4月9日発売の「別冊少年マガジン」

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「エヴァンゲリオン」と並び、今年の斯界の話題となったのが「進撃の巨人」である。単行本で累計1億部以上を売り上げた大ヒットマンガが完結したが、これに難くせを付けているのがいつもの国々だ。

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「進撃」は、講談社発行のコミックスで、雑誌連載は2009年から。舞台は「巨人」に人類が脅かされた世界だ。巨人の餌となり、危機に瀕した人類は巨大な壁を築き、侵略を防いでいた。しかし、壁の高さを上回る「超大型巨人」が出現。新たな戦いが始まるという設定である。

 4月9日発売の「別冊少年マガジン」掲載の最終話は、主人公が人類の8割を殺害し、その能力によって巨人が消滅するという内容。掲載号は完売続出となった。が、海を越えて、

〈進撃の巨人、虐殺を擁護する結末で論議〉

4月9日発売の「別冊少年マガジン」

 と難じたのは、韓国のテレビ局「JTBC」である。同局は「国内のファン」の感想を紹介する形で、

〈結末に共感できませんでした〉

〈主人公が悪役を自任して人類の大部分を殺し、結局平和が訪れたという内容です〉

〈帝国主義を想起させ、戦争犯罪を美化する内容だという批判が溢れました〉

 などと伝えた。

 もちろん作品の解釈は自由だが、何でも日本の過去に結びつけるのが如何にも彼(か)の国らしい。

 また、ネット媒体の「トップスターニュース」は、

〈最終話では、虐殺を感謝する発言が出た〉

〈ホロコーストを擁護するのと違いがない〉

 そしてネットの声として、

〈結末は完全右翼〉

〈核爆弾2個じゃ足りない〉

 とまで報じたのである。

軍国主義の作品

 牽強付会もここまで、と思うが、こうした難くせは中国もお得意だ。

 実は「進撃」には、旧日本軍と関わりのあるキャラクターが登場する。戦艦「三笠」を連想させるミカサという名の人物や、日露戦争時の陸軍指揮官・秋山好古そっくりの司令官も。さる中国ウォッチャーによれば、

「数年前ですが、これをネタに“『進撃』は典型的な軍国主義の作品”と報じたメディアがありました」

 というから、やはり思考回路は同じなのだ。

「進撃」の担当編集者にこれらの指摘について尋ねたが、回答はなし。しかし、

「むしろ私は、中国政府の危険性を象徴しているように読めましたけどね」

 とは、中国出身のマンガ家・孫向文(そんこうぶん)氏。

「物語の中の政府は、壁の外の世界の危険性を煽りつつ、外部の情報を隠蔽したりします。インターネットを遮断するなどして国民を支配しようとする中国とそっくりですよ」

 実際、

「香港の民主化運動の際には、『進撃』のイラストが、デモ隊のプラカードなどによく出ていました。香港の自由に踏み込んでくる中国共産党を、壁を破って侵入しようとする巨人になぞらえたのです」(ノンフィクション・ライターの安田峰俊氏)

 右から左まで、さまざまな読み方を持つ。これが大ヒットの所以なのか。

「週刊新潮」2021年5月6日・13日号 掲載