DIYで犬小屋づくり。犬の定位置がまた増えたね<inubot回覧板>
ペットの柴犬の写真をツイッターに投稿し続け、その自然体のかわいさが人気となっている@inu_10kg
。ESSEonlineでは、飼い主で写真家の北田瑞絵さんが、「犬」と家族の日々をつづっていきます。
第32回は、妹と一緒に小屋をつくったお話です。
「ずっと犬に小屋をつくりたかってん」と妹が言い出した。
日除け、防風に小屋は必要だと熱弁しているが、初夏に母がシェードを取りつけていたので日除けはあったし、雨はもちろん強風の日も家の中で過ごすので風をしのぐ状況もなかった。
どうやら妹のなかで小屋をつくるのは決定しているようだ。小屋をつくる機会は滅多にないし、巻き込まれた気もするがつくってみようではないか。
本日の任務:小屋をつくる、合言葉はALL FOR INU。
まだ2月であるのに上着いらずの暖かな晴天のもと、ホームセンターにいた。スノコを五面組み立てるという簡単な設計らしく、存外容易な作業ですみそうだ。「でもなぁ三角の屋根もいるやんなぁ」「それはできへん」資材を前に長居すると妹がどんどん高難度な想像を膨らませそうなので早々にレジに連れていき、スノコ×5、ホームパイ×1、イカ天×1、ジャーキー×1を購入し帰宅。
庭の片隅でスノコや工具を広げていたら「なに店開いとんや?」と言いたげに視線を寄せるまだ見ぬ小屋の主。絶対に私は犬じゃなかったら、こんなにも手間のかかることできない。
さっそく始めようとしている妹を呼んで、いったん犬の前に集合させる。まずは円陣すっぞと犬の手に手を重ねると、なんじゃいと笑いながらも妹の手もそっと重ねられた。
「いい家つくろう! ALL FOR INU!」
ジャーキーを噛む犬と、イカ天片手の妹。「今14時やから理想は15時完成で」と言って音楽を流しはじめる。
イカ天をシャーペンに持ち代えて、スノコを重ね合わせ、はみ出る箇所にサクサクと線を引いていく。
チェンソーで不要な部分を断ち落として、断面はヤスリでみがいて平坦にする。犬が怪我しないように。安心安全がモットーの家づくり。
昔ながらのトンカチで釘打ちをしていく。ドライバーはあるが、あると思っていたネジがなかったので令和3年にシンプル素トンカチ。庭中にドンドンドン! と釘を打つ音が鳴り渡る側で、すよすよとお昼寝をしている。
スノコが重くて強固だから飛ばされないだろうが、壁が離散したり屋根が落ちないよう「心配しすぎが丁度ええ」と狭い間隔で釘を打ち込んでいく。たまに曲がって先端が飛び出れば、釘抜きを使って抜いてさらに打ち直す。一度妹にトンカチを渡そうとしたら「ごめん音楽選ぶから!」と拒まれた。妹はたびたび役職がDJ。
苦闘しながら予定から30分が経過してなんとか完成した小屋! K‐O‐Y‐A!
危険はないかしっかりと安全点検ののち、どうぞと犬のもとに届けたら驚いたのか目をまんまるにして耳を立てた。まさか自分のものがつくられているとは思わなかったのか。興味津々に鼻を寄せて匂いを嗅いでいる。犬も安全点検をする。
この時点ではまだ小屋に心を開ききっていないようで、上半身だけ突っ込んでいるが、覗くだけ…といったよそよそしさがあった。
余った廃材で鉢置きのような何かもつくった
翌日には警戒心も解けたのか、ひとりでに小屋に入っていたのを父が発見して慌ててみんなを呼びにきた。妹は「入ってくれてるの見たらうれしいなぁ。やっぱり犬も小屋を必要にしてたんや」と会心の笑みを浮かべていた。
「防腐剤は塗ったほうがいい」と教えてもらって後日ふたたびホームセンターにやってきた。防腐剤入りのペンキ売り場にて色をどうするのか悩みに悩んで「ねぇが決めていいよ」と言われて黄色にした。小屋の主は二度目の光景に「まぁたやってんの?」なんて呆れてていそうだが、心なしか見守ってくれているような気もする。
妹がすみずみまで気を行き届かせて丁寧に塗ってくれたおかげで、手前みそだがめっちゃええ、最良の出来栄え。黄色にして大正解大満足と顔を見合わせた。
私よりも母よりもずっと長く生きているこの家の風景がまたひとつ新しく変わっていく。庭先の黄色い小屋、中で犬が眠っている。「あらぁいいお家ねぇ」と声をかければ、応えるようにぐでーんと身体を伸ばした。
一日の中でも時間帯で木陰へ小屋へと居場所を変えている。その時もっとも心地よい場所が分かる日向ぼっこのプロだ。小屋もすっかり犬の定位置のひとつとなった。家の中は、犬の定位置だらけである。
この連載が本『inubot回覧板』
(扶桑社刊)になりました。第1回〜12回までの連載に加え、書籍オリジナルのコラムや写真も多数掲載。ぜひご覧ください。
1991年和歌山生まれ。バンタンデザイン研究所大阪校フォトグラファー専攻卒業。「一枚皮だからな、我々は。」で、塩竈フォトフェスティバル大賞を受賞。愛犬の写真を投稿するアカウント@inu_10kg
を運営
。ESSEonlineでは、飼い主で写真家の北田瑞絵さんが、「犬」と家族の日々をつづっていきます。
第32回は、妹と一緒に小屋をつくったお話です。
スノコを組み合わせて犬の小屋を制作。犬も気に入ったみたいです
「ずっと犬に小屋をつくりたかってん」と妹が言い出した。
日除け、防風に小屋は必要だと熱弁しているが、初夏に母がシェードを取りつけていたので日除けはあったし、雨はもちろん強風の日も家の中で過ごすので風をしのぐ状況もなかった。
どうやら妹のなかで小屋をつくるのは決定しているようだ。小屋をつくる機会は滅多にないし、巻き込まれた気もするがつくってみようではないか。
本日の任務:小屋をつくる、合言葉はALL FOR INU。
●工程1.資材調達
まだ2月であるのに上着いらずの暖かな晴天のもと、ホームセンターにいた。スノコを五面組み立てるという簡単な設計らしく、存外容易な作業ですみそうだ。「でもなぁ三角の屋根もいるやんなぁ」「それはできへん」資材を前に長居すると妹がどんどん高難度な想像を膨らませそうなので早々にレジに連れていき、スノコ×5、ホームパイ×1、イカ天×1、ジャーキー×1を購入し帰宅。
●工程2.円陣
庭の片隅でスノコや工具を広げていたら「なに店開いとんや?」と言いたげに視線を寄せるまだ見ぬ小屋の主。絶対に私は犬じゃなかったら、こんなにも手間のかかることできない。
さっそく始めようとしている妹を呼んで、いったん犬の前に集合させる。まずは円陣すっぞと犬の手に手を重ねると、なんじゃいと笑いながらも妹の手もそっと重ねられた。
「いい家つくろう! ALL FOR INU!」
●工程3.設計
ジャーキーを噛む犬と、イカ天片手の妹。「今14時やから理想は15時完成で」と言って音楽を流しはじめる。
イカ天をシャーペンに持ち代えて、スノコを重ね合わせ、はみ出る箇所にサクサクと線を引いていく。
●工程4.カット
チェンソーで不要な部分を断ち落として、断面はヤスリでみがいて平坦にする。犬が怪我しないように。安心安全がモットーの家づくり。
●工程5.組み立て
昔ながらのトンカチで釘打ちをしていく。ドライバーはあるが、あると思っていたネジがなかったので令和3年にシンプル素トンカチ。庭中にドンドンドン! と釘を打つ音が鳴り渡る側で、すよすよとお昼寝をしている。
スノコが重くて強固だから飛ばされないだろうが、壁が離散したり屋根が落ちないよう「心配しすぎが丁度ええ」と狭い間隔で釘を打ち込んでいく。たまに曲がって先端が飛び出れば、釘抜きを使って抜いてさらに打ち直す。一度妹にトンカチを渡そうとしたら「ごめん音楽選ぶから!」と拒まれた。妹はたびたび役職がDJ。
苦闘しながら予定から30分が経過してなんとか完成した小屋! K‐O‐Y‐A!
危険はないかしっかりと安全点検ののち、どうぞと犬のもとに届けたら驚いたのか目をまんまるにして耳を立てた。まさか自分のものがつくられているとは思わなかったのか。興味津々に鼻を寄せて匂いを嗅いでいる。犬も安全点検をする。
この時点ではまだ小屋に心を開ききっていないようで、上半身だけ突っ込んでいるが、覗くだけ…といったよそよそしさがあった。
余った廃材で鉢置きのような何かもつくった
翌日には警戒心も解けたのか、ひとりでに小屋に入っていたのを父が発見して慌ててみんなを呼びにきた。妹は「入ってくれてるの見たらうれしいなぁ。やっぱり犬も小屋を必要にしてたんや」と会心の笑みを浮かべていた。
●工程6.防腐剤塗り
「防腐剤は塗ったほうがいい」と教えてもらって後日ふたたびホームセンターにやってきた。防腐剤入りのペンキ売り場にて色をどうするのか悩みに悩んで「ねぇが決めていいよ」と言われて黄色にした。小屋の主は二度目の光景に「まぁたやってんの?」なんて呆れてていそうだが、心なしか見守ってくれているような気もする。
妹がすみずみまで気を行き届かせて丁寧に塗ってくれたおかげで、手前みそだがめっちゃええ、最良の出来栄え。黄色にして大正解大満足と顔を見合わせた。
私よりも母よりもずっと長く生きているこの家の風景がまたひとつ新しく変わっていく。庭先の黄色い小屋、中で犬が眠っている。「あらぁいいお家ねぇ」と声をかければ、応えるようにぐでーんと身体を伸ばした。
一日の中でも時間帯で木陰へ小屋へと居場所を変えている。その時もっとも心地よい場所が分かる日向ぼっこのプロだ。小屋もすっかり犬の定位置のひとつとなった。家の中は、犬の定位置だらけである。
この連載が本『inubot回覧板』
(扶桑社刊)になりました。第1回〜12回までの連載に加え、書籍オリジナルのコラムや写真も多数掲載。ぜひご覧ください。
【写真・文/北田瑞絵】
1991年和歌山生まれ。バンタンデザイン研究所大阪校フォトグラファー専攻卒業。「一枚皮だからな、我々は。」で、塩竈フォトフェスティバル大賞を受賞。愛犬の写真を投稿するアカウント@inu_10kg
を運営