パブリッシャーのプログラマティック広告ビジネスを巡る環境は、プライバシー保護の波が広がるにつれ、年々厳しくなっている。サードパーティCookieに関しては、AppleがITP(Intelligent Tracking Prevention)をアップデートするたび、Safari上のオーディエンスを特定するためのデータが減少し、メディアのCPMは低下し続けている。これにより、現在多くのパブリッシャーが頭を悩ませているのはいうまでもない。そして、これに追い討ちをかけるように、2022年にはGooleによるサードパーティCookieのサポートが終了する。加えてモバイル広告識別子に関しても、AppleによるIDFA(Identifier For Advertising)を用いたトラッキングの制限が、2021年4月27日(日本時間)に適応され、アプリ内広告を収益源とするパブリッシャーへの影響が懸念されている。データ接続プラットフォーマーのLiveRamp(ライブランプ)は、パブリッシャーに対し、こうした事態への処方箋を提供している。同社のソリューションは、ユーザーによる同意のもと取得された、パブリッシャーのファーストパーティデータから、プライバシーに配慮した形で独自のID「LiveRamp ID」を生成し、それを広告主側の「LiveRamp ID」とマッチングするというもの。これにより、サードパーティCookieやIDFAがなくとも、プログラマティック広告収益の担保、ひいては向上が図れるという。実際、同社のソリューションを導入したパブリッシャーでは、CPMの大幅な改善が確認されている。「我々は、ユーザー、マーケター、パブリッシャーの3者による『信頼に基づいた』エコシステムの構築を支援している。日本のパブリッシャーのみなさんには、是非このエコシステムに加わって欲しい」。こう語るのは、LiveRampでヘッドオブパートナーシップスを務める、今井則幸氏だ。同氏は、DIGIDAY[日本版]が2021年3月25日にザ・リッツ・カールトン東京で開催したイベント、DIGIDAY PUBLISHING SUMMIT 2021のセッション「サードパーティCookieの終焉が近づくなか、パブリッシャーは何をすべきか?」に登壇した。LiveRampの今井氏

国内パブリッシャーの課題

セッションの冒頭、「日本のパブリッシャーがいま直面している課題は、大きく3つある」と、今井氏は口火を切る。まず、1つ目の課題は、「ウォールドガーデンによる支配」だ。パブリッシャーたちは、プラットフォーマーの、強引かつ頻繁なアルゴリズム変更や機能追加によって、戦術変更を短期的に何度も強いられている。2つ目の課題は、「プライバシー規制」である。2016年、欧州でGDPR(EU一般データ保護規則)が施行されたのをきっかけに、プライバシー保護の潮流は欧米に広まった。そしてここ日本でも、彼の地ほどではないにせよ、個人情報に関するデータガバナンスと、コンプライアンスの重要性が叫ばれるようになっている。そして3つ目の課題が、「サードパーティCookie/モバイル広告識別子を巡る規制」だ。これは、2つ目の「プライバシー規制」の潮流を受けての動きである。サードパーティCookieに関しては、AppleのITPにより、Safariブラウザの広告収益が下がり続けている。さらに2022年には、Google ChromeによるサードパーティCookieのサポート終了が予定されており、パブリッシャーの収益に、深刻な影響をもたらすことが予想されている。そしてモバイル広告識別子に関しても、2021年4月27日(日本時間)、AppleはIDFAを用いたトラッキングの制限を開始している。特に日本のパブリッシャーは、GoogleとAppleが展開するブラウザの国内シェアが大きいことから、これらの影響は計り知れない。Google Chromeのシェアは、デスクトップが6割近く。スマートフォン/タブレットは3割強。一方のSafariは、デスクトップに関しては1割近くだが、スマートフォンのシェアは6割近くにのぼる。

   

国内のブラウザシェアを示す図版(※クリックして拡大)

LiveRampのソリューション

今井氏は「我々は、この3つの課題に対する処方箋を提供できる」と強調。同社のソリューションなら、ファーストパーティデータから、プライバシーに配慮した形で、パブリッシャーごとに固有の「LiveRamp ID」を生成することが可能だという。このパブリッシャー側の「LiveRamp ID」と、広告主側で生成された「LiveRamp ID」を照合することで、サードパーティCookieやIDFAがなくとも、ターゲティングを実現できるというわけだ。具体的にはどのような仕組みなのか。ファーストパーティデータを活用するには、データセキュリティやプライバシー保護の面で、非常に高い安全性が求められる。これを実現するのが、ログイン認証を活用したソリューション、「ATS(Authenticated Traffic Solution)」だ。これは、ユーザーがサービスにログインする際に必要な、認証ID(多くの場合はメールアドレス)を「不可逆的にハッシュ化」して、それぞれに固有な「LiveRampID」を生成する役割を持つ。なお今井氏によると、「『LiveRampID』は、どうあってももとの情報を割り出すことはできない構造になっている」という。パブリッシャーの「LiveRampID」は、広告主のファーストパーティデータをもとに生成された「LiveRampID」とマッチングされる。これにより、会員であるユーザーを認識し、データ主導のピープルベースターゲティングが実現可能に。広告主は、DSPを通じてIDベースの入札決定を行うことができる。また、LiveRampのソリューションを導入したパブリッシャーでは、ブラウザに関係なくCPMの大幅な改善が確認されている。その改善幅は、国内で利用率が高くサードパーティCookieが有効なGoogle Chromeではプラス50%、Safariではプラス375%という事例もある。ちなみにパブリッシャーは、LiveRampのATSを無償で導入することが可能で、その実装も容易だ。

   

LiveRampのソリューション導入前後のCPM比較(※クリックして拡大)

「信頼に基づいたエコシステムを」

現在LiveRampは、国内外の主要アドテクノロジーベンダーと連携している。SSPでいうと、グローバルではパブマティック(PubMatic)やマグナイト(Magnite)、インデックスエクスチェンジ(Index Exchange)、そしてオープンエックス(OpenX)など。国内では、イールドワン(YieldOne)、フラクト(fluct)などだ。なおDSPに関しても、グローバルではメディアマス(MediaMath)やアモビー(Amobee)とはすでに連携済み。国内では、スケールアウト(ScaleOut DSP)、ロジカド(Logicad)との連携が間もなく完了するという。また、LiveRampと同様のIDソリューションであるUnified ID 2.0とも、同社は連携している。そのため、LiveRampのソリューションを導入したパブリッシャーは、Unified IDを採用している広告主との取引も可能だという。「SSPやDSPだけでなく、DMPやメジャメントツール、さらにはCDPなど、さまざまなステークホルダーと関わっていきたい」と、今井氏は締めくくる。「『信頼に基づいたエコシステム』を構築の支援を加速していきたい」。Sponsored by LiveRampWritten by DIGIDAY Brand STUDIOPhoto by 渡部幸和