TBSのテレビドラマ『義母と娘のブルース』の原作者、漫画家の桜沢鈴(@SAKURAZA13)さんが、2021年3月13日、投稿した次のようなツイートが注目を集めている。

「ぎぼむす」を毎週のように観ていたJタウンネット記者が注目したのは、「最寄りの映画館」と題して、投稿者自らが手描きした絵だ。

「このへんにすんでる」と赤丸が付けられているのは、福島県の西部。会津若松市よりもさらに西の、いわゆる奥会津と呼ばれる地域のようだ。水量の多い只見川がくねくねと蛇行しながら、日本海方面に流れて行く山深い土地だ。SLが走っていることでも知られている。

ここから最寄りの映画館というと、東は福島県内の郡山市だが、北は山形県の米沢市、西は新潟県の新潟市や燕三条駅周辺、長岡市、南は栃木県の那須塩原市と、投稿者自らの絵で示しているのだ。そのほとんどが県外だ。ちょっと映画館に行くために、峠を越え、県境を越えて、はるばる出かけなければならない。

「ぎぼむす」の原作者で人気の漫画家が、この奥会津に住んでいるのは、なぜだろう? 仕事に支障はないのか? Jタウンネット記者は、桜沢鈴さんに直撃した。

「新潟はついでに寿司、米沢はついでに米沢牛を食べて...」


桜沢鈴(@SAKURAZA13)さんのツイートより

桜沢さんに「何か観たい映画があったのですか?」と尋ねると、こんな返事が返ってきた。

「シン・エヴァンゲリオン劇場版をどこで見ようかと悩んでいた時にふと、気持ちを吐露してしまいました」

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』は、2021年3月8日に公開されたばかりの日本のアニメーション映画で、企画・原作・脚本・総監督を庵野秀明氏が務める話題作だ。これは、どうしても観たい、だが映画館が遠い......という状況だったようだ。

交通手段は車一択なのだろうか? それぞれ所要時間はどのくらいなのだろう?

「一応電車もありますが駅まで徒歩40分。 本数が少なく、車より時間がかかったりするので車になってしまいます。最寄りの映画館までは、どこも車で2時間弱くらいです」

県外の新潟市、米沢市、那須塩原市だけでなく、同じ福島県内の郡山へも2時間弱とは驚きだ。

ツイッターには、こんな声が寄せられている。

「米沢民ですが、こっちまで来るんですね...」
「那須塩原市にもありますぜ」
「八十里越、1つのトンネルの現場監督です。 あと10年ほどすれば八十里超えプロジェクトが完成しますので、その時は燕三条の映画館へ!」
「上映時間より移動時間の方が長く、チケット代より交通費の方が高いって感じですかね」

こういった反応に対して、桜沢さんはこう語る。

「様々な地方の映画館事情を知ることができて楽しかったです。 他にも最寄りの映画館があると教えていただいてありがたかった。 新潟、米沢、那須塩原の方から『なぜ映画館に会津ナンバーの車が多いか謎が解けた』と喜ばれたのもおもしろかった」

また、「ここまで行ったら新潟はついでに寿司、米沢はついでに米沢牛を食べて帰りたい」ともつぶやいている。


奥会津の3橋梁。手前から県道237号、只見線、県道252号の橋梁(bryan...さん撮影、Wikimedia Commonsより)

この奥会津に、桜沢さんが暮らし始めたきっかけは、何だったのだろう?

「地元の方がリノベーションした素敵な古民家が、借り手を探していたこと、そして結婚がキッカケでした」

奥会津の何がもっとも気に入っているかと尋ねると、「温かく迎えてくださったご近所の方々」という答えだった。好きな場所は、早戸温泉つるの湯(三島町)、せせらぎ荘(金山町)の炭酸温泉だという。風景はどこも素晴らしいという。

ところで、奥会津で仕事をする上で、ネット環境など困ったことはないのだろうか?

「おそらくネット回線は都会よりもスムーズです。 稀に停電が起きるのでちょっと怖いです」

リモートワークの時代になってきたが、何か感想は? と聞くと、「普段から引きこもる仕事なので、全く生活に変化はありません。 打ち合わせを理由に、人に会っていたので、その機会が無くなってしまってちょっと寂しいです」という返事だった。

また移住希望者に対してのアドバイスとしては、「地方で移住となると(特に雪国)は、一年中何かしら忙しく、スケジュール管理と集中力が必要。あと銀行や行政手続き、都会の利便さに慣れていると、意外な所でストップがかかったりするので、良く調べた方がいいですよ」とのこと。

最寄りの映画階以外にも、ハードルはいろいろありそうだ。でも、それ以上に魅力も大きい、ということかもしれない。