAndroidともIDやパスワードを同期させることができるようになり、利便性が大きく上がる。iPhone側で複雑なIDやパスワードを設定しておき、それをアップル製以外のパソコンやタブレットでも使うことが可能になる。結果として、安全性も上がるため、お勧めの裏技だ。その方法を紹介していこう。

IDやパスワードの作成はiPhoneに任せる

IDやパスワードを設定するのは、なかなか難しい。シンプルすぎると、覚えやすい半面、悪意のある第3者が簡単に突破できてしまううえに、そもそもサイトが求める要件を満たさないケースも出てくる。ある程度複雑にしたとしても、同じIDやパスワードを異なるサイトやアプリで使い回すのはリスクが高い。どこか1カ所が攻撃にあい、情報が流出してしまうと、ほかのサービスに簡単にログインされてしまうからだ。


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そこで活用したいのが、iPhoneパスワード作成機能だ。といっても、複雑な設定は不要。サイトやアプリの会員登録画面で、IDやパスワードの欄をタップすると、画面下からポップアップが表示される。ここで、「強力なパスワードを使用」をタップすると、自動的に桁数の多い複雑なパスワードが生成され、iCloudに保存される。


パスワードの作成はiPhoneに任せてしまうのが安全で手っ取り早い(筆者撮影)

パスワードを確認したいときは、「設定」から「パスワード」を開き、Face IDやパスコードなどでロックを解除したあと、登録したサイトを探して確認する。ただし、iPhoneが作成したパスワードは非常に複雑なため、ユーザー自身が暗記するのには適さない。サイトごとに生成されるIDやパスワードは異なるため、iCloudに記憶させておき、自動で呼び出すのが正解だ。

iCloudに保存しておけば、iPhoneだけでなく、iPadやMacからも自動で呼び出すことができる。パスワード入力時には、Face IDなどによる認証が必要になるため、置きっぱなしにしておいたiPhoneやMacを勝手に使われてサイトにログインされる心配も少ない。パスワードは覚えるものという意識を捨て、iPhoneに記憶させておくようにすると安全性がより高くなるはずだ。

パソコンでiCloudに保存したパスワードを入力

便利なiCloudキーチェーンだが、パソコンがWindowsの場合は、そのままでは登録したIDやパスワードを同期することができない。iPhoneの「設定」にある「パスワード」で、文字列を確認することはできるものの、手動で入力するのは非常に面倒だ。特に自動作成したパスワードを1つひとつ打ち込んでいくのはかなり骨の折れる作業で、ミスも起こりやすい。連続で間違えると、サービスによってはアカウントがロックされることもありえるため、十分注意したい。そんなときに便利なのが、「iCloud for Windows」だ。

元々、iCloud上に登録したパスワードは、Windowsで利用できなかったが、2月にグーグルのChromeやマイクロソフトのEdgeといったブラウザーで利用できる拡張機能の「iCloudパスワード」をリリース。Windowsパソコン上のChromeやEdgeにインストールすれば、iCloud上に保存したパスワードを自動入力できるようになった。さらに、8月には「iCloudパスワード」アプリの提供を開始。Windows上で、iPhoneに近い形でパスワードの管理が可能になった。


Edgeに拡張機能を入れて設定するだけで、iCloudキーチェーン上のパスワードが自動で入力できるようになる(筆者撮影)

拡張機能とアプリ、双方のiCloudパスワードをインストールしておけば、Windowsパソコン上でも簡単にiCloudに保存したパスワードを管理できる。保存するパスワードが端末やOSごとに分散してしまうと煩雑さが増し、いざというときにログインできなくなってしまう事態も想定されるため、iCloud側に一元化しておくといいだろう。ちなみに、利用するにはApple IDの2ファクタ認証を有効化しておく必要がある。セキュリティーが強固になるため、これを機にオンにしておくといいだろう。

あとは、iCloud for Windowsを開き、「パスワード」を有効にしてから、EdgeかChrome、どちらか(あるいは両方)の「拡張機能をインストール」をクリックする。ここでは、Edgeにインストールしてみた。インストールが終わると、URLを入力する欄の横にiCloudのボタンが現れる。ログインしたいサイトに行き、ここをクリックするとIDやパスワードが自動で入力される。ブラウザーの初回利用時には、iPhone側に表示された6ケタのコードを入力する必要があった。

パスワードの管理は、iCloud for Windowsと一緒にインストールされた「iCloudパスワード」アプリで行う。こちらの利用には、「Windows Hello」でサインインする必要がある。不要なパスワードを削除したり、パスワードをアップデートしたい場合は、こちらのアプリを利用しよう。ただし、iPhoneに搭載されているパスワード管理機能より、やや簡易なもので、漏洩したパスワードの検出などは利用できない。こうした機能を使いたいときには、iPhoneを利用するといいだろう。

WindowsやChromeのパスワードiPhoneで自動入力

逆に、パソコンのブラウザーをメインで使っている場合は、iCloudキーチェーンを使わないほうが便利。EdgeやChromeに登録したパスワードは、ひと手間かければiPhone側で自動入力することも可能だ。Edgeの場合は「Microsoft Authenticator」、Chromeの場合はiOS版の「Chrome」を利用する。それぞれ、App Storeから無料でダウンロードできるため、まずはインストール。Microsoft AuthenticatorはMicrosoftアカウントで、ChromeはGoogleアカウントでログインしておこう。

次に、iPhone側で自動入力の設定を行う。「設定」から「パスワード」を開き、「パスワードを自動入力」を選択。「パスワードを自動入力」の画面で、自動入力に利用したいアプリを選択する。Edgeに登録したパスワードを使いたいときは「Authenticator」、Chromeのときは「Chrome」にチェックをつけておくといい。なお、iCloudキーチェーン以外に選択できるのは1アプリだけになる。つまり、Microsoft AuthenticatorとChromeは同時に利用はできない。利用頻度の高いほうを選択しておくといいだろう。


「設定」の「パスワード」で「パスワードを自動入力」をタップして、iCloudキーチェーン以外に選択したいパスワード管理アプリを選択する(筆者撮影)

設定が終わったら、EdgeなりChromeなりでパスワードを登録しているサイトに行き、IDやパスワードの入力フォームをタップする。すると、iCloudキーチェーンにパスワードを保存していたときと同様、画面下にパスワードの自動入力を促すポップアップのウィンドウが表示されるため、タップして顔認証を通れば自動的にIDとパスワードが入力される。ウィンドウが出ないときは、パスワード欄にカーソルを合わせてキーボード欄の「パスワード」をタップすると、EdgeやChromeに保存されたパスワード一覧から候補が表示される。

ちなみに、iCloudキーチェーンにパスワードが保存されていない場合は、登録を促すメッセージも表示される。両方にパスワードを残しておく意味はあまりないかもしれないが、万が一EdgeやChromeのパスワードを消してしまったようなときのバックアップと考え、登録しておいてもいい。また、EdgeやChromeにiPhoneで登録したパスワードは保存できないが、iPhone側ではiCloudキーチェーンに登録しておき、先に挙げた、iCloudパスワードを合わせて使えば双方向になる。この方法を使えば、iOS、Android、Windowsと主流なOSをすべてカバーでき、パスワード管理が一気に楽になるはずだ。