臭いにかゆみ、デリケートゾーンのトラブル。座り時間が長い人も要注意
「おうち時間」が増えたこの一年。旅行や外食が制限され、出歩く機会が減ったりと、生活スタイルが変わったことで、私たちの心や体にもさまざまな影響が出ていると言われています。そのひとつがデリケートゾーンのトラブルです。
今回は「気になるけれども誰に相談していいのかわからない」「恥ずかしくて医療機関にも行きづらい」…。そんなデリケートゾーンのトラブルの原因や対処法について、白金高輪海老根ウィメンズクリニックの海老根真由美先生に教えてもらいました。
デリケートゾーンの悩みは増えているんです(※写真はイメージです。以下同)
そもそもデリケートゾーンのトラブルとは、尿もれや外陰部のかゆみ、におい、かぶれ、できものなどのことをいいます。尿もれは「年をとった人が悩むもの」と思いがちですが、産後や、座り仕事の女性にも多いトラブルなのだそう。その理由を海老根先生が語ってくれました。
座りっぱなしも要注意です
「外陰部のかゆみやできもの、かぶれは、このコロナ禍で悩む方が増えています。こうしたトラブルは、これまで座り仕事の方に多いものでした。というのも、座ることで外陰部が椅子にずっと当たっている状態になります。すると、立っているときよりも、擦れたり蒸れたりの状態が続くため、その刺激でかゆみが起きたり、炎症が起きて膿がたまって痛みが出てくるようになってしまうのです。コロナ禍の今、外出自粛によって自宅で過ごす時間が増え、自然と座っている時間も増えました。そのため、座り仕事の方以外でも、こうしたデリケートゾーンのトラブルに悩む方が増えているのです。痛みがひどくて座っていられないと受診されるような方も少なくありません」
海老根先生は、診療でもデリケートゾーンのトラブルの対応に力を入れています。とくに更年期以降の女性は、女性ホルモンの分泌も減少してくるため、トラブルを抱える方も増えてくるのだといいます。
「どのトラブルにも共通しているのが、免疫力の低下です。最近では、男性と肩を並べて仕事に励み、家に帰れば家事に子育てと毎日忙しく、睡眠時間が短い方も非常に多いです。また、無理なダイエットで栄養不足になっていたり、コロナ禍で運動不足になったことで免疫力が下がり、細菌感染を起こしやすい状態になってしまっています。また、更年期世代になると、加齢と共に女性ホルモンの減少が原因で、膣の潤いも減ってくるために、痛みやかゆみを感じやすくなり、トラブルも増えてきます。今までは大丈夫だったのに、下着やナプキンでかぶれるようになったりする方も少なくありません」
こうした症状は、毛穴に細菌が入り、炎症を起こす毛嚢炎、膣の入口付近にあるバルトリン腺に膿がたまって痛みを伴うバルトリン腺膿瘍、発疹や水ぶくれができるヘルペス、体調不良やストレス、疲労などで免疫力が下がると増殖や炎症を起こし、かゆみの原因となるカンジタ症などがあります。
「デリケートゾーンのトラブルを抱える方は意外と多いのに、私が医学生だった頃は患者様が多くはありませんでした。これは最近になってトラブルが増えたわけではなく、多くの女性が『がまんすればいい』『はしたないこと』と思っていたこと、また、医師側も『命に関わるわけでもないのだから』と軽視していたからだったのではと考えています。しかし、痛みが強すぎて座っていることもできなかったり、下着をつけることもできなかったり、また性交渉にも痛みを伴うなど、女性にとっては切実な悩みとなっています。今は、こういったトラブルに多くの婦人科が対応していますから、辛なったらまずは婦人科へ行ってみるのがいいと思います」
ESSE読者331人を対象としたアンケート結果。アンダーヘアを処理している人は、エステや医療脱毛が大半のなか、自己処理をしているという人も
ではこういったデリケートゾーンのトラブルを予防するために、自宅ではどのようなケアを行えばいいでしょうか。おそらくほとんどの人が、体を洗うのと同じように洗っているだけで、特別なことはしていないのではないでしょうか。
「まず第一に、膣周りを清潔に保つことが大切です。膣の周囲は、恥垢が溜まりやすく、アンダーヘアに付着した尿や便により、細菌が繁殖してしまうこともあります。それらがかゆみやニオイの原因になることも。トイレに行くたびに、ウォシュレットを使うことは清潔を保つ上では、よいことではあるかもしれませんが、皮膚が乾燥してガサガサになったり、アンダーヘアがゴワゴワになることもあります。デリケートゾーン専用のソープや保湿剤が販売されていますので、こうした専用のものを使用してケアを行うのも手です」
また、ニオイが気になるからと、トイレに行くたびにウォシュレットを使っている方もいるのではないでしょうか。そのような方には、アンダーヘアの脱毛もおすすめだと海老根先生はいいます。アンダーヘアの脱毛は、最近「介護脱毛」とも呼ばれていて、将来、介護される立場になったときのためにと、更年期世代で脱毛する方も増えています。
「何度洗ってもニオイが気になる方や、かゆみやできものなどのトラブルを繰り返すような方はVIO脱毛がおすすめです。脱毛を行うことで、清潔が保たれますし、蒸れないため、おりものの量が減る方も多くいます。ただ、加齢に伴ってアンダーヘアも薄くなってくるため、介護される頃には、ほとんどないという方もいらっしゃいます。このあたりは個人差が大きいものです。ですから、今のご自身の悩みや快適度を優先に考えたほうがいいかもしれませんね」
海老根先生のクリニックでは、麻酔クリームを使用してのVIO脱毛を行っています。婦人科のクリニックでVIO脱毛ができるのは珍しいですが、先生はほかにも膣レーザー治療など女性の悩みに幅広く対応してくれます。
痛みや不快感が続くとそれだけで気持ちも落ち込んでしまいがちです。更年期世代はとくに、精神的にも落ち込みやすい時期。日頃からのケアや治療で、少しでもハッピーな気分を保っていきたいですね。
<取材・文/大場真代>
●教えてくれた人
白金高輪海老根ウィメンズクリニック
院長。埼玉医科大学医学部卒業。埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センター母体胎児部門講師、埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センター母体胎児部門非常勤講師を経て、2011年に順天堂大学産科婦人科非常勤准教授に就任。2013年6月に東京都港区に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開業。
現在も順天堂大学産婦人科非常勤准教授、埼玉医科大学産婦人科非常勤講師、埼玉医科短期大学非常勤講師、国士舘大学スポーツ学科非常勤講師を兼任。日本産科婦人科学会専門医、日本周産期メンタルヘルス研究会理事など。日本母性衛生学会、日本周産期・新生児学会に所属
今回は「気になるけれども誰に相談していいのかわからない」「恥ずかしくて医療機関にも行きづらい」…。そんなデリケートゾーンのトラブルの原因や対処法について、白金高輪海老根ウィメンズクリニックの海老根真由美先生に教えてもらいました。
デリケートゾーンの悩みは増えているんです(※写真はイメージです。以下同)
だれにも言えない…女性のデリケートゾーンの悩み。ケア法って?
そもそもデリケートゾーンのトラブルとは、尿もれや外陰部のかゆみ、におい、かぶれ、できものなどのことをいいます。尿もれは「年をとった人が悩むもの」と思いがちですが、産後や、座り仕事の女性にも多いトラブルなのだそう。その理由を海老根先生が語ってくれました。
●ずっと座っている人は要注意
座りっぱなしも要注意です
「外陰部のかゆみやできもの、かぶれは、このコロナ禍で悩む方が増えています。こうしたトラブルは、これまで座り仕事の方に多いものでした。というのも、座ることで外陰部が椅子にずっと当たっている状態になります。すると、立っているときよりも、擦れたり蒸れたりの状態が続くため、その刺激でかゆみが起きたり、炎症が起きて膿がたまって痛みが出てくるようになってしまうのです。コロナ禍の今、外出自粛によって自宅で過ごす時間が増え、自然と座っている時間も増えました。そのため、座り仕事の方以外でも、こうしたデリケートゾーンのトラブルに悩む方が増えているのです。痛みがひどくて座っていられないと受診されるような方も少なくありません」
海老根先生は、診療でもデリケートゾーンのトラブルの対応に力を入れています。とくに更年期以降の女性は、女性ホルモンの分泌も減少してくるため、トラブルを抱える方も増えてくるのだといいます。
「どのトラブルにも共通しているのが、免疫力の低下です。最近では、男性と肩を並べて仕事に励み、家に帰れば家事に子育てと毎日忙しく、睡眠時間が短い方も非常に多いです。また、無理なダイエットで栄養不足になっていたり、コロナ禍で運動不足になったことで免疫力が下がり、細菌感染を起こしやすい状態になってしまっています。また、更年期世代になると、加齢と共に女性ホルモンの減少が原因で、膣の潤いも減ってくるために、痛みやかゆみを感じやすくなり、トラブルも増えてきます。今までは大丈夫だったのに、下着やナプキンでかぶれるようになったりする方も少なくありません」
こうした症状は、毛穴に細菌が入り、炎症を起こす毛嚢炎、膣の入口付近にあるバルトリン腺に膿がたまって痛みを伴うバルトリン腺膿瘍、発疹や水ぶくれができるヘルペス、体調不良やストレス、疲労などで免疫力が下がると増殖や炎症を起こし、かゆみの原因となるカンジタ症などがあります。
「デリケートゾーンのトラブルを抱える方は意外と多いのに、私が医学生だった頃は患者様が多くはありませんでした。これは最近になってトラブルが増えたわけではなく、多くの女性が『がまんすればいい』『はしたないこと』と思っていたこと、また、医師側も『命に関わるわけでもないのだから』と軽視していたからだったのではと考えています。しかし、痛みが強すぎて座っていることもできなかったり、下着をつけることもできなかったり、また性交渉にも痛みを伴うなど、女性にとっては切実な悩みとなっています。今は、こういったトラブルに多くの婦人科が対応していますから、辛なったらまずは婦人科へ行ってみるのがいいと思います」
●アンダーヘアの脱毛がじつは有効?
ESSE読者331人を対象としたアンケート結果。アンダーヘアを処理している人は、エステや医療脱毛が大半のなか、自己処理をしているという人も
ではこういったデリケートゾーンのトラブルを予防するために、自宅ではどのようなケアを行えばいいでしょうか。おそらくほとんどの人が、体を洗うのと同じように洗っているだけで、特別なことはしていないのではないでしょうか。
「まず第一に、膣周りを清潔に保つことが大切です。膣の周囲は、恥垢が溜まりやすく、アンダーヘアに付着した尿や便により、細菌が繁殖してしまうこともあります。それらがかゆみやニオイの原因になることも。トイレに行くたびに、ウォシュレットを使うことは清潔を保つ上では、よいことではあるかもしれませんが、皮膚が乾燥してガサガサになったり、アンダーヘアがゴワゴワになることもあります。デリケートゾーン専用のソープや保湿剤が販売されていますので、こうした専用のものを使用してケアを行うのも手です」
また、ニオイが気になるからと、トイレに行くたびにウォシュレットを使っている方もいるのではないでしょうか。そのような方には、アンダーヘアの脱毛もおすすめだと海老根先生はいいます。アンダーヘアの脱毛は、最近「介護脱毛」とも呼ばれていて、将来、介護される立場になったときのためにと、更年期世代で脱毛する方も増えています。
「何度洗ってもニオイが気になる方や、かゆみやできものなどのトラブルを繰り返すような方はVIO脱毛がおすすめです。脱毛を行うことで、清潔が保たれますし、蒸れないため、おりものの量が減る方も多くいます。ただ、加齢に伴ってアンダーヘアも薄くなってくるため、介護される頃には、ほとんどないという方もいらっしゃいます。このあたりは個人差が大きいものです。ですから、今のご自身の悩みや快適度を優先に考えたほうがいいかもしれませんね」
海老根先生のクリニックでは、麻酔クリームを使用してのVIO脱毛を行っています。婦人科のクリニックでVIO脱毛ができるのは珍しいですが、先生はほかにも膣レーザー治療など女性の悩みに幅広く対応してくれます。
痛みや不快感が続くとそれだけで気持ちも落ち込んでしまいがちです。更年期世代はとくに、精神的にも落ち込みやすい時期。日頃からのケアや治療で、少しでもハッピーな気分を保っていきたいですね。
<取材・文/大場真代>
●教えてくれた人
【海老根真由美先生】
白金高輪海老根ウィメンズクリニック
院長。埼玉医科大学医学部卒業。埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センター母体胎児部門講師、埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センター母体胎児部門非常勤講師を経て、2011年に順天堂大学産科婦人科非常勤准教授に就任。2013年6月に東京都港区に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開業。
現在も順天堂大学産婦人科非常勤准教授、埼玉医科大学産婦人科非常勤講師、埼玉医科短期大学非常勤講師、国士舘大学スポーツ学科非常勤講師を兼任。日本産科婦人科学会専門医、日本周産期メンタルヘルス研究会理事など。日本母性衛生学会、日本周産期・新生児学会に所属