山手線と大阪環状線の「違い」5つのポイント ぐるぐる回るだけとちゃうで!
東京と大阪、東西の2大環状鉄道といえる山手線と大阪環状線。どちらも電車がぐるぐると周回運転を行っていますが、実は似て非なる存在といえるかもしれません。いろいろ比べてみました。
ぐるぐる回る環状運転 JRでは2路線だけ
東京の山手線と、大阪の大阪環状線。回送の場合を除き、電車がぐるぐると回り続ける環状運転(周回運転)を行っているのは、JRではこの2つだけです。しかしながら両者には、車両だけでない「違い」も様々あります。比べてみました。
まずは基本データ
山手線は1周34.5kmで約1時間、大阪環状線は21.7kmで約40分です。どちらも路線図などでは丸く描かれることがありますが、大阪環状線のほうが小さいのです。
また実際の地図上では、山手線は南北に長い形をしています。南の大崎駅と北の田端駅のあいだは直線距離で約13.5kmあるものの、東の東京駅と西の新宿駅のあいだは約6kmです。対して大阪環状線は、南の天王寺駅と北の大阪駅のあいだで約6.4km、東の京橋駅と西の弁天町駅とのあいだで約7.2kmとなっています。
山手線のE235系電車と大阪環状線の323系電車(画像:写真AC)。
行先の表し方
山手線は、駅や列車の行先表示などでは「内回り」「外回り」のほか、「池袋・東京方面」などという表現が用いられ、「環状」という言葉はほぼ使われません。一方で大阪環状線は、内回り・外回りも使われるものの、周回運転の電車については、駅の案内表示で行先が「環状」と示されてきました。
というのも、山手線ホームには基本的に、周回運転の電車しか発着しませんが、大阪環状線は、他路線との直通運転を行う電車も多いためです(後述)。
ところが2019年以降、この「環状」行先表示は全面的に廃止され、周回運転の電車も、他路線との直通電車と同様に「西九条・大阪方面」といった方面の案内に改められました。大阪環状線からも、「環状」の言葉が消えつつあります。
シンプル山手線 バラエティーの大阪環状線?
大阪環状線では、乗り過ごしに注意が必要かもしれません。
列車の運転形態
山手線ホームに発着するのは前出の通り、周回運転を行う緑色が特徴の電車のみ。東京近郊に発着する「埼京線」や「湘南新宿ライン」といった電車も山手線(山手貨物線)を一部経由しますが、線路や駅ホームは周回運転の電車とは分離されています。
対して大阪環状線は、沿線外に発着する電車が、大阪環状線内で周回運転の電車と同じホームにやってきます。たとえば、天王寺→大阪→天王寺と環状線を1周したうえで、大和路線(関西本線)へ向かう奈良行きや、環状線を半周してJRゆめ咲線(桜島線)へ乗り入れる桜島行きといったものがあり、車両も様々です。このため、環状線内を移動するつもりが、乗り過ごすとあらぬ方向へ行ってしまうというケースが生じます。
また大阪環状線は快速や特急も多く、列車により通過駅が存在することも、各駅停車だけの山手線と大きく異なるポイントです。野田や芦原橋など、日中は1時間あたり4往復の列車しか停まらない駅もあります。
大阪駅の大阪環状線ホームにおける行先案内。周回運転の電車も「環状」ではなく「西九条・新今宮方面」などと案内されるようになった(2020年12月、中島洋平撮影)。
路線名
電車などに表示される「山手線」や「京浜東北線」といった名称は、電車の運転形態をわかりやすく示したものに過ぎず、「この区間は何線か」という、線路の区間ごとの「所属」としての路線名は、運行の実態と異なります。路線名としてまさしく山手線と呼べるのは、実は環状の西側部分のみ、品川〜新宿〜田端間だけ。対して東側の田端〜東京間は正式には東北線、東京〜品川間は東海道線です。
大阪環状線の場合はどうでしょうか。JRでは大阪駅を起終点として1周全体を大阪環状線としていますが(JR線路名称公告)、国が発行する『鉄道要覧』では、天王寺〜新今宮駅間20.7kmが大阪環状線で、新今宮〜天王寺間1.0kmは関西線となっています。
山手線は「『の』の字運転」だったことも
山手線も大阪環状線も、最初から1周の線路があったわけではありません。
なりたち
山手線はまず、明治時代に品川〜新宿〜赤羽間から開業し、のち池袋〜田端間が開通して上野駅への乗り入れが可能になります。品川〜東京〜上野間は品川側から電車用の線路が順次建設され、1919(大正8)年、東京駅まで開通。中央線と接続し、中野(中央線)〜東京〜品川〜池袋〜上野間を直通する通称「『の』の字運転」が行われました。
その6年後、1925年(大正14年)に東京〜上野間がつながったことで、現在のような周回運転が始まりました。なお、山手線の最初の開業区間のうち池袋〜赤羽間は、長らく山手線の支線に位置付けられていましたが、1972年(昭和47年)に赤羽線として独立。現在は運転系統としての「埼京線」の一部に組み込まれています。
一方の大阪環状線は、明治期に開通した天王寺〜京橋〜梅田(現・大阪)間が「城東線」、大阪〜西九条〜桜島間が「西成線」と呼ばれていました。
大阪環状線の運転系統図。JRゆめ咲線(桜島線)ユニバーサルシティ駅にて(2020年12月、中島洋平撮影)。
1961年(昭和36年)、西側区間にあたる西九条から天王寺にかけてが新規開通したことで、城東線と西成線の大阪〜西九条間、新規開通区間を合わせて大阪環状線が成立。このとき西成線の西九条〜桜島間は桜島線として分離され、現在に至ります。
※ ※ ※
ちなみに地下鉄では名古屋地下鉄名城線が周回運転を行っていますが、こちらは「内回り」「外回り」ではなく、「左回り」「右回り」という言葉で方向が案内されます。理由は、全線地下で風景による確認がしづらいため、路線図から走行方向をイメージしやすいようにしている、ということでした。