男の子を一流にさせる子育て。親がもっともやってはいけないこと
自分の息子には、優秀な子に育ってほしい。どうせなら、将来成功してほしい。男の子をもつ親ならば、だれもが一度はそんな想いを抱いたことがあるのではないでしょうか。
47万部の『妻のトリセツ
』、16万部の『夫のトリセツ
』などのベストセラーの著者であり、脳科学者である黒川伊保子先生に、「一流になる子の特徴」や、才能あふれる男の子を育てる際のトリセツを伺いました。
男の子を育てる際のポイント
音楽やアート、スポーツなど、子どもになんらかのセンスを培ってほしいと思うのは、親としては当然のこと。しかし、「子どもに一流の芸術家やアスリートを目指してほしいと思うのならば、タイムリミットがあります。小脳だけですべて決まるわけではないのですが、運動センスにしろ、演奏センスにしろ、男女共に小脳の機能がフィックスする(小脳の発達臨界期)8歳までに身につけておけば、かなりのアドバンテージになります。さらに、小脳は男性の方が大きいと言われており、脳の演算も小脳に依存する率が高いと予想されるので、息子を育てる親御さんはより意識した方がよいかもしれません」と語るのは、脳科学者の黒川伊保子先生です。
「運動制御を担う小脳の基本機能が整うのは8歳まで。だから運動機能を駆使するスポーツや楽器演奏に関しては、8歳までに始めた方がいいとされています。プロスポーツのアスリートたちも6歳までにその運動を始めているケースが多いです。楽器演奏に関しても7歳までになにかを経験させてあげましょう」
なお、音楽にしてもスポーツにしても、ポイントとしては、あまり子どもを追い詰めないこと。厳しくしすぎて、楽しめなくなってしまっては、元も子もありません。
小脳を発達させることは、スポーツやアートにまつわるセンスを伸ばすだけではありません。
「理系のセンスは、空間認知から始まります。『距離』や『位置』を認知し、『構造』や『数』を理解し、やがて脳に仮想空間を作って、そこで遊ぶ。こうした一連の“概念遊び”を支えるのが、小脳の空間認知能力です。理系の学生は、頭でっかちで運動音痴だと思われがちですが、意外とそんなことはありません。有名なアスリートが理系出身だったり、研究者にスポーツ愛好家が多かったりというのもよくあることです。以前、小学校低学年の運動センスが、のちの理系の成績に比例するという報告も見たことがあります」
また、毎年大量の東大合格者を出すことでも知られる筑波大駒場高校の先生に、黒川先生が「東大現役合格者に共通の傾向」を聞いたとき、その答えは「早寝・早起き・朝ごはん」と「運動能力」だったとか。
「理系のセンスと体を動かすセンスは、共に小脳を使います。つまり8歳までの小脳発達は、運動センス、芸術センス、学術センスを伸ばすためにも重要なのです。また、小脳発達は、言語能力も関わってくるので、国語力やコミュニケーションセンスにも寄与します」
では、息子の小脳を発達させるためには、どうしたらよいのでしょうか? その方法のひとつは「野山を走り回る外遊び」だと黒川先生は続けます。
「地方に住む子なら外を遊びまわるだけでも十分です。都会の子なら、ジャングルジムや滑り台など高低差のある空間での自由遊びでもいいでしょう。遊ぶことは、幼児期最大の英才教育になります。なかでも、年齢の違う子同士の遊びは、運動能力の違う身体を見て、触れることになるので、特に小脳を刺激し、発達を誘います。わが家は一人息子だったので、息子を保育園に早く入れることは、“小脳発達支援”の一環でした。お母さんの手元で手厚く子育てすることは、とても幸せなことですが、一人息子の場合は、年齢が上の子、下の子と触れ合えるような自由遊びの機会を、ぜひ持ってあげてください」
では、9歳以降の息子をもつ場合、どんなことをすると才能豊かな子に育つのでしょうか。その方法のひとつとして、黒川先生が挙げるのは「冒険ファンタジーを読ませること」です。
「9歳の誕生日から12歳の誕生日までの3年間は、脳のゴールデンエイジと呼ばれています。この時期は、脳が神経線維ネットワークを劇的に増やす時期。脳の神経線維ネットワークは『頭のよさ』『運動神経のよさ』『芸術センス』『コミュニケーションセンス』『戦略センス』などといった、あらゆるセンスのよさの源で、眠っている間に起きている間の経験を源にしてつくられていきます。
その際、日常生活の経験だけでは、刺激がたりません。だから、冒険ファンタジーを読んでもらうことで、脳に刺激を与えてあげましょう。映画やゲームなどの映像もいいですが、文字情報をイメージに変換させる能力は、脳のあらゆる場所を刺激して成長させます。だから、冒険ファンタジーを読ませることが重要なのです」
また、子どもを一流に育てるうえで、絶対にやってはいけないこと。それは、親が子どもの結果にコミットしすぎることです。
「私の友人に伊藤佳子さんというプロゴルファーの方がいるのですが、その方は指導者としても非常に優秀な方で、彼女の開催するゴルフ教室は大人気です。幼児向けの教室は数年待ちだとか。そんな彼女に『どんな子がトッププロになっていくの?』と聞いたところ、伊藤さんは『だれにでもチャンスはある』と言いきりました。しかし、『こういう親の子だけは、一流になれないという親はいる』とつけ加えたのです。その答えは『結果にコミットしすぎる親』とのこと。『親が結果に一喜一憂すると、子どもは失敗を恐れるようになる。親は子ども以上にがっかりしたり、有頂天になってはいけないのよ』と彼女は語っていました」
私たちの脳は失敗して痛い思いをすると、その晩、眠っている間に、失敗を使った関連回路の閾値(生体反応を起こすきっかけの最低ライン)を上げて、神経信号を届きにくくさせるのだとか。すると、その回路は「とっさに信号の流れにくい場所」になって、失敗しにくい脳になるのだそうです。
「息子を一流に育てたければ、過度に失敗を恐れないこと。これは息子を想う母親にとって非常に勇気のいることですが、結果にはこだわらず、息子にはどんどん失敗させた方がいい。それが、打たれ強くて柔軟な考えをもつ、一流の男を育てるための秘訣なのです」
黒川さんの最新刊『息子のトリセツ
』(扶桑社刊)では、脳科学的な見地から見た「息子育て」について、実体験を交えて解説しています。「息子を優秀な子に育てる秘訣」「他人に愛情を持って接する息子を育てる方法」などが、数多く記載されています。ぜひチェックを。
<取材・文/ESSEonline編集部>
●教えてくれた人
脳科学・人工知能(AI)研究者。1959年、長野県生まれ。奈良女子大学理学部物理学科卒業後、コンピュータ・メーカーにてAI開発に従事。2003年より(株)感性リサーチ代表取締役社長。語感の数値化に成功し、大塚製薬「SoyJoy」など、多くの商品名の感性分析を行う。また男女の脳の「とっさの使い方」の違いを発見し、その研究成果を元に『妻のトリセツ
』『夫のトリセツ
』(ともに講談社刊)を発表
47万部の『妻のトリセツ
』、16万部の『夫のトリセツ
』などのベストセラーの著者であり、脳科学者である黒川伊保子先生に、「一流になる子の特徴」や、才能あふれる男の子を育てる際のトリセツを伺いました。
男の子を育てる際のポイント
脳科学者の黒川伊保子さんが語る、息子の才能を伸ばす方法
音楽やアート、スポーツなど、子どもになんらかのセンスを培ってほしいと思うのは、親としては当然のこと。しかし、「子どもに一流の芸術家やアスリートを目指してほしいと思うのならば、タイムリミットがあります。小脳だけですべて決まるわけではないのですが、運動センスにしろ、演奏センスにしろ、男女共に小脳の機能がフィックスする(小脳の発達臨界期)8歳までに身につけておけば、かなりのアドバンテージになります。さらに、小脳は男性の方が大きいと言われており、脳の演算も小脳に依存する率が高いと予想されるので、息子を育てる親御さんはより意識した方がよいかもしれません」と語るのは、脳科学者の黒川伊保子先生です。
●トップアスリートを目指すなら、8歳までがタイムリミット
「運動制御を担う小脳の基本機能が整うのは8歳まで。だから運動機能を駆使するスポーツや楽器演奏に関しては、8歳までに始めた方がいいとされています。プロスポーツのアスリートたちも6歳までにその運動を始めているケースが多いです。楽器演奏に関しても7歳までになにかを経験させてあげましょう」
なお、音楽にしてもスポーツにしても、ポイントとしては、あまり子どもを追い詰めないこと。厳しくしすぎて、楽しめなくなってしまっては、元も子もありません。
●東大現役合格者の特徴とは?
小脳を発達させることは、スポーツやアートにまつわるセンスを伸ばすだけではありません。
「理系のセンスは、空間認知から始まります。『距離』や『位置』を認知し、『構造』や『数』を理解し、やがて脳に仮想空間を作って、そこで遊ぶ。こうした一連の“概念遊び”を支えるのが、小脳の空間認知能力です。理系の学生は、頭でっかちで運動音痴だと思われがちですが、意外とそんなことはありません。有名なアスリートが理系出身だったり、研究者にスポーツ愛好家が多かったりというのもよくあることです。以前、小学校低学年の運動センスが、のちの理系の成績に比例するという報告も見たことがあります」
また、毎年大量の東大合格者を出すことでも知られる筑波大駒場高校の先生に、黒川先生が「東大現役合格者に共通の傾向」を聞いたとき、その答えは「早寝・早起き・朝ごはん」と「運動能力」だったとか。
「理系のセンスと体を動かすセンスは、共に小脳を使います。つまり8歳までの小脳発達は、運動センス、芸術センス、学術センスを伸ばすためにも重要なのです。また、小脳発達は、言語能力も関わってくるので、国語力やコミュニケーションセンスにも寄与します」
●小脳の発達に必要なのは「外遊び」と「年齢の違う子と遊ぶこと」
では、息子の小脳を発達させるためには、どうしたらよいのでしょうか? その方法のひとつは「野山を走り回る外遊び」だと黒川先生は続けます。
「地方に住む子なら外を遊びまわるだけでも十分です。都会の子なら、ジャングルジムや滑り台など高低差のある空間での自由遊びでもいいでしょう。遊ぶことは、幼児期最大の英才教育になります。なかでも、年齢の違う子同士の遊びは、運動能力の違う身体を見て、触れることになるので、特に小脳を刺激し、発達を誘います。わが家は一人息子だったので、息子を保育園に早く入れることは、“小脳発達支援”の一環でした。お母さんの手元で手厚く子育てすることは、とても幸せなことですが、一人息子の場合は、年齢が上の子、下の子と触れ合えるような自由遊びの機会を、ぜひ持ってあげてください」
●9歳以降は文字情報での「冒険ファンタジー」に触れさせよう
では、9歳以降の息子をもつ場合、どんなことをすると才能豊かな子に育つのでしょうか。その方法のひとつとして、黒川先生が挙げるのは「冒険ファンタジーを読ませること」です。
「9歳の誕生日から12歳の誕生日までの3年間は、脳のゴールデンエイジと呼ばれています。この時期は、脳が神経線維ネットワークを劇的に増やす時期。脳の神経線維ネットワークは『頭のよさ』『運動神経のよさ』『芸術センス』『コミュニケーションセンス』『戦略センス』などといった、あらゆるセンスのよさの源で、眠っている間に起きている間の経験を源にしてつくられていきます。
その際、日常生活の経験だけでは、刺激がたりません。だから、冒険ファンタジーを読んでもらうことで、脳に刺激を与えてあげましょう。映画やゲームなどの映像もいいですが、文字情報をイメージに変換させる能力は、脳のあらゆる場所を刺激して成長させます。だから、冒険ファンタジーを読ませることが重要なのです」
●子どもを一流にさせるためにやってはいけないのは「結果に一喜一憂する」こと
また、子どもを一流に育てるうえで、絶対にやってはいけないこと。それは、親が子どもの結果にコミットしすぎることです。
「私の友人に伊藤佳子さんというプロゴルファーの方がいるのですが、その方は指導者としても非常に優秀な方で、彼女の開催するゴルフ教室は大人気です。幼児向けの教室は数年待ちだとか。そんな彼女に『どんな子がトッププロになっていくの?』と聞いたところ、伊藤さんは『だれにでもチャンスはある』と言いきりました。しかし、『こういう親の子だけは、一流になれないという親はいる』とつけ加えたのです。その答えは『結果にコミットしすぎる親』とのこと。『親が結果に一喜一憂すると、子どもは失敗を恐れるようになる。親は子ども以上にがっかりしたり、有頂天になってはいけないのよ』と彼女は語っていました」
私たちの脳は失敗して痛い思いをすると、その晩、眠っている間に、失敗を使った関連回路の閾値(生体反応を起こすきっかけの最低ライン)を上げて、神経信号を届きにくくさせるのだとか。すると、その回路は「とっさに信号の流れにくい場所」になって、失敗しにくい脳になるのだそうです。
「息子を一流に育てたければ、過度に失敗を恐れないこと。これは息子を想う母親にとって非常に勇気のいることですが、結果にはこだわらず、息子にはどんどん失敗させた方がいい。それが、打たれ強くて柔軟な考えをもつ、一流の男を育てるための秘訣なのです」
黒川さんの最新刊『息子のトリセツ
』(扶桑社刊)では、脳科学的な見地から見た「息子育て」について、実体験を交えて解説しています。「息子を優秀な子に育てる秘訣」「他人に愛情を持って接する息子を育てる方法」などが、数多く記載されています。ぜひチェックを。
<取材・文/ESSEonline編集部>
●教えてくれた人
【黒川伊保子さん】
脳科学・人工知能(AI)研究者。1959年、長野県生まれ。奈良女子大学理学部物理学科卒業後、コンピュータ・メーカーにてAI開発に従事。2003年より(株)感性リサーチ代表取締役社長。語感の数値化に成功し、大塚製薬「SoyJoy」など、多くの商品名の感性分析を行う。また男女の脳の「とっさの使い方」の違いを発見し、その研究成果を元に『妻のトリセツ
』『夫のトリセツ
』(ともに講談社刊)を発表