アウディ新型「S3」日本上陸! ドイツ・ホットハッチ3台に見る共通点と違いとは

写真拡大 (全5枚)

よりアグレッシブなスタイルになった新型「S3」

 アウディ新型「A3スポーツバック」「A3セダン」とともに、2021年5月に日本上陸をはたしたスポーツハッチバックが新型「S3」だ。

 その価格は、S3スポーツバックが642万円(消費税込み、以下同)、S3セダンが661万円と、新型A3の上級スポーティグレードである「40 TFSIクワトロ Sライン」との価格差は約160万円となる。

【画像】ドイツ・プレミアムホットハッチ!アウディ新型「S3」とライバルを見る(35枚)

 新型モデルの導入を記念してS3スポーツバック(以下S3)に125台限定で設定された充実装備の「1stエディション」が711万円だ。

2021年5月に日本に上陸したアウディ新型「S3スポーツバック」の走り

 最大1.8barという過給圧のターボチャージャーと、350barの燃料噴射圧を備えた2リッター直列4気筒ターボエンジンは、A3 40TFSIに対して120ps・80Nm増となる最高出力310ps・最大トルク400Nmを発生し、7速Sトロニック(7速DCT)にクワトロ(4WD)を組み合わせる。

 新型A3もなかなかアグレッシブなルックスになったが、新型S3はさらにボンネット先端に、往年の「アウディ クワトロ」を彷彿とさせるスリットを備えるほか、ハニカムパターンのシングルフレームグリルや大型のエアインテークを備えたフロントバンパー、専用デザインのリアディフューザー、左右4本出しのテールパイプなど、よりスポーティさに磨きをかけているのは見てのとおりだ。

 車高はベース車に対して15mm低められており、オプションで電子制御式ダンピングコントロールサスペンションを選べる。

 黒基調のインテリアには、いかにもホールド性の良さそうなスポーツシートを採用するほか、一方で12.3インチのバーチャルコックピットプラスを標準装備するなど、時代に即したアップデートが図られている。

 実際にハンドルを握ったドライブフィールは期待どおりだった。

 どこからアクセルを踏んでも、即座についてきて力強く加速させるエンジンは、4気筒らしからぬエキゾーストサウンドも印象深い。

アウディ新型「S3」のインパネ

 シャシ性能も抜群で、引き締まっていながらもよく動く足まわりにより、路面の影響を受けにくく、4輪の接地性が常に高く保たれていて、ライントレースにも優れる。

 それはワインディングを少々攻めてもタイヤのスキール音が出にくいことにも表れていた。おかげで何も不安に感じることなく、意のままに操れるハンドリングを楽しむことができる。

ライバルはAMG A35とBMW M135i。それぞれの味は異なる

 アウディを含め、メルセデス・ベンツBMWといったドイツのプレミアム御三家は、このカテゴリーでも張り合っているのはよく知られていることだろう。なかでもS3は、いちはやくこのクラスで登場したパイオニアである。すでにいまから20年前、初代A3スポーツバックの際からS3は用意されていた。

 そんなS3の最新モデルと、ライバルとなるBMW「M135i xDrive」(以下「M135i」)、メルセデスAMGの「A35 4MAITC」(以下「A35」)を比べてみたい。

アウディ新型「S3」とBMW「M135i xDrive」

 これら3台のホットハッチに搭載されるエンジンはいずれも2リッター直列4気筒ターボで、いずれもFFベースの4WDとなる。M135iも先代まではFRだったのが、現行型でFFベースとなったのは知っていることだろう。

 車両価格は、新型S3が642万円(消費税込、以下同)、M135iが641万円、A35が636万円と、ライバルらしくほとんど同等といっていい。

 エンジン性能については、最高出力と最大トルクはそれぞれ、新型S3が310ps・400Nm、M135iが306ps・450Nm、A35が306ps・400Nmと微妙に違うが、いずれもめっぽう速いことに変わりはない。

 そのなかでも大なり小なり違いはある。唯一、8速のトルコンATを搭載するM135iは、アクセルオンから加速体勢に入るまでの応答遅れがより小さく、蹴り出しが強い。一方でシフトチェンジの素早さは同等ながら、ダイレクト感ではDCTを採用する新型S3、およびA35の2台のほうが若干上回る印象だ。

 エンジンサウンドも、M135iとA35が4気筒らしい野太く低いサウンドを放つのに対し、新型S3は、アウディ伝統の5気筒っぽい独特の音質だ。これはスピーカーを使って音を演出しているのかと思ったら、じつはそうではないらしい。かたやA35は、モード選択によりさらに派手な音になる。

 ハンドリングの味付けも少なからず異なる。

 新型S3で印象的なのはトラクションの強さとステアリングレスポンスの素早さ。ターンインでの回頭性が極めて高く、立ち上がりでアクセルを踏み込むとステアリングを切ったほうにグイグイと進んでいく。アンダーステアをあまり出さずに斜め前に進んでいくイメージだ。この感覚には、4輪の駆動力をハイテク制御することで自在のハンドリングを実現した、かつての三菱「ランサーエボリューション」を思い出した。

 対する135iは、BMWらしく後輪駆動的なハンドリングを意図していることがうかがえる。ハンドリングはどちらも俊敏ながら、M135iはあえて中立付近を少しゆるやかにしていることが見て取れる。さらには、FR的な動きを意図したのだろうか、リアを使って姿勢を積極的にコントロールできる味付けで、アクセルオンのタイミングによっては若干プッシュアンダーステアも出るなど、ようするにドライバーの操作により忠実に挙動が出る印象を受けた。

 一方のA35は、新型S3に近い味付けだ。その上で、すべてにおいてダイレクト感のカタマリのようなドライブフィールが印象的だ。

 噛み砕いていえば、新型S3とA35はフロントで引っ張りながらリアから押し出すという感覚があるのに対し、M135iはリアで押しながらフロントで引っ張るというニュアンスの違いがある。ステアリングを90度ほど転舵してアクセルオンしたときの反応がけっこう違う。そのあたりは優劣ではなく、両車の考え方の違いと認識してよいだろう。

 ドライビングポジションは、どれも右ハンドル仕様では苦労していることがうかがえるが、最新モデルはどれも左足を置くスペースも比較的ちゃんと確保されている。強いていうと、M135iがもっともペダルの位置関係が自然だ。

 後席の居住空間の広さはどれも似たようなものだが、新型S3は座面と背もたれの角度がもっとも良好で身体の収まり具体がよい。加えてアウディらしく、シックスライトウインドウを採用しているおかげで解放感もある。

 それにしても、こうした高価で高性能なハッチバックの世界もますますえらいことになってきたものだ。力のある者同士がガチンコで同じカテゴリーでしのぎを削るさまは、なかなか興味深い。

アウディ新型「S3スポーツバック」

Audi S3 Sportback
アウディS3スポーツバック

・車両価格(消費税込):642万円
・全長:4350mm
・全幅:1815mm
・全高:1440mm
・ホイールベース:2630mm
・車両重量:1560kg
・エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
・排気量:1984cc
・駆動方式:4WD
・変速機:7速Sトロニック(7速DCT)
・最高出力:310ps/5450−6500rpm
・最大トルク:400Nm/2000−5450rpm
・タイヤサイズ:225/40R18