昨今、居酒屋や量販店などさまざまな店舗で人間に代わって接客をしている人型ロボットの「Pepper」くん。

ツイッターでは、とある旅館のロビーで客を出迎えていたPepperくんが、SF映画のワンシーンのようだと話題になっている。

いったいどういうことなのか、まずは実際の写真をご覧いただこう。


見つめあっている...(画像は朝霧@asagiri96mcさんより提供)

これは2020年11月3日、ツイッターユーザーの朝霧(@asagiri96mc)さんが

「ホテルのPepperくん、前を通過する人の視線を追っかけてたけど、そのうち自分と視線を合わせてしまい動かなくなってしまった。鏡を見せられたメデューサ状態w」

とコメントをつけて投稿した画像だ。

鏡を通して自分自身とじっと見つめあい静止する様子は、まさに鏡のような盾を見せられ石化してしまったメドューサ。白く光る目の怪しさも相まって、何だかSF映画の不穏な一場面のようにも見える。

この投稿に、ツイッターでは

「ペッパーくん!ダメ!こっちを見て!!自我を取り戻して!!!!」
「星新一のショートショートに出てきそう」
「とてもいいSF」
「なんか自我が芽生えた瞬間というか、自分が何者なのか理解した瞬間に見えて怖い」
「このPepperくんは自分の事を人間だと思ってたんだけど、人間とは違う容姿をしてる事を知ってショックで動けなくなってると思うと凄くエモい」

といった反応が寄せられている。

「自分自身を認識する機能は実装していません」

5日、Jタウンネットが投稿者の朝霧さんに話を聞いたところ、この写真は3日、北海道登別市の旅館のロビーで撮影したものだそう。

ペッパーくんが静止してしまった当時の状況を聞くと

「ペッパーくんは前を通る人の目線を追う設定になっていたみたいですが、横の柱が鏡になっており、私自身が移動して横を向かせるとそのまま固まってしまいました」

とのことだった。

Pepperくんは無事に動き出すことができたのだろうか。

その後の様子について、朝霧さんに尋ねると

「10分ほど観察していましたが、動く気配はありませんでした...。
翌朝には鏡から離れた場所に移動させられていました」

と何とも切ない回答があった。

また、見かけたときの感想については、

「その時は『鏡を見せるとバグるんだなー』くらいに思って何気なく撮影したのですが、Twitterにアップすると急にRTされ始めたので画像を見返すと、鏡に写った表情が結構怖くて自分でもジワジワきました」

とコメントした。

Pepperくんは、どうして静止してしまったのか。やはり、鏡と相性が悪いということなのだろうか......。

その真相を探るべく、JタウンネットはPepprくんの開発を行うソフトバンクロボティクス(東京都港区)を取材し、広報室の担当者から回答を得た。

まず、Pepperくんが鏡に映った自分を認識できるのか聞いてみると、

「Pepperが自分自身を認識する機能は実装していません。
今回は鏡に映ったPepper自身を、人と誤認識した可能性があります」

と回答が。その上で、今回のように静止してしまう場合があるのかについては

「Pepperは人の顔を追随する機能がありますので、今回のように鏡越しの自分を人と認識した場合、目を合わせて静止する可能性はあります」

とした。

自分の姿を見ても「自分だ」と認識できないというPepperくんは、やはり自分を人間と誤認識して混乱してしまっていたようだ。

いつかこのPepperくんにも自我が芽生えて、「自身」を認識する日が来るのかもしれない......。ついそんな妄想が広がってしまう投稿だった。