リモートと対面 コロナ禍の学生活動 チャンスに変え広がり
大学での勉強に加えて学生生活の醍醐味の一つと言えるサークルや団体活動はコロナ禍により禁止や制限の措置が取られ大きく変わりました。
宇都宮大学の団体を例に、どう学生たちが対応しているか見てみます。
およそ5千人の学生が在籍する宇都宮大学です。
峰キャンパスの東の門のすぐ隣に古びた建物があります。
宇都宮市特産の大谷石の蔵を改装したアパートで、今ではめっきり少なくなった昭和レトロな建物です。
ここに住んでいる宇都宮大学大学院地域創生科学研究科1年の寺澤基輝さん(23)は地域社会の課題を建築を通して解決する研究に取り組んでいます。
この日は、リモートの講義で研究テーマの進み具合を発表しました。
コロナ禍で「リモート」という言葉がどこでも聞かれるようになり、学生生活も大きく変わりました。
大学では感染防止対策で去年の前期日程をリモート授業に切り替え、対面の授業が一部再開されたのは、半年後の10月。
今も大人数で行う講義は対面とリモートのグループを1週間ごとに入れ替えて構内にいる学生の数を半分ほどに減らしています。
サークル活動は許可制となり大学の教室の使用が禁止されているため、ほとんど活動できていないグループもあります。
新入生が入り、華やいでいた構内の風景は以前のそれとは違います。
こうした中、寺澤さんは感染が日本でも広がり始めていた去年2月、学生主体の活動を本格化させ、建築デザイン学生団体「UUAD」を立ち上げたのです。
きっかけは東日本大震災で避難区域になった福島県の地域を盛り上げようという福島大学のプロジェクトに参加したことでした。
UUADはキッチンカーのデザインを手がけ、その後は学生が運営する農産物直売所の什器をデザインしたり、佐野市にあった呉服店を駄菓子とカフェを楽しめるコミュニティースペースに蘇らせたりしました。
他の大学や団体との交流も活発になり、メンバーは70人にまで増えました。
寺澤さんは学生の自由なアイデアで企業や地域住民と協働でプロジェクトを進める大学の枠を越えた取り組みに手ごたえを感じています。
寺澤さんが住むアパートの改修もプロジェクトの一つで、大学近くにあるカフェの一室に学生たちが集まりました。
林業を学ぶ女子学生などが組織する団体と共同で新たに計画を立ち上げることになったのです。
県産木材や環境に優しい材料として注目される竹を使って大学周辺エリアや空き家を人が集まる場所へと変えようと、初回の打ち合わせはみっちり2時間アイデアを出し合いました。
寺澤さんの団体はさまざまな計画と並行して大学がある峰地区の地域住民とつながりを持つことになりました。
人が集まりにくくなった今、高齢者が多い地域ではこれまで以上に若い力を必要としていました。
対面とリモート、学生にとってもはや標準となった生活の変化は逆に多くのつながりを産み、寺澤さんは学生と地域の両方がより利益を得られる環境を作ることを目指しています。