両親が遺した “ボロ実家” レンタルで「月収30万円」の実例も…コスプレ撮影会に需要あり
写真右が、青山さんが貸しているレンタルスペース。奥は母屋で、青山さんが生活している
両親が遺した実家を相続する。いつかやってくる未来だが、都心の一等地でもない限り、その使い道は二束三文で売るか、潰して駐車場にするぐらい……。だが、面倒だから “放置” という手は、厳禁だ。
「全国的に空き家が増加していることが問題視され、2015年に『空き家対策特別措置法』が施行されました。この法律は、空き家を適正に管理する義務を果たさない所有者に対し、市区町村が助言、勧告、指導や命令を出すことができるというもの。
しかし、家の解体にもお金がかかります。親が遺した資産価値の低い “負動産” を、どうすればいいのかという相談が増えています」(不動産関係者)
似た悩みを抱えた末に、“時間貸しレンタル” という方法を選んだ女性がいる。
「借金をしてまでアパートを建てようとは思えませんでしたし、民泊は、『民泊新法』による厳しい規制があるようだったのであきらめました」
そう語るのは、東京・西東京市の田無駅から徒歩13分、築50年の平屋「あおさや」を時間貸ししている、オーナーの青山りえこさん(53)だ。
「ここは、祖父母が暮らしていた実家の離れなんです。私は、すぐ隣の母屋に家族と住んでいます。父の介護をしながら仕事ができればと考えていたこともあり、2019年から挑戦しました」
青山さんは、オーナーと借り手をつなぐ「スペースマーケット」というサービスを利用している。利用者はスペースマーケットのサイトから、借りたいスペースを予約し、決済をおこなう。
「オーナーの方からは利用があった場合のみ、弊社が手数料として30%をいただいています。たとえば、利用者が1万円を払うと、弊社が3000円を受け取り、オーナーの方は7000円の収入となります」(スペースマーケット広報担当者)
「あおさや」には、畳の二間に、小さな台所がついている。ひときわ目につくのが、現在ではほとんど見ることができなくなった長火鉢。置物にも歴史を感じさせるものが多く、まさに “昭和” である。
「私にとっては当たり前の空間も、若い人たちにとっては違う。この前も利用者の女のコが『私、畳にこたつがある風景に憧れていたんです!』と言っていました。そういう時代になったんですね(笑)」(青山さん・以下同)
利用料金は平日1時間3000円からで、最低利用時間は4時間。ほかにも、長火鉢を利用したせんべい焼き体験や、かき氷作り、着物のレンタルと着付けなど、青山さんが独自に提供しているオプションも豊富だ。
「利用目的で、もっとも多いのが撮影会。なかでもコスプレですね。最初のお客様がそうで『あっ、こういう利用者さんがいるのか』と驚いたのを覚えています。利用者は女性が9割で、いわゆる女子会も多いですよ。有名ユーチューバーの方が、撮影で利用されたこともあります」
気になるのは売り上げだが……。
「コロナ禍以前は、週に3〜4日ほどの予約があり、月の売り上げは30万円くらい。家賃は当然かからないし、出費といえば、固定資産税と修繕費のための積み立てくらい。DIYが好きなので、ちょっとしたことなら自分で直します。なので、売り上げのほとんどは手元に残ります」
だがコロナ禍になり、予約がゼロの月も出たという。
「今は、最大利用者数を6名に制限しています。一人でボーッと過ごすために利用する経営者の方など、新たな利用方法も生まれています」
町田さんが運営する「春皐園」。母屋は築120年の歴史があり、町田家自体も、平安時代より脈々と続く家だという
続いては、東武東上線の坂戸駅(埼玉県)から車で8分ほどの「春皐園」。まず驚かされるのが、その広さである。代表の町田康寛さん(28)が語る。
「宅地だけで1000坪。裏の田んぼ、離れの畑を入れたら3000坪になります。都内から離れた場所ですが、車で来ていただいています」
当初は、民泊として貸し出していたという。
「海外の方がおもな利用者だったのですが、1階が宿泊所、2階が家族の居住スペースなので、多少抵抗があったんです。そこで、2年半ほど前からスペース貸しに切り替えました」(町田さん・以下同)
なにしろ1階だけで50畳近くの広さ。部屋を区切っての利用も可能で、利用方法はさまざまだ(最低利用時間は3時間、1時間2000円から)。
「今なら、『鬼滅の刃』などのコスプレ撮影会が多いですね。来てくださった方がリピーターとなって、今では全国から来ていただいています。撮影会に続くのが、同窓会やママ友の集まりです。
利用者は女性が7割で、年齢層は20〜30代が中心ですね。また、地域のイベントにも利用してもらっています。その場合は敷地全部を使ってキッチンカーを入れたり、バーベキューをやったり。裏庭の竹林を利用して、“流しそうめん” をしたこともあります」
町田さんは会社勤めをしているため、営業は土日限定だ。それでも、月の売り上げが30万円を超えたこともある。
「もともと、『固定資産税ぶんにでもなれば』くらいに思っていたのですが、やり始めてから、いろんな需要があることがわかり驚きました。歴史ある家屋なので、いろんな方が交流する場になって嬉しいです」
生活経済ジャーナリストでファイナンシャルプランナーの和泉昭子氏は、今後も人気が続くと考えている。
「スマホアプリの普及で、提供側とユーザーのマッチングから課金までが、一括で簡単にできるようになりました。雇用の継続性や、将来的な賃金の伸びが期待できなくなっているので、時間や場所、技術など、個人の余剰部分を刻んで貸し出すビジネスは今後、どんどん増えると思います。
挑戦する場合、利用者とのトラブルや赤字など、リスクもしっかり把握しましょう」
あなたの実家も、古びた家と侮るなかれ。“金のなる木” になるかも! 以下の関連リンクでは、「あおさや」と「春皐園」の屋内を公開する。
(週刊FLASH 2021年3月16日号)