「まさか自分が」特殊詐欺の被害男性 手口や思い語る
高齢者をだまして現金を奪い取る卑劣な犯罪、特殊詐欺についてお伝えします。
さまざまな手口を使う犯人グループは近年、キャッシュカードと別のカードをすり替える犯行を繰り返していて、栃木県内でも被害が後を絶ちません。
実際に被害にあった男性がとちぎテレビの取材に応じ、その手口からどうしたら被害を防げるのか必要な対策を考えます。
被害者の男性Aさん:「100%、自分はだまされるはずはない。それしか考えていませんでした。自分は絶対大丈夫だと思っていました」
こう話すのは特殊詐欺の被害にあった県南地区に住む70代男性のAさんです。
今年初めAさんは金融機関の口座から、およそ180万円が引き出される被害にあいました。
その手口を再現します。ある日の朝、Aさんの自宅の固定電話に警視庁の警察官を名乗る男から電話がありました。
警察官をかたるかけ子:「特殊詐欺グループを逮捕しました。取り調べの中で被害者の中の1人にあなたの名前がありました。逮捕者の中に銀行関係者がいたので、そこから口座の情報が漏れたようです。口座を止めないと大変なことになります。キャッシュカードを無効にする手続きをしたいのでカードと暗証番号をこれから行く係員に封筒に入れて渡して下さい」
被害者の男性Aさん:「驚いちゃって他のことが考えられなかったですね。私は起きたばっかりで落ち着いていなかったんですよね。警視庁だっていうことで、もうそこであ然としちゃったんですね。そこで普通ならば変だなと思わなくちゃならないんですけど、あまりにも電話の男がしゃべり方がうまかったので信じちゃったんです」
電話をしていると間もなく別の男がAさんの自宅を訪れ、Aさんは用意していたキャッシュカード5枚と暗証番号を書いたメモを渡し、男が封筒に入れました。
被害者の男性Aさん:「私の印鑑が必要だということなんで、印鑑を持ってきていなかったので『ちょっと待って下さい』と印鑑を取りに行って2階から降りてきて印鑑を渡して、受け子が押して『これでいいです、大丈夫です』ということで終わった。その押す前に封筒ごとすり替わっていたんですね。まさかそんなことされると思っていなかったから頭になかった」
不安を感じたAさんは数時間後に妹に電話をしました。
被害者の男性Aさん:「絶対に詐欺で警察に届けた方がいいってことを電話で聞かされて、すぐに心配になって警察に電話して刑事の方も即断で詐欺だと」
Aさんが駆けつけた警察官と封筒の中身を確認すると、別のカードにすり替えられていることが分かり、すぐに口座を止めましたが現金が引き出された後でした。
その後、受け子の男はキャッシュカードを盗んだとして窃盗の疑いで逮捕されています。
被害者の男性Aさん:「取り締まって捕まえて、徹底的に処罰してもらいたいです。犯人に同情はしません」
Aさんが被害にあったキャッシュカードを別のカードとすり替えられる手口は、今年11月までに県内で76件確認されていて、特殊詐欺全体でおよそ4割と最も多くなっています。
このうち被害が発生した地域ごとにみると、足利市や栃木市、佐野市などの県南地域で40件となっていて、過半数を超えています。
手口の特徴や県の南部に被害が集中する要因はどんなところにあるのか。県警察本部は次のように分析しています。
県警察本部生活安全企画課犯罪抑止対策室 福田亮 課長補佐:「手口は変わってオレオレ詐欺には今までかけ子や受け子、そういった者たちの連携が必要だったが、キャッシュカード詐欺盗については、すぐにアポ電があったあとに受け子が取りに来るという安易さから非常に今、増加している状況にあって、高止まりの原因になっていると思っています。キャッシュカード詐欺盗につきましては受け子が自宅まで来るということで、公共交通機関が発展しているところ、もしくは都心から近いところから来ているような傾向がありまして、そういう意味で県南地域は狙われていると思っています」
警察では特殊詐欺の被害を防止するため民間に委託しているコールセンターから注意喚起の電話をかけたり、迷惑電話防止機能付き電話機の普及に取り組んだりしています。
こうした中、真岡警察署管内にある駐在所の警察官の有志など7人が被害防止を訴える動画を制作しました。
動画の制作に関わった下延生駐在所の笹木 学さんと妻の文子さんです。
笹木さん夫婦は絵コンテの作成から撮影、編集までを担当し動画を完成させました。
真岡警察署 下延生警察官駐在所 笹木学 巡査部長:「テレビや新聞だけの出来事で自分にはそういうことが絶対にないだろうっていう方がある日突然、ハガキや電話、そういったものでだまされてしまうっていうのがあるものですから、そういった方にいかに短く分かりやすい広報が出来ないかということで作ろうと」
妻の文子さん:「振り込め詐欺の被害が少しでもなくなってほしいという願いで一生懸命作りました。音響のタイミングなど2人で話しあって、ここにこれがあった方がいいんじゃないかとか、そういうふうな感じで」
内容は警察官や銀行員などをかたるキャッシュカード・預貯金詐欺、子どもや孫を装うオレオレ詐欺、ハガキやメールを使った架空請求詐欺と被害の件数が多い3つの手口を再現しています。
真岡警察署 下延生駐在所 笹木学 巡査部長:「多くの方に今回作った動画を見てもらってまず詐欺の手口を知ってもらうこと。そして必ず自分1人で判断せずに周りに話をして相談するということをしていただくことで被害防止につながるのではないかと思っています」