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梅雨の時期となり、雨の日が多くなっています。外出の際に欠かせない「傘」、普段どのように持ち歩いていますか。

「傘の横持ちはちょうど子供の顔の高さになることが多いので本当にやめて欲しい」と警鐘をならすツイッターでの投稿が1万8000件以上リツイートされ、大きな反響を呼んでいます。

傘の横持ちとは、傘の柄や本体の真ん中あたりを握りしめて、地面と平行になるような向きで持つことです。腕を振りながら歩けば、傘の先端が勢いよく後ろの人に当たる危険があります。

医師だという投稿者は、「金属製の傘が当たり、顔に傷を負った女児を診察したこともあります」といい、傘先の方向に注意して、人に当たらない持ち方をしてほしいと注意を促しています。

●他人の人生を狂わせかねない危険な持ち方と強く認識すべき

このように危険な「傘の横持ち」をした結果、わざとではないにしても誰かにケガを負わせたら罪に問われるのでしょうか。

冨本和男弁護士は、「過失傷害罪が成立する可能性がある」といいます。

「わざとではないなら、故意犯である『暴行罪』や『傷害罪』などには当たりません。

過失傷害罪は、わざとではなくうっかり、すなわち注意義務があったにもかかわらずその義務を怠った結果、人を傷つけた場合に成立します。

傘の先端はとがっていて、人と接触すれば傷つける可能性が十分にあります。一般的に、傘を持ち歩く人には、他人を傷つけないよう安全な持ち方をする注意義務があるといえます。

傘を横に向けて持てば、周囲の人に当たることは簡単に想像がつきますので、注意義務を怠ったと評価できるでしょう」

ただし、過失傷害罪の法定刑は「30万円以下の罰金または科料(1000円以上1万円未満)」で、比較的軽い罪です。

「軽いけがを負わせた程度で済んだのであれば、仮に送致されても不起訴となる可能性が高く、実際に処罰されることはほとんどないのではないかと思います」(冨本弁護士)

刑事責任が軽いとはいえ、必ずしも民事責任も軽いというわけではないようです。

「過失による不法行為として、損害賠償責任を負う可能性があります。

医療費、慰謝料のほかに、就業できなかったことによる休業損害や、後遺症が残って満足に仕事を続けられなくなった場合などの逸失利益についても支払いが必要な場合もあります」(冨本弁護士)

傘の横持ち自体がただちに違法というわけではありません。しかし、誰かの目に刺さるような事態になっては、賠償するだけでは取り返しがつきません。傘を使う際には、持ち方ひとつで救われるものがあることを認識しておくべきではないでしょうか。

【取材協力弁護士】
冨本 和男(とみもと・かずお)弁護士
債務整理・離婚等の一般民事事件の他刑事事件(示談交渉、保釈請求、公判弁護)も多く扱っている。
事務所名:法律事務所あすか
事務所URL:http://www.aska-law.jp