借家を退去「270万円」の修繕費用を要求された! 弁護士が教える対処法
大家が払うと聞いていた修繕費270万円を請求されたという人から、とても払えないがどうしたら良いかという相談が寄せられました。
相談者は、先日住んでいた借家を解約を申し出た際、修繕費について不動産屋から「大家さんが全部払うから払わなくていい」と言われたそうです。
ところが、賃貸保証会社からは修繕費用270万円を払うようにと伝えられました。相談者は金額にも納得できず、そもそも270万円を支払うこともできません。このような際、相談者はどうすればいいのでしょうか? 寺田弘晃弁護士に聞きました。
●義務を負う「原状回復」とは?
ーー不動産屋からは「大家さんが支払う」と言われていたそうです。貸借人である相談者は修繕費用を支払わなければいけないのなのでしょうか
賃貸物件を退去する際、貸主側と借主側の間で原状回復義務の範囲が争いとなるケースは多く、かなり身近な法律問題であるため、だれでも直面する可能性があるものだと思います。
賃借人は、原則として建物の原状回復費用を負担する義務があります。
もっとも、原状回復というのは、借りた当時の状態にすることを意味するのではなく、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧することをいいます。
したがって、通常損耗や経年劣化などによる汚損等については、賃借人は負担する必要がありません。
また、賃貸人からは、壁や床等の全体の修理費用を請求される可能性がありますが、原状回復としては部分的な修理で十分な場合も多くあります。
ーー詳細はわかりませんが、請求されている270万円という金額は高すぎるのではないでしょうか。金額に納得できない場合、どのように対応すればよいですか
本件については、物件を直接見ていないので一般論となりますが、270万円という額はかなり高額だと思います。
ご相談者様は、以下の手順で対応されるといいと思います。
(1)契約書を確認する
修繕費の妥当性を判断する前提として、契約の内容を確認する必要があります。
例えば、「賃貸人が修繕義務を負担する」といった規定があれば、ご相談者様が修繕義務を負担する必要がない場合もあり得ます。
(2)明細・内訳を開示してもらう
先述したように、通常損耗については原状回復義務から除外されるため、請求されている修繕費の中に賃借人の原状回復義務を超えるものが含まれていないか確認しましょう。
(3)妥当な金額まで交渉する
修繕費の請求が過剰な場合、妥当な範囲まで交渉します。
例えば、長年借りている物件の場合、減価償却が考慮されるべきであり、賃借人が費用をほとんど負担しなくてもいいケースもあります。ご自身での対応が難しい場合、弁護士等の専門家にご相談されるといいと思います。
(4)敷金を充当する
賃貸借契約締結の際に、敷金を差し入れていることがあります。敷金とは、賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で交付する金銭をいい、物件を明け渡す際に、それまでに生じた債務に充当されます。
そこで、妥当な修繕費についても敷金を充当し、その差額を支払うようにすれば新たな支出が減るので負担が軽くなると思います。
賃貸物件にお住いの方は退去に際して修繕費を請求されることがあると思いますが、その額が妥当であるのかご不安に感じたときは、上記のような手順でご自身の負担額をご確認ください。
【取材協力弁護士】
寺田 弘晃(てらだ・ひろあき)弁護士
相続、不動産、労務、企業法務に注力しており、お客様に親身に寄り添った事件処理を心がけています。他士業とも連携しており、ワンストップサービスを提供しています。お気軽にご相談にいらしてください!
事務所名:神楽坂総合法律事務所
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